「ユーリ!!! on ICE」について:ヴィクトルの強さと弱さとヴィク勇の関係性

以前、勇利についての話を書いて力尽きた。

というわけでヴィクトルの考察もがんばってみようの巻。
Pixivでの私が、いわゆるヤンデレフォロフとか病みフォロフとか呼ばれるキャラ造形のヴィクトルばかり書いているので、多分そっち方面の話が増えます。

勇利については弱さ→強さの順に書いたけど、ヴィクトルは逆にいってみよー。

ヴィクトルの強さ

わかりやすく強いですね、ヴィクトル・ニキフォロフ。
世界選手権5連覇とか、呼び名が「リビングレジェンド」「皇帝」だったりとか、世界記録保持者だったりとか、そのへんの派手な肩書はさておき。

「人を驚かせたい」とか言って、自分で振り付けしちゃうし、衣装も曲も新しくする。
自分でやるということは、その分あれこれと負担が増えるはずなのですが、それでも自分でやってのけるし、なおかつ本番でも見事に完成させて、他の誰にも金メダルを渡さない。

自分に自信があるし、自分がモテるのをわかってて、意識的にその武器を使ってるふしがある。ウィンクひとつで居並ぶファンや報道陣をなぎ散らすあたりとかね。
自分の武器をわかっていて、それを使いこなせる人は強いし、怖いです。
(勇利は無自覚にぶんまわすから別の意味で怖いけど)

試合当日も直前まで寝ていられるほどタフなメンタルを持ってる。
体型維持に神経を使う勇利のとなりでアホみたいに飲み食いしてたくせに、特に体型が崩れた描写もない。いきなりロシアナショナルに復帰するとか言っちゃってるし。

つまり、生まれながらの素質としても恵まれてます。生まれつき持ってるとかめっちゃくちゃ強い。圧倒的有利。あの顔もな!

最初に見た時は上記の強さに目が行ってたんですけど、何回か見返しているうちに、それ以外の部分でも「ヴィクトル、強いな」と思えてきました。

たとえば、自分のイマジネーションが枯渇してきて悩んでる時に「勇利のコーチになろう」って決断して行動に移せるあたりとか。

期限を定めず突然の休養、それも恐らく大勢のスポンサーがついててめっちゃ稼いでて、国からも期待されてていろんな援助や圧力やしがらみがあるはずなのに、選手として復帰できるかどうかもわからないのに、それをスパーンと投げ出してるわけですよ。

「このままでは自分が死ぬ」って気づいて、自分が生き返る可能性(勇利のコーチ)にガッと飛びついてる。
直感でわかってたんだろうなっていう強さと、自分のそういう直感を信じて行動できる強さの両方があるよね。

そんなことしたら過去の自分は死ぬんだけど、それでもいい、むしろそうしないと生き返れないってわかってる。
リリアの言うとおり、何度でも生き返る人間が強いのです。

そいでもって、いざ長谷津に行ったら想像以上に楽しくなっちゃって、このままコーチ続けようかな、選手としての自分は死んでしまってもいいかなーくらいに思ってしまう。
9話の最後、もうすぐ24歳になる勇利に「引退まで僕のことよろしくお願いします」と言われて、27歳のヴィクトルが「ずっと引退しなきゃいいのに」と返すのは、まさにお前と心中するよって意味ですしね。

今までのレジェンドとしての自分を、あっさり捨てようとしてる。
それ自体が強さかどうかは微妙なところですが、通常なら固執するであろう自分の輝かしい戦績も連覇記録も「この子と一緒にいるほうが楽しいから」「守るべきものが他にできたから」って潔く捨てようとするあたり、常人にはないものを感じる。

その思い切りのよさ、なんなの。
そういう意味では思考面での瞬発力というか、判断を下すスピードもすごいよね。強いわ。
当初は迷ってたのかもしれないけど(GPF後の予定については言葉を濁してるし)、ロシア大会FSで勇利と離れてみて、勇利の存在が自分の中で大きくなってるのに気づいたせいなのか、その後の再会であっさり心中の覚悟を口にしちゃいますからね…。

自分にとって手放してはいけないものがなんなのか、それに気づいて全力でつかみにいく強さがある、というのがヴィクトルに対する私の印象です。
そのためならコーチと選手と振り付け師の兼業だって強行するし、勇利を説得してロシアに連れていってしまう。
勝利を逃さない強さと同じですね。

だから、自分の限界を客観的すぎる目で見て身を引こうとする勇利相手に押し切ることができる。
キャパオーバーしがちな勇利が「僕はここまでしか無理だ」って早めに防衛ラインを引いても、もともと前線にガンガン出ていくヴィクトルが「大丈夫!俺コーチと選手どっちもやるし!」って勢いよく迫って全力で突破しちゃうから。

