Kindle書評『銀月夜』『花の慟哭』『愛を乞う』『水曜日の悪夢』

夜光花のBL小説、一挙に4冊いってみよー!

夜光花『銀月夜』


「凍る月」シリーズのスピンオフ。シリーズの中では6冊目(全8冊)です。

このスピンオフは、獣人の銀を主人公にしたお話。

自分を縛り、自分に厳しく戦う

ものすごく自分を縛って戦い続けている銀が、痛々しくも嫌いになれない。そんなお話です。

自らも獣人でありながら、自分が獣化することを固く禁じて、人間の姿のままで獣人の組織と戦う。
同じように獣人の組織をつぶしたがっている人間たちと共闘することもあるけど、残酷な手段は使いたくないので、そういう手法を提案してくる相手とは一緒に組めない。

「獣人になっちゃ駄目」「罪のない人間を巻きこむような手段をとっちゃ駄目」と、めっちゃ真面目に、さまざまな縛りを己に課しています。
そんな銀に、「組織をつぶしたい、俺と組んでくれ」と近づいてきた獣人がいた…。

彼の正体が明らかになるにつれ、獣人の組織を率いる須王がなぜあんなに強いのかも語られてるよ。

恋愛要素は非常に薄く、エロシーンでも「どうにもならない現状に、もがきながら戦い続ける者同士のぶつかりあい」という印象が強い。
こういうBLも大好き。恋愛だけじゃ面白くないよね。

夜光花『花の慟哭』


これも「凍る月」シリーズのスピンオフ。シリーズの中では5冊目。
ただし、4冊目の『花の残像』の続きです。

ラヴァーズ文庫に問い合わせたけど…

この「凍る月」シリーズについては、ちょっとよくわからないことになってまして。
というのも、何冊かKindle化されてない本があるんですね。

シリーズは順番に並べると、下記のとおり。

  1. 漆黒の情人
  2. 紅の契り
  3. 灰色の衝動
  4. 花の残像
  5. 花の慟哭
  6. 銀月夜
  7. 七色の攻防
  8. 瑠璃色の夜明け

最終巻の『瑠璃色の夜明け』までKindle化されてるんですが、なぜか『灰色の衝動』と『花の残像』がKindle化されてない。抜けている。
特に『花の慟哭』は『花の残像』の続きなので、知らずに読むとかなり不自然なことになるんですよ。

なんで抜けてるのかな?と思って、5月5日に竹書房ラヴァーズ文庫のメールフォームから問い合わせを送ったのですが、現在も特に返答はいただけておりません。

このへん、出版社によってレスポンスの速さは全然ちがいますね…。
遊行寺たま『+C sword and cornett』のKindle化の予定について一迅社に問い合わせた時は、割とすぐお返事が来たんだけど…。
(今のところKindle化の予定はありませんという返答だった。でもその後、シリーズの番外編の出版日に合わせて全巻Kindle化してくれた)

替えのきかない存在という王道ストーリー

それはさておき、お話の感想について。

こっちは『銀月夜』からは一転して、あぁー!BLの王道だー!って感じ。
誰もが認める最強の男と、そんな彼の心をとらえて離さない最弱の少年。お互いに替えのきかない存在。そう、まさに少女漫画と同じ。

獣人の組織のトップを張る須王と、かつて彼と契約していた「餌」の巴のお話です。
獣人の組織を内側から描いたストーリーでもある。

Kindle化されていない『花の残像』では、須王と巴の出会いから、須王が組織のトップになる直前が描かれてるんだけど、『花の慟哭』はその続き。
引き離された須王と巴の再会、そして組織を内部からゆるがす反逆事件と、その終息。

特に冒頭は、引き離されて記憶喪失になった巴が、「餌」である特殊体質を利用されてかなり残酷な目にあう。かわいそうでござる…。
そのかわり、中盤以降は須王との甘々のエロシーンが楽しめるよ。

「凍る月」シリーズの主人公である光陽は20歳前後で契約してるけど、巴はもっと若い頃(中学生くらいだっけ?)に契約しており、幼い外見のままで時が止まっていて、若干ショタっぽく見えるね。犯罪的なにおいが…。

夜光花『愛を乞う』


はじまりは異常な設定なんだけど、始まってみたら割と平和な学園モノのストーリーでした。

どっちの親もひどいよねっていう

両親の借金を帳消しにするかわり、変態の富豪に売られてしまった主人公。
そこで主人公は例の富豪から、「高校卒業までの6年間、息子の性欲処理の相手となるように」と言われます。

やばい展開しか想像できなくなる設定ですが、息子本人は父親ほどイカれておらず、「俺は全寮制の高校に進学するから、お前も一緒に来い」と言ってくれる。
猛勉強してその高校に入ることで、主人公は変態の富豪の屋敷からいったん逃れることができた。

その後しばらく全寮制の男子校らしいBLストーリーが進みます。というか、それが大半のストーリーを占めている。
なので安心して読めるよ。

主人公は卒業していったん社会に出たあと、再び変態の富豪の魔手が伸びてきて恐ろしい目にあうんだけど、最終的には富豪の息子と再会を果たし、自分を金ヅルとしか思っていない実の親とも縁を切って大団円です。

冒頭のやばい設定からすると、意外なほどまっとうなお話だったよ。
主人公も富豪の息子も、「うちの親は最低だ…」と思いつつ、なかなかすっぱりと切り捨てることができない。親子ってなんなんだろう…みたいな気持ちになるBLでした。

大学時代、私の卒論を見て下さった恩師が、「家族というものは妖怪ですよ」とおっしゃったのを思い出します。

夜光花『水曜日の悪夢』


バイオリニストBLかと思いきや、実はサスペンスっぽい(あるいはオカルトっぽい)要素を含んだBLでした。

くり返す水曜日

将来を有望視されながら、ケガをしてバイオリニストとしての一線を退き、今は教えるほうに回っている主人公。
ある日、彼は臨時の講師として呼ばれた高校で、才能あふれる少年に出会い、自分のかなえられなかった夢を彼に託そうと考える。

主人公は少年を立派なバイオリニストとして育てたくて、そのために行動を起こすんですよね。
少年が主人公に片思いしていると判明した時は、「恋愛を経験すれば彼の表現も豊かになるだろう」と考えて、「俺もきみのこと好きだよ」なんて嘘をついちゃう。大人って怖い。

一方、少年は家庭の悩みをかかえていて、そのために彼の将来が閉ざされてしまうのではないかと主人公は案じている。
ここからがオカルトっぽい展開ですが、主人公は何度か「同じ水曜日」を体験するんですよ。「同じ水曜日」に時間が戻ってるの。

少年を助けなきゃ!彼を世界に羽ばたくバイオリニストにしたい!と思って、主人公は時間が戻った時に運命を変えようとする。

最近のBLはハッピーエンドでないと駄目だという風潮があるらしく(昔のJUNEみたいなバッドエンドは出版社でも嫌がられるみたい)、この作品でもなんとかハッピーエンドに持ってってますが、そんな都合よく運命って変えられるのかなぁと少し思ってしまうね。
それまでの展開が「どうあがいても運命には逆らえない」って感じだっただけに…。

余談:最近ぽちった本

大村大次郎『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』


角川のセール対象になってて、面白そうだったので、ぽちっとな。

ピーター・ウォード『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』


紙の本の書評をネットで見かけて、Kindle化を待ち望んでいた本。
専門書だから無理かなと思ってたけど、さっきKindle化してるのに気づいたので、ぽちりました。2000円超えたけど気にしない。楽しみー!