Kindle書評『なぜ女は男のように自信をもてないのか』と『きのう何食べた?』

今回は少しお硬い本と、真面目に楽しめる漫画の感想です。
いってみよー。

キャティ―・ケイ、クレア・シップマン『なぜ女は男のように自信をもてないのか』


ふと興味を持ってぽちってみたんやけど、いやぁ、面白かった。

自信を損なう犯人とは?

こんなタイトルですが、もちろん男性にもおすすめの本です。
訳者あとがきには、「日本人は他国に比べて自分に自信のない人が多い、と統計に出ている。だからこそ、日本人(男女問わず)に読んでほしい」とあったしね。

この「自信がない」というのは、具体的に言うと、

  • 女性のほうが昇進のチャンスに尻込みしやすいのはなぜなのか
  • 男性に比べて女性があまり給与アップの交渉をしないのはなぜなのか
  • 女性から見て多くの男性が「根拠もなく自信満々に見える」のはなぜなのか

などといったあたりです。

筆者は、それぞれ結婚して子どもを育てながら、ジャーナリストとして経験を積んできた女性ふたり。
お互いに上記のような疑問を持ち、自信というものについて(そして男女で差があるように見えることについて)謎解きをすべく、さまざまな人々に取材していきます。

まず冒頭で著者を驚かせるのが、
「スポーツの世界でバリバリやっている女性でも、世界的に有名な企業のCEOを務める女性でも、国家元首になった女性でも、実は自分に自信がなかったり、自信をかき集めるために苦労している」
というエピソードの数々。

こんなすごい人たちでも自分に自信がないなんて、なおさら私たちはどうしたらいいの?と途方に暮れる著者。
(恐らく大半の読者も同じ気持ち)

しかし、そこから心理学者、動物のパーソナリティを観察し続けている研究者、自信がどれだけ遺伝の影響を受けているか調べている研究者、男性社会で出世をあきらめなかった(そして自分なりの自信を身につけた)女性たちへと取材を続け、面白い話がたくさん出てきます。

彼の考えでは、失敗やミスをくよくよ考えたり、外の世界をなかなか頭から締め出すことができないのが女性選手の最も大きな心理的障害であり、それはもろにコート上でのパフォーマンスや自信に影響するという。

「ほとんどの人が、ゴールに到達するためのモチベーションを上げるためには、自己批判をしなければならないと信じています。本当は、自分を常に批判していると、どんどん落ち込んでいってしまうんです。やる気が起きる心理状態にはならない」

女性のほうが「ああすればよかった、これは失敗だったかも」と考えがちなんだけど、考えすぎてもろくなことはない、とか。

こつこつがんばり続けることが、細部にまできちんと取り組むことが、すべてのことを完璧にこなすことが、キャリアを築きあげることなのだとあなたは信じたいかもしれない。自己過信は、破滅的な結果を招くのだと。だが、たいていの場合、真実は逆である。

最も自信をダメにする女性たちのゆがんだ習慣は、「完璧さを追求すること」だった。

完璧主義は結局のところ何にもならない、とか。
(くよくよ考えて反省し続けること、完璧を目指すこと、どちらも自分の自信をなくす方向に働く)

考えすぎ(反芻)と完璧主義

これね、私も彼氏とつきあい始めた頃、何度となく言われたんですよ。
「くよくよ考えるのをやめなさい。考えすぎても、何ひとついいことないからね。どんどんマイナス思考になっていくだけやからね」って。

彼氏も昔、あれこれ考えすぎる性格だったらしく、そこから「考えすぎる癖をやめる」という方向に改善したのだと。
私がくよくよしていると、「はい、ここで終わり!もう考えない!」とか、「あなたの考えすぎですよ」とか、「はい爆発した!あなたの嫌いなおっさんはもう爆発して消えたよ!」ってストップをかけてくれた。
おかげで私もだいぶマシになりました。

完璧主義も、ろくなことないよねー。
私は「クオリティとスピード、どっちを重視する?」って聞かれたら「スピード」って答えるほうなんですが、うっかり完璧主義のスイッチが入ると何もできなくなるんですよ。
というか、集中力が続かなくて飽きちゃって、中途半端に終わる。

スピードを重視するあまり、KDP本も基本的に表紙ができたらすぐストアに登録してしまいます。んで、プレビューファイルを実機チェックしながら校正。
(この速さで書いてる割には誤記が少ないほうだと思うけど)

ブログも、思いついたらとりあえず下書きで一気に書いちゃう。んで読み返しながら直して、気に入らなければ公開せずに削除する。

子どもの頃は完璧主義だったので、小説を書き始めても未完のまま放置してばかりでした。

挑戦と失敗を恐れない、いい子を育てない

あと読んでいて興味深かったのが、アメリカの最近の子育て事情。
とにかく褒めて育ててしまいがちだけど、これがかえって子どもたちの自信を育てるさまたげになっている、と。

というのも、ある程度「自分は今までやってこれた、だから次も大丈夫」って思えないと、自信は身につかないから。
ろくに経験も積まないまま、褒められて「自分はいけるだろう」と思っている程度の自信は、非常にもろい。

また、アメリカでは「才能は神様からの贈り物」という考え方の弊害として、子どもに得意なことしかさせない(苦手を克服する機会があまりない)ので、子どもに「自分はやりとげたぞ」という自信を与えづらいのだと。