もしこれがピチットくんだったら、勇利の意思を尊重して最後まで突破できない気がするよね。
ヴィクトルみたいに「離れるとか嫌だ!」って踏みこんでいくような真似はしないから。きっとピチットくんは「勇利が決めたことなら、仕方ないね……」って言っちゃう。

ヴィクトルの弱さ

スケートに人生を捧げ、生ける伝説として君臨してきた代償に、ふたつのL(LIFEとLOVE)を棚上げしてきたのがヴィクトルという人です。
自分で言っちゃってるからね、「LIFEとLOVEをほったらかしにしてきた」って…。

長谷津での暮らしでライフとラブが充満しちゃうって、どんだけ今まで飢えてたんだよ。
「これ、家族仲がそこそこいい家庭だったら、割と普通の暮らしじゃね?」って思った人もいるんじゃないでしょうか。
ヴィクトルは孤児なのではないかと考察してる人も多いですね。

そのへんの飢え、ふたつのLに対する恵まれてなさっぷりが、ヴィクトルの弱さと言えば弱さなんですけど、それだけじゃないよね。

この人、これだけ稼いで有名になって、自分に自信があってモテまくってきたのに、田舎の温泉で8ヶ月暮らして勇利にスケート教えてるだけで満たされちゃうほど飢えてたんだっていう。
勝利をつかみにいくカンの良さとか、全力で奪いに走る強さは持ってるのに、自分の飢えをはっきり自覚できてなかったんじゃないか?って気がします。

悩んでる時に直感で「勇利のコーチするぞ!」って飛びついてみたら飢えが満たされたんだけど、そこで満たされて初めて「ふたつのLをほったらかしてたんだ」と気づいたんじゃないのか…。

自分が何に飢えてるのか自覚できてないと、見当ちがいのものを求めたりするよね。
「自分が食べたかったのってこれだっけ。多分これだよね」って全然ちがうものを食べちゃう。
でもしょせん代替品だから、大して満たされない。自分で自分をだましてるようなもの。そしてさらに飢えて悪化する。自分の穴を埋めるものが手に入らなくて絶望する。

そういう入り口に、ヴィクトルは立っていたのかもしれないね。

いろんな人が彼を褒めたたえて、崇めて、愛してくれたんだろうけど、きっと彼の飢えを満たすものではなかった。
ヴィクトルは多分それを自覚してなかったし、その程度のもんだと思って27年生きてきたのかもしれない。

そうやって、本当に飢えを満たしてくれるわけじゃないけどそれなりに気持ちいいものを手に入れて生きてきたら、だんだん行き詰まってしまった。
そこから抜け出すために直感で勇利に飛びついたら、ふたつのLで満たされた。
でも、それがずっと続くものだと思っていたら、突然勇利が手を離そうとした。

ずっと続くと思っちゃったあたりも、ヴィクトルの弱さのひとつかもしれない。
スケート以外のものを、自分から必死でつなぎとめようとしたこと、なかったんだろうな。勇利が来るまでは。

…いろいろ書いてみたけど、ヴィクトルって結局よくわからない。勇利のほうが考察しやすかった。

ヤンデレ要素との親和性

本編12話のヴィクトル

本編を見てる時は、やたらめったら勇利にべたべたくっついてるよなぁと思ってたですよね。ヴィクトル。
10話のEDを見た時は「なんてこったー!全部伏線だったのかー!」ってなったんですけど。

でも別にヤンデレっぽいなーとか全然思ったことなかったんです。
ただ普通に、この先どうなるんだろう、勇利の引退の覚悟に気づいてなさそうだけど…って心配しながら見てた。

それが「……ん?」ってなったのは最終話です。
冒頭で怒ったヴィクトルが勇利の肩をつかんで暗転したあたりも相当「おいおいおい!」って感じだったけど、FSの時のヴィクトルがね。

ヴィクトルの復帰宣告の真意にすぐ気づいて「カツ丼が引退するってことか」と目の色を変えたユリオに対して、「それを決めるのは勇利自身だ」ってヴィクトルは言うじゃないですか。

でもあの人、本心では全然そう思ってなかったよね?
「勇利が決めることだから」って言いながら、実際には勇利が引退しない方向に持っていこうとしてたよね?

