白雪姫の終わらない呪い、マレフィセントに見る母と娘の関係性

『白雪姫』について、こんな記事を読みました。

なるほど!
なんで私はこういう視点に気づかなかったんだろう、と思いながら読んだのですよ。

おきさき様の哀れさ

言われてみれば、『白雪姫』に出てくるおきさき様は、ものすごく承認に飢えています。

お妃様は、自分の容姿が世界で一番だと思っているんだけど、誰かに認めてもらえないとそのことに自信を持てないんですよね。

毎日、鏡に向かって「鏡よ鏡、世界で1番美しいのはだぁれ?」って聞き続けるおきさき様。
昔は疑問に思わなかったけど、改めて見ると「ちょっと病んでるのでは…」と思います。

ていうか、鏡って何様って感じじゃないですか?誰が一番美しい、とか言って、「美しさ」の基準を勝手に作って、ジャッジしている。

お妃様は、そんな身勝手なジャッジに左右されなくったって、自分は美しいんだって、思っても良かった。若さや見た目だけで人の価値をジャッジするような、そんなやつらなんか気にしなくてもよかった。そうやって人をジャッジしてくるやつらの代表である鏡なんて、叩き割ってやっても良かった。

そうだよねぇ…。

物語の中では、おきさき様は恐ろしい存在です。
少なくとも、子どもの頃の私は、おきさき様が魔女だと思ってました。
魔法の鏡を持っていて、完璧な老婆に化けて白雪姫を毒殺する魔女だと。

しかし、こうして見ると、7歳の娘(原作の白雪姫は最初に殺されそうになった時点でまだ7歳でした)が自分より美しいと言われただけで取り乱し、「あの子を殺して何がなんでも自分が1番にならなければ」と思いつめるおきさき様は、相当哀れです。

恐ろしいというよりも、もろい。
他人が認めてくれる美貌の他に、「自分は自分だ、これで大丈夫だ」と思えるものを持てない。自信がない。

そういえば、男尊女卑が強い環境下では、女性が自分の外見(美しいかどうか)を気にしやすいのだそうですね…。

上記の記事を最初に読んだ時は、そんなふうに感じました。

白雪姫は同じ道をくり返すのかもしれない

その後、布団に入ってから、ふと思ったんですよ。

もしかすると『白雪姫』って、円環する物語なんじゃないかなって。
すでに誰かが言ってるかもしれませんが。

白雪姫を連れ帰った王子様は、「美しいから」という理由で若い女性の死体を持って帰らせるような男性なんですよ。
たまたま白雪姫が生き返ったから結婚したけど、若くて美しいのなら死んでてもかまわずに自分のものにしちゃおうという、なかなか吹っ切れた(吹っ切れすぎた)人です。

世の中にはいろんな性癖があって、女性が寝てる or 気を失ってる状態でないと興奮しないという男性もいますからね…。
(どうしても寝ている妻とやりたいあまり、妻に睡眠薬を盛ろうとして逮捕された夫の実例が『性欲の科学』に登場する)

白雪姫と結婚した王子様も、そのタイプだったのかもしれない。

それはさておき、この王子様、美しいからというだけで死体をもらっちゃうような人ですよ。
多分、ある程度の年月が流れたら、もっと別の若くて美しい女性に入れあげると思うんですよね。

ただでさえ王族だし、愛妾がいてもおかしくない。
だから年を食った白雪姫も、かつてのおきさき様みたいになるんじゃないかなって、ふと思ったのです。

白雪姫には恐らく「死体でもいいから持って帰りたい」と王子様に思わしめた美貌の他には、取り柄がない。
若くしてお城を追われて森に隠れ住んでたから、多分そんなに宮廷で役立つものを持ってないと思う。

もし息子ができたら、その子を次期国王の座につけることに全力をそそぐんでしょうけど、子どもに恵まれない可能性だってある。
一方、自分より若くて美しい女性たちが次々に夫の前に現れて、白雪姫は夫の愛や関心をまるごと他の女性に奪われる不安にさいなまれ続けるんじゃないかと。

自分の美貌を他人に認めてもらう他に、よりどころがない、と思いこんでしまう。
まさにそれって、おきさき様と同じ立場では?

最終的に、白雪姫は王子様と結婚しても救われることはなく、かつての自分のような存在の娘に対して牙をむき、その罰として殺されるのでは?

呪いの物語だなー…。
「皆が私のことを美しいって言ってくれないと駄目」っていう呪いのお話だよー…。

マレフィセントは本当にあれでよかったのか

そんなことを考えていたら、先月Huluで見たディズニー映画『マレフィセント』のことも思い出しました。

あれは確かに『アナと雪の女王』と並んで画期的なストーリーではあったと思うのですよ。

オーロラ姫を助けるのは王子様のキスではなくて、育ての母的な立ち位置だったマレフィセント。
女の子(オーロラ姫)の呪いを解くのに、男の子(王子様)は必要ない。

ただ、見ていて私は「大丈夫か?」と思った。

呪いから身を守るために、オーロラ姫は実の両親である国王夫妻から遠ざけられ、3人の妖精のおばちゃんによって育てられる。
しかし、このおばちゃんたち、人間の子育てにはあまり役に立たない。放置プレイとか序の口。

仕方なく、呪いをかけた当の本人であるマレフィセントがオーロラ姫の育児に(こっそり)手を貸すはめに。
そのうちオーロラ姫はマレフィセントになついてくるし、マレフィセントも彼女に愛着を覚えてしまう。呪いを無効にしようと試みるほど。

んで最終的にマレフィセントのキスがオーロラ姫の呪いを解いて、オーロラ姫はマレフィセントの味方となって戦い、マレフィセントの国に行くんだけどさ。

「これ、『男の子がいなくても大丈夫!』ってお話になってるけど、かわりに母と娘の癒着が進んでしまうのでは?」って思ったんですよ。

娘の呪いを解けるのは、王子様ではなく、娘を見守ってきた育ての母。
その後も娘は母が君臨してきた国に戻って、母が選んだ(連れてきた)王子様と恐らく一緒になる。

なんか怖い。
これ、母の呪縛から逃れられない娘みたいに見えるんだけど、私が気にしすぎなのかな。

とはいえ、表立って子育ての大半の部分を担っているのは妖精のおばちゃんたちだし、離れて暮らしてきた実母も一応存在するし、マレフィセントはオーロラ姫にとって「母」の立ち位置ではないかもしれんけどさ。

確かにね、王子様がいなくても女の子の人生は拓ける!っていうの、大事なメッセージだと思う。

ただ、現実には「夫と結婚することで、母から逃れて安定することができた」っていう女性も一定数いるし、母親の支配を受けて男性と恋愛関係を築けない女性も知っているだけに、なんかこう、その、もやもやするんですよね。