その対照的な例として、アジア(特に日本や中国)の子育てが紹介されてました。
アジアでは、子どもたちの苦手分野を伸ばして平均的な能力を上げようとする。この過程で子どもに「苦手だったけど克服できた」という自信を与えることができる、と。

しばしば、ネットでは「苦手分野を必死にやるより、得意分野を伸ばしたほうがよっぽどいいよ」という意見を目にしますが、逆の文化圏からは異なる景色が見えるものですね。視点が変わると面白いな。

自信があるふりをしても、それは「ふり」だから、かえって自分自身を苦しめてしまう。本当の自信を身につける必要がある。
そのために、「小さな失敗」を恐れずに行動すべきだ、というのが、この本の主張です。

特に女性は、子どもの頃から「おとなしくて親の言うことを聞く、いい子」になりやすい。
ところが、この「いい子」は完璧主義に陥りやすく、ミスを恐れやすい性格になってしまうと。
でも、自信をつけるためには、ミスを恐れずに行動するしかないし、早め早めに「小さな失敗」をしておいたほうが今後のためになる(大きな失敗を避けられる)

だから、子育て(特に娘の場合)では、失敗を責めすぎず、「いい子」であることを褒めすぎないように、と。

また、自信がある態度としてイメージされやすい「大きな声で自分の主張をひたすら話し続ける」的な態度(おっさんみたいなアレ)は、必ずしもとる必要はない、とも述べている。

そういう「いかにも昔ながらの男性的な自信のある態度」は、実際にはその場のマナーを無視していることが多いし、特にコミュニケーションを重視する現代社会ではマイナスに働く可能性も高い。

「女性でいることのほうがずっと面白いのに、どうして自分そのものでいることを抑えなければいけないの? 女性である自分に、力や価値をつけていくほうがいいでしょう。すべてにおいて男の子たちの真似をする必要はないんだって、私は昔から言っているの」

自信のあるふるまいは人それぞれだし、おっさんのようにふるまう必要なんて、これっぽちもない。
実際、男性の中にも「おっさんみたいな態度をとらなくても自信を示すことはできる」と考えて、それを実行している人はいる。

基本的に、幼少期の男子は、言語能力と感情処理能力において、同年の女子に大きく遅れをとっているが、女子は空間認識能力において男子に大きく遅れをとっている(*35)。だが、この能力における解剖学的な差異は十八歳ごろまでには通常解消している。しかしそのギャップを永久的なものだと誤解していたら、色々と吸収しなければならない大切な学習年齢のころに、簡単にステレオタイプに感化されてしまう。

男女差については、能力的にはほとんど差がないのに、「自分に自信がない」ということで女性たちはテストの回答をためらってしまったり、あきらめてしまったりすることが非常に多いそうです。

「考えすぎ」、「人を喜ばせたい」、「失敗を忘れられない」という、私たちが最近気づいた「自信を阻むブラックリスト」の三つの特徴

だってさ!

よしながふみ『きのう何食べた?』1〜10巻


弟から紙の漫画を借りてたんだけど、とうとう自分でもKindle版を買ってしまいました。

料理と日常、どっちも知り合いみたいなリアルさ

いろんな人が言っているように、この漫画は「めっちゃ地に足の着いた、リアルな料理漫画」です。
複数のおかずを同時進行でつくりつつ、「この合間にこれをこうやっちゃって」とか「この工程は省略してOK」とか、実際に自分の家族が料理しながら教えてくれてるみたいな描写が満載。

前の職場の人(オタクではない料理好きな女性)におすすめの漫画を聞かれて、これをすすめたことがあります。
そしたら、実際に読んで「すばらしいです!すごく参考になる…熟読したいです!」と絶賛してはりました。

ちなみに私、びっくりするほど料理の描写を流し読みしているので、実際の工程をあまり覚えてません。
「あぁ…私は料理に興味ないんだな…」と実感しました。

そんな人間が読んでて面白いのか?って言われるんですけど、面白いんですよ。
この漫画、「ご近所に実在してそうな、リアルな日常を味わう漫画」でもあるからです。

スーパーで知り合って仲良くなった主婦のおばちゃんとの会話とか、スーパーのレジの店員さんとの攻防とか、主人公たちの職場の話(弁護士、美容師)とか。
あるいはお互いの両親が年をとって病気になったり、「うちの父親、ATMが使えないんだよね…」とか。

また、この漫画の主人公は、同居しているゲイのカップル(4~50代)なのですが、BLな描写は注意深く排除されているため、BLが苦手な人でも普通に料理+ご近所日常漫画として楽しめるのです。

現在、毎日料理をしてくれている彼氏に、この漫画を読んでもらったんですよ。
何も言わずにタブレットを渡したため、しばらく読んでから「……この人たち、ゲイなの?」と声を上げた。
(彼氏はBLが嫌いだし、ゲイも苦手である)

私「大丈夫、キスシーンとか一切出てきませんよ!」
♂「……」
私「だから安心して読んで。ちゃんとあなたが読める漫画を渡してるから」
♂「それもそうやな」

その後、シロさんのお母さんのゲイに対する偏見の数々と、そこから生まれたエキセントリックな発言を読んだ彼氏は、
「このお母さん、頭おかしいな…」
と苦笑いしていました。