専業主夫とふたりで暮らしていて思うこと

男性に対する「働け、稼げ」というプレッシャーは相当強いものだなぁと思う。
女性に対するプレッシャーが「結婚して出産しろ、家事もしろ、あっでも今後は共働きでよろしくね!」という感じで全方位から来るのに比べると、一点集中である。

以前、彼氏は「やっぱり男女で、ちがうんやなぁと思う」とぼやいたことがあった。
あてもなく仕事を辞めたり、バイトでしのいでいる女友達が何人かいたらしいのである。

「女友達の話を聞いてると、働いてなくてもしばらくは平気ってテンションやねん。男ほど『働け』ってプレッシャー強くないし、バイトでもいいやーって感じやし」

コンクリートの溝のような小川にかかった小さな橋を渡りながら、22歳だった彼氏はぼやいた。
「でも俺、男やからなぁ…正社員で働かなあかんのやろなぁって」

それから5年たって、彼氏は今、専業主夫生活を謳歌している。

働いていた頃

彼氏はWebデザイナーだった。
DTPの経験もあるため、たまにDTPデザインもやっていたが、「めっちゃ単価低いし、やりたくない」という。

彼氏はクライアントのもとへ足を運んでヒアリングをするといった、ディレクションも自分でやっていた。
デザインして、コーディングして、CMSにのっけて、納品する。

一方、前職の私は、ネットショップの画像補正やらライティングやらデータ登録やら在庫チェックやらメルマガ作成やら、いろいろ担当していた。
デザイナーに比べると「こういう仕事です」と一言で説明できない。
おまけに、ずっと非正規雇用だった。

(転職活動中に実感したのだが、この手の「なんでもかんでも担当せざるをえない」という仕事内容は、他社ではあまり評価されなかった。よそのネットショップはもっと担当業務がくっきり分かれていて狭く深くなので、高いスキルを要求されるし、そもそもデザイナー以外の求人は非常に少ない)

だから、彼氏のほうが稼ぎは多かったし、専門職としての能力も高かった。

しかし、彼氏の職場は大阪にあったので、通勤に時間がかかる。電車も混む。おまけに私より始業時間も早い。
それなのに彼氏は、よりによって朝に弱いタイプだったのだ。

そんなわけで、仕事と通勤の両方に彼氏は強いストレスをかかえていた。

やがて、週末だけ飲んでいたお酒を毎晩飲むようになり、ついには「タバコ吸いたい」と言いだした。
(かつての彼氏は喫煙者だったが、禁煙すると決めてあっさり成功した経緯がある)

私はタバコが嫌いだ。同居している家族がタバコを吸うなんて、耐えられない。
においがものすごく嫌いだし、自分の服や布団もタバコくさくなりそうだし、それに火が怖い。

だから、彼氏が仕事を辞めると言った時も反対しなかった。
ストレス満載で酒とタバコを浴びてイライラされるよりは、家でゆっくりしてくれるほうがよっぽど平和だと思ったのである。
もう、タバコ吸うくらいなら会社辞めて!

ちょうどその頃、私は転職先での試用期間が終わって、正社員での本採用が決まったところだった。
彼氏の貯金額も知っていたし、当分は無職のまま様子を見ればいいと思ったのだ。

主夫(またの名をストイックなニート)

彼氏は見ちがえるように元気になった。
本を読み、家事をして、散歩やジョギングも始めて、かなり健康的になった。

私たちは、ふたりで使うものは代金を折半して、自分ひとりが使うものは自腹を切るという形で家計を回している。
レシートを溜めて月に1回、簡単な関数を入れたGoogleスプレッドシートで精算しているのだ。

ひとつひとつレシートを見ながら、共有でないものは折半対象から外す or 払うべき相手の自腹対象に入れて、私と彼氏それぞれの「折半すべき金額」を算出。
家賃を振り込む私が毎月どうしても支出超過になるので、その差額を彼氏に払ってもらう仕組みだ。

つまり、どちらかが無職になっても、養うわけではない。
無職になった彼氏は収入がゼロになってしまうが、生活費は毎月折半せねばならない。

俄然、彼氏は料理と買い出しに力を入れ始めた。

いつ、どこのスーパーに行けば、どの食材が最安値で買えるのかを把握し、優先順位をつけてなるべく安く食材を手に入れる。
冷蔵庫の中身を把握して、傷めたり腐らせたりしないように使いきる。

昼も夜も自炊するのはもちろん、今までは外食が多かった土日のお昼も自炊。
おかげで私も食費が減って、かなり助かっている。

毎日料理していると、どうしても飽きがくるため、自然とレパートリーも増えた。
「クックパッドを見れば、なんとかなるで」という。

掃除も、週に何回かのペースで丁寧にやってくれる。
ただし、洗濯とゴミ出しは、朝起きてすぐ動ける私の担当である。

割となんとかなる

彼氏を見ていると、「この人、本当は外で働くよりも、主夫のほうが向いてるんだろうな」と思う。

私もそんなに仕事熱心なタイプじゃないけど、主婦になりたいとは思わないのだ。
きっと料理が苦手だからだろう。

そして、夫が専業主夫になるおうちは、妻がよっぽど仕事のできる人か、稼ぎのある人だろうと思っていたけど、そうでもなかった。
子どもがいなければ、割となんとかなってしまう。

ただ、どんなに節約しても、市民税やら国保やらは容赦なく襲ってくる。
私の月収があと5~6万多ければ、彼氏を養うこともできるだろうが、さすがに厳しい。

そんなわけで、彼氏も「そろそろバイト探そうかな」と言っている。
私は私で「週2日程度のバイトでも全然いいよぉ~!」などとほざいている。

いったん専業主夫のいる暮らしに慣れて、毎日ごはんをつくってもらえるありがたさを知ってしまうと、
「ごはんつくってもらえるなんて最高!つくってもらえるなら、そんなに稼がなくていいよ!」
なんて心境になってしまうのだ。

胃袋をつかまれるというのは、想像以上に効果絶大である。

(でも、彼氏に時短のバイトや主夫生活を望むのは、彼氏の仕事の可能性を狭めてしまうことにもなるから、いいことではないだろうなとも思う。これは専業主婦を望む男性にも言いたい)