どこまで自覚的な行動だったのかわからないけど、もっとも効果的なタイミングでユリオに勇利が引退するかもしれないことを告げ、「ハグすれば助けてくれる」とばかりにユリオをハグする。

「銀メダルにはキスする気になれない」「これじゃあコーチ失格だよ」と立て続けに迫って、勇利から引退以外の言葉を引き出そうとする。
そして勇利が「あと1年がんばる」と宣言したら、すかさず「もう一声!」とあおって期限を引き伸ばさせる。

最後はピーテルの街を走る勇利と、それをすごくいい笑顔で迎えるヴィクトル…。

最終話のヴィクトルは、自分が望む未来に向かって、自分の持てる駒を使って強引に持ってった感があった。
別に俺は勇利に強制したわけじゃないよ?って顔をしながら。

あの行動力と判断力に「怖いな」って思ったんですよね。
それがきっかけでした。

二次創作のヴィクトル

YOI本編は、きらきらしたハッピーな王道エンドも、闇堕ちしていくメリーバッドエンドも、両方の解釈を可能にする要素に満ちています。

もともと私は「原作の世界にいつまでも浸っていたい」という心境から二次創作に手を出したので、バッドエンドはあまり読まないようにしてます。自分でも書きたくない。

ただ、ヤンデレ要素が好きなので、そういう話は喜んで読むし、書いてしまう。
自分の飢えを満たしてくれた勇利に執着し、ぐいぐい迫って現役続行の言葉を引き出してロシアへ連れ帰った本編のヴィクトルの怖さが、ヤンデレにつなげやすいからです。
最終話のヴィクトルって、勇利の知らないところで勇利を包囲して捕まえているように見えちゃったからね…。

というわけで私の書く二次創作も、ヴィクトルは勇利への執着がすさまじいし、あの手この手で勇利を囲いこんで自分の手元にとどめておこうとする人になってしまいました。

だいたい他の人の作品でもそんな感じですね。勇利にめっちゃ執着して、嫉妬深くて、勇利を包囲したがるヴィクトル。
そのバリエーションが人によって異なる、という。

ヴィクトルから見た勇利

本編では、ヴィクトルが勇利をどう思っているのか、ストレートな表現は出てこない。
そのかわり、ツッコミどころ満載の言動・行動をばらまいている。

試合前日の火鍋屋で、裸になって勇利に抱きつき、その写真をピチットに撮らせる。
試合会場では人目を気にせず勇利に抱きついて、勇利のスケート靴にキスをして、ひざまずいて靴紐を結んでやる。
勇利のいないところでスリーピングビューティー呼ばわりして、ファイナリストたちの前では「金メダルで結婚だよー」と爆弾を投下する。
わざとやってんのか!

ユリオでなくても「見せつけてんじゃねえ!」とキレそうなレベルです。

まぁ、見せつけてたんだろうな。あからさまな牽制してるよ。
なんで牽制するのかって言ったら、「勇利は自分のものだ」と主張しているとしか思えないわけですが。

その「自分のもの」というのが恋愛要素を含む意味なのか、「このスケーターを育ててお披露目するのは俺だ」的な師弟関係を強調したものなのか、あるいはその両方か。
ふたりの関係を見ていると両方に思えます。入り混じってそう。

ヴィクトルって、「あなたにとって勇利はどういう存在なのか」と聞かれた時に、ちゃんと言語化して答えられるのかな。
「ただの教え子だよ」みたいなことは言わない気がするんよね。
アガペーの解釈を聞かれて「フィーリングだよー」とか言い出す男だから。

いろいろと入り混じった関係性や自分の感情や欲望をひっくるめて、「どういう存在?なんでもいいでしょ。勇利は俺のそばにいるんだし」とか微妙に噛み合わないひとことで済ませそうな気がする。
(そして物議を醸して勇利が苦労する未来しか見えない)

さすがにそこまではアレか。
「かけがえのない存在だよ」くらいの言い方に落ち着くのかな。
具体的に教え子だとか恋人だとか、そういう言い方はしない気がするの。ひとことで説明できないだろうから。

ヴィクトルは、自分にとって勇利が必要な存在だというのはわかってるから、自分がそれを見失わなければいいや、ってところがありそうだなと。
もし勇利に対する欲望を自覚してもすんなり受け止めそうだよね。「俺はほしかったのか。じゃあ手に入れよう」みたいな。
飢えの自覚はなくても、生き残る・生き返る・勝利するために必要なものへと飛びつく瞬発力はあるから。

問題はどちらかが引退した時、その後のふたりがどうなるかですね。
プロのスケーターになるにせよ、コーチに転身するにせよ、それまで世界の一線に立って戦い続けてきたのが、もう戦わなくていいんだってなった時、ふたりの関係はどう変化するんだろうな。
スケートからは離れないんだろうけど。