Kindle読書録『太陽の黄金の林檎』『あなたの人生の物語』

最近は本を買いすぎたくないので、Kindleのセール情報もスルーしてる。
けど、知り合いの人が「こんなSFを買って読んだ」とツイートしてはったので、ついつい何冊か買ってしまった。

レイ・ブラッドベリ『太陽の黄金(きん)の林檎』


叙情的なSF短編集。
やっぱり古いなぁと思いながら読んだ。

名作は色あせないですねとか言いたいけど、それでも「男は外で働いて、女は家で専業主婦」みたいなのを延々と見せられると古さを感じてしまう。
そういう生活を前提として話が描かれてるから、架空の未来という意味でのSFではなく、昔の欧米を舞台にした「すこしふしぎ」という意味でのSFとして読みました。

文字を読み書きできない人たちが住む田舎へ、読み書きできる男の子がやってきて…っていうお話が面白かったな。「山のあなたに」という短編です。

あと「草地」という短編も少し好きだった。
ここは世界中の都市があまりにも近接しているから平和なのだ、という言説には賛成できないけど。
※日本人の「和をもって尊しとなす」系の価値観とか、気が合わない人ともうまくやっていかないといけない(皆と仲良くしましょうと言われるやつ)とか、そういうのを強制されがちなのは、他人との距離が近すぎて逃げ場がないからじゃないの?って思うから。
(合わないと判断した人とは距離を置いて、無用な摩擦を避けるほうがいいと思う)

テッド・チャン『あなたの人生の物語』


これもSF短編集。一転してゴリゴリに物理学やら数学やらが登場する。

私が好きな短編は「バビロンの塔」、「七十二文字」、「地獄とは神の不在なり」、「顔の美醜について」。

「バビロンの塔」はその名のとおり、旧約聖書に登場するバベルの塔の話なんだけど、塔の建設に関わる人たちの視点なのね。
建築に使う物資や食料を荷車に載せて、えっちらおっちらと何日も何週間もかけて塔のてっぺんまでのぼっていくの。仕事のためにずっと塔の上層部に住んでる人もいて、このへんの描写も面白い。
で、このお話は天動説なので、まさに塔は天に届かんとしていて、人々は天に穴をあけようとしている。

「七十二文字」では「名辞」という見慣れない単語が出てきて何かと思った。
生き物がこういう仕組みで生きているという設定だったら…というお話。

「地獄とは神の不在なり」、まさにキリスト教のお話って感じ。
天国も地獄も実在することがわかっていて、しばしば天使が地上へ顕現する。しかし、天使の顕現で奇跡を与えられて人生が好転する人もいれば、逆に被害を受けて悪化する人もいる。
たまに地獄も地上に顕現するため、誰が地獄に行ったのかもわかってしまう。先に亡くなった伴侶が地獄へ行ったことを知り、死後も寄り添うことを望んで自殺する人もいる(自殺すれば確実に地獄へ行けるから)
ただまぁ、オチは…これが正しいオチなんだろうけど、苦しんでる人にとっては自分のもやもやが消えないオチだよね。

「顔の美醜について」は実際に近未来で起こりそうな設定のお話。それに対するいろんな人の意見が入れ替わり立ち替わり出てきて興味深い。