転職してよかったなって話

9月は3つの担当案件をかかえて、そのうちふたつが9月中の納期ということもあり、さらに人の管理も増えたりして仕事が忙しかった。 今週に入ってからようやく、何週間ぶりかもわからないほど久しぶりに定時で退勤…

沈んだ月の中から 10:存在しない家族

 空を飛び、ベランダに軽い音を立てて着地する。  窓を開けながら靴を脱いで部屋に入り、壁際の箱に放りこんだ。本当はベランダに出しっぱなしにしておきたいけど、雨に濡れたら面倒だ。かといってわざわざ玄関で…

放浪の巫女と狼 09【完】

第四章 狼の巫女  辺境の巫女カノーイから、誰よりも親しき友、ミライノに。  丘のかなたで、君はどうしているだろうか。私もすぐにそばへ行くつもりだったのだが、思ったよりも長く生きてしまっていて、まだそ…

放浪の巫女と狼 08

第三章 辺境の狼 職人ヴェシックの記録  私ヴェシックは、天と地を結ぶ聖なる水に誓い、この目が見たまま、この耳が聞いたままのことをお話しいたします。  私は家具や食器を直す職人でございまして、辺境の土…

放浪の巫女と狼 07

第二章 神殿の猫(2)  その夜、獣のような男に警戒心を抱いていた猫は、男のにおいから離れた場所を求めて、「神の兵」たちのもとを訪れた。当番の者が夜の警備に出ていったあと、非番の者たちは少し広い部屋に…

放浪の巫女と狼 06

第二章 神殿の猫(1)  その猫は神殿の奥深くに棲んでいた。  人々は、この地に住み始めた頃から、穀物倉庫に忍び寄るねずみを憎んでおり、ねずみ退治のために猫を飼っていた。神殿が築かれた際にも、巫女とと…

放浪の巫女と狼 05

第一章 放浪の巫女(5)  ヤナンは私にがっしりと両腕を回したまま、ひょいと持ち上げて土手を上がっていく。驚きと恐れで私は棒きれのように固まっていた。朝の宿屋で見た時と変わらぬ少年の顔をしているのに、…

放浪の巫女と狼 04

第一章 放浪の巫女(4)  数週間たって、私とヤナンは町のはずれにたどりついた。国の辺境であることに変わりはないが、何軒もの宿屋が立ち並ぶ、少し大きな町だ。ふたりで旅を始めてから、すでに半年がたってい…