Kindle読書録『少年の名はジルベール』『ペガサスの解は虚栄か?』その他

家にこもることになったので、さくっと読んだ本の記録でも。

エッセイ、小説

竹宮惠子『少年の名はジルベール』


竹宮惠子のエッセイ。
少女時代から始まり、漫画家デビュー、少女漫画に革命を起こそうと語り合った「大泉サロン」での日々、スランプに陥った頃の苦しみ、そして描きたいと思い続けて編集者と何度もやりあっていた『風と木の詩』がとうとう世に出て…。
という感じで昔の話が多いです。

大泉サロンで一緒にすごしていた萩尾望都が、どれだけ革新的で誰の目にも明らかな才能と技術を持っていたか。
彼女への嫉妬に苦しみ、自分の描きたいものが描けないことに苦しみ、大泉サロンは解散に至る…。
そういう経緯があったことは、どうやらこのエッセイが登場するまで公表されてなかったらしい。

また、編集さんとのやりとりも熱いものがある。

たとえばYさんは、竹宮惠子のことを父親のように叱咤し、彼女が「これは絶対に読者が求めているものです」と主張するBL的な作品のセンスは理解できないものの、彼女を守るために奔走する。昔ながらの男気って感じです。

一方、少年漫画出身のMさんは、煩悶する彼女に「雑誌に合わないとか編集に理解できないとか、そんなもの、読者投票で1位をとればいいんです。人気があれば編集部は何も言えません。1位とりましょう!」と明確な指針を提示する。こういう具体的なアドバイス大事だよね。

そして、竹宮惠子のプロデューサーである増山法恵との出会いから、彼女が要所要所でどんなアドバイスをしてくれたか、時には竹宮惠子のかわりに編集へ立ち向かうことまでしてくれたというエピソードもたくさん出てくる。
白状すると、お名前は『変奏曲』の原作者として見たことがあったんやけど、それ以外のことは存じ上げなかったのです…。すごい。

Kindle版は、いろんな漫画の最初の数ページが特典として最後についてるよ。

ちなみにAmazonカスタマーレビューでは、個人的に下記のレビューが1番すばらしかった。

少女たちは天真爛漫な笑顔の裏でとても淫靡で残酷だ。
健全で甘ったるいローラーズに熱を上げている振りをしながら、
心の底ではフレディ・マーキュリーをこそ熱狂的に求めていたわけですよ。
(中略)
ただ、ビートルズやプレスリーのように変化はたいがい辺境からやってくるが、
竹宮恵子は商業主義のど真ん中で革命を叫んだわけだ。
これは本当にすごいことだ。

竹宮恵子にとっては「風と木の詩」はどうしても描かなければいけない作品で、
「地球へ・・・」は描けてしまった作品らしい。
いろいろ相当苦しんだのは本当だろうと思う。
しかし「地球へ・・・」のような超弩級の傑作が、たやすく描けてしまうわけだ。
竹宮恵子さん、いまさらですが、あなた間違いなく天才ですよ。

竹宮惠子、母が漫画を持ってたので、小中学生の頃によく読んでました。
『地球(テラ)へ…』の初版?っぽいものが実家にあるよ。単行本じゃなくて雑誌のムックみたいな形式なの(だから紙質も悪い)。手塚治虫の『火の鳥』連載中!って広告が載ってるやつ…。

懐かしくなってきた。Kindleで買おうかな。

森博嗣『ペガサスの解は虚栄か? Did Pegasus Answer the Vanity?』


森博嗣のSF、最新巻が出たよ。

スパコン、ウォーカロン、クローン、人工知能…わくわくする…。
ツェリン博士が…(ネタバレなのでこれ以上は言わない)

人間が死ななくなり、子どもが生まれないのが当たり前になってしまった社会では、親が子どもに対して無償で便宜をはかってやりたい(たとえそれが犯罪行為でも)と感じてしまうことも、子どもに自分のものを残したいと考えて非合理的な行動をとることも、理解しがたい現象になってしまう。
こういうの、ぼーっと読んでると思いつかないので「あっそうか!」って目が覚める心地です。

BL漫画

常倉三矢『Life 線上の僕ら』


10代のうちに出会ったふたりが、大人になり、やがて年老いて死んでいくまで。
人の一生を描くBLって、あんまりないですよね。
羅川真里茂『ニューヨーク・ニューヨーク』がそれに近いけど、あれは少女漫画だもんな(何よりもレーベル自体が)

ハイライトのように、いくつかの場面を切り取って描かれているので、コンパクトにさらーっと読めてしまうんだけど、その背景に横たわるふたりの人生がいろいろと想像できて、あぁ…ってなる。