Kindle書評『5人の王』と『5人の王II』

久しぶりにかなりハマってしまった本があるので、シリーズの最後まで読み終わらないうちから紹介しちゃうよー!
いってみよー。

恵庭『5人の王』


ファンタジーBL小説ですが、BLよりもファンタジー色の強いお話です。
本編が3巻まで、あと外伝が2冊出てる。コミカライズもしてますね。

王たちに翻弄される三角関係が萌える

これね、めーっちゃ面白かったです。
1巻目は無料サンプルが非常に長く(単行本200ページ分らしい)、試し読みするのには充分すぎるほどでした。
その無料サンプル分の中に誤記が2ヶ所あったけど…。

カスタマーレビューを読んだところ、もとはWeb小説だったらしい。

そのためか、文章はあんまりうまくないです。
句読点の位置がおかしいし、めちゃくちゃな敬語もたまに出てきます。

でも、Web小説で連載していたからか、けっこう長いんですよね。1冊1冊が。
だから900円でも長く楽しめます。

あと、Web小説で連載していたためか、常に飽きさせないストーリー展開なんですよ。
もう続きが気になって仕方ない。うおおおお。

ストーリーについては、カスタマーレビューで「『十二国記』の陽子編をもっと甘くエロくした感じ」と表現している人がいて、言い得て妙だなと思いました。

ただし、本当に『十二国記』っぽいのを期待すると多分がっかりします。あくまでも雰囲気が似てるってことで。
(こっちの主人公のほうが、精神年齢も知識もはるかに幼い。それにあわせて文体もくだけている)

主人公は、浅黒い肌に黒髪と緑の瞳を持った14〜15歳の少年セージ。
彼には、未来予知ができる特殊な能力を持った10歳の妹ヒソクがいる。

彼らが住む国には神の血を持つという5人の王がいて、それぞれ青の王、赤の王、緑の王、黒の王、紫の王と呼ばれている。
(王の名前や、王の側近たちの名前も、それぞれの色にまつわる名前です)

ある時、未来予知のうわさを聞きつけた王宮が、ヒソクを連れていこうとしていると知り、妹を守りたい一心で、セージはヒソクの身代わりとなって王宮へ向かう。
お話はここから始まります。

そして、セージはヒソクと呼ばれたまま、青の王の所有物(側女)にされ、青の王に抱かれてしまう。
傲慢で冷たい青の王に反発し、ひょんなことから本来は知り合うはずもない赤の王と知り合って三角関係になり…というのが1巻の前半まで。

後半以降は、セージに容赦ない運命が襲いかかり、セージは王たちを縛っている過去の謎解きと、不安定な国内情勢、妹への心配で千々に乱れます。
自分の立場を背負いきれず、能力や感情をうまく制御できず、相反する望みに引き裂かれている。

ファンタジー小説としての色合いが強いこともあり、「カップルはお互いの相手としか寝ない」というBLや少女漫画にありがちな前提は存在しません。

青の王はセージ以外にも複数の女を抱いているし、セージに思いを寄せる赤の王も自分の宮殿にいる側女を抱いています。
そして当のセージも、王宮に来る前は屋敷の主人に犯されていたし、2巻目では淋しさと人恋しさから他の男と寝ている。

そのため、「主役のカップルが他の相手と寝るのは許せない」という人には向かないお話です。
それを気にしないなら大丈夫だと思う。面白かったし、大変萌えましたよ。

特によかったのが、「王に抱かれた相手は、胸元に王の名前と同じ色の模様が浮かび上がる」という設定。
この模様は放っておくとだんだん色が薄れて、40日で消えるのですが、模様が出ているあいだは「王の所有物」として扱われ、他の王が手出ししてはいけないことになっているのですよ。
(だから他の王に手出しされたくない場合は、定期的に抱く必要がある)

ちなみにこの模様、王に抱かれた相手だけでなく、王を抱いた相手にも出ます。
(王は男だけとは限らないため)

『十二国記』の王と麒麟の関係性にも萌えたけど、この「模様が浮き出る」という設定もめちゃくちゃ生々しくていいよねー。
自分の胸元に青の王の模様が出ているうちは、赤の王と恋仲になることができないんですよ。

面白かったので熱心に読みふけってしまい、彼氏が不機嫌になってました…。

恵庭『5人の王II』


次の日に、2巻をぽちっとなー!

1巻の後半で襲いかかった運命が、さらに厳しくなってまいりました。
赤の王、フェードアウトしちゃいましたね。恋愛どころじゃなくなったからね。

セージにも特殊な能力が現れ、そのせいで彼は頻繁に王たちのさまざまな過去を見るようになります。
場面も登場人物もくるくる変わるし、登場人物の名前も入れ替わったりするので、人によっては読みづらいだろうな。

(王の名前は、もともとの本名と、王として代々受け継ぐ名前の2種類ある)
(過去の場面で先代の王が出てくると、誰が誰だか混乱するかもしれない。名前を覚えていれば大丈夫なのですが)

正直なところ、セージの気持ちは、私にはいまいちわかりません。
彼は「妹を守りたい」と何度も言うけれど、妹本人の望みは無視して、ただただ、自分が望んだように妹を守りたいと思ってるのね。そのために死んでもいいと思ってる。

自分のやっていることが、妹の望みとは異なるのだと知らされても、軌道修正できない。ずっと「妹のためなら死んでいい」とくり返す。
なんでだろうって思いながら読んでた。

妹とふたりで捨てられて、奴隷扱いされてなんとか生きのびてきたセージには、それ以外の「自分の核となる気持ち」が持てないのかもしれないな。
だから、今までの自分をすべて否定するように思えて、妹の望みに反するとわかっていても、わざわざ「妹のために死ぬ、それが俺の望みだ」っていう方向に突っ走っちゃうのかもしれない。

根本的に、セージは人にやさしくされること、愛されることにすごく飢えている。
そのため傷つきやすいし、たわいもなく自分の気持ちを見透かされて利用されてしまうし、さらには「自分がもしこの人の立場だったら」と感情移入して、自分を殺そうとした相手にも許しを与えようとしてしまう。
(その甘すぎる処置のせいで、ますます自分の首を絞める)

セージの立場が激変し、国内情勢が危うくなったこともあって、2巻目ではぐっとエロシーンが減ります。
ものっすごく思わせぶりな、ここから長い夜が始まりそうなところで3巻に続く。ぬおおおお。

しかし、このシリーズは非常に妄想を刺激してくれるね…。

本編全3巻に外伝も含んだセットで、まとめ買いもできるよ。