Kindle書評『「幸せ」について知っておきたい5つのこと』と『美しい彼』

幸福学の本とBL小説。
この2冊を並べて紹介するのもどうかなーと思ったものの、『地政学入門』がなかなか読み終わらないので、読み終わった順にそのまま並べて感想を書くことにしました。

いってみよー。

NHK「幸福学」白熱教室制作班『「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室』

幸福は幸運とは異なるもの。ゴールではなくプロセス

NHKの番組を再構成した1冊。
カナダはブリティッシュ・コロンビア大学のエリザベス・ダン博士、そして心理学者のロバート・ビスワス=ディーナー博士。このふたりが幸福学について講義するというスタイルです。
途中で、学生たちからの質問も入ってる。

アメリカのデータが多いので、それぞれ章の最後に「日本の場合はこうなってますよ」という補足も入ってます。
けっこう国や文化によってちがいが出るのね。

また、最後の第6章では、日本のさまざまな現象について、ふたりの博士に質問するという構成になっています。

いくつか紹介してみよう。

ところが面白いことに、科学的な研究では、「幸運」と「幸福」の関連には疑問が投げかけられています。

人々に幸福な状態について質問すると、ラッキーな出来事(幸運)を例に挙げることが多いんだけど、実際にはハッピーとラッキーってちがうよね?っていう。

上位10%の人たちに共通していたのはたった1つ、社会との結びつきが強いことでした。幸せな人たちはみな、友人や家族と良好な関係を築いています。

残念ながら、親しい友人や家族が周りにいない人もいるでしょう。でも「社会との交わり」は近くのコーヒーショップでも体験することができるのです。

人間は群れる生き物だから…。

人は日中の3割は物思いにふけっていることがわかりました。重要なのは、人はしばしば「うわの空」になるということです。

不愉快なことでなくても、物思いにふけるのはよくないのです。
(中略)
「ここにいること」、今この瞬間に集中することは、あなたの「幸福」にとってとても重要なのです。

ぎゃふん!
妄想好きなオタクのとりさん涙目。

お金から幸せを得るには「消費とはまったく反対のことをすべきだ」というのです。

いくつかの研究では「強制されていると感じずに他者のためにお金を使ったとき」こそ、最も大きな幸福感が得られる、という結果が出ています。
(中略)
お金に限らず、無理強いされて他人に何かを与えても、いい気分にはなれません。

物質的な価値には中毒的な側面があって、それにとらわれると豊かさへの欲求が際限なく広がっていき、いつになっても満足感を得ることができないという点があります。

物質にお金を払っても、時がたつとともに満足度が下がっていく。経験にお金を遣ったほうが満足度は続くよ、という。
なんかこれ、佐々木さんのぼくモノにも似たような記述がありましたね。

幸福な人間はポジティブな感情をたくさん持ちながら、一方で、ある程度はネガティブな感情も持っている。その2つを持った状態で人生に満足している人、これが幸せな人だといえます。

誰もが素晴らしいというような、非常に中身の濃い、究極の幸福を求めようとするのは間違っていると思います。そんなのは長続きしないからです。元に戻るのです。「バランスのいいポジティブ」というのが、私たちに共通した状態だと思います。

完璧なポジティヴなんて、ありえない。

不幸とは、世界のどこかにいる一人ひとりがあちこちで孤独に悩んでいる。そう思っていませんでしたか? しかし実際には、幸福な人が固まるように、落ち込んでいる人も固まっていたのです。

似た鳥は集まりたがる。
…この表現、「類は友を呼ぶ」の意味で昔の日記にちょくちょく書いてたんだけど、実際には存在しないことわざっぽいね。もしかして子どもの頃に自分で勝手につくった??
海外のことわざかと思ってたんだけど。

それはさておき、不幸な人の周りには不幸な人が多いという身もフタもない話である。
現状を変えるために外へ出なさい、幸福な人に出会いなさいと書いてあるのですが…。

幸せな人間関係を考えるとき、誰もがサポートを受けることばかりを気にしています。まるでそれが、幸福に不可欠であるかのようです。でも大切なのは、むしろサポートをすることなのです。

うれしい出来事を恋人と共有し、成功を喜び合いたいと思ったとき、相手が関心を示さなかったカップルは、別れていたのです。
(中略)
「恋人によいことがあったら、一緒に喜んで、最高にうれしがらせてあげなさい」
そうしないのは、必死に救いを求めている恋人を助けないのと同じなのです。

これ、言われてみればそのとおりなんですけど、意識してないことが多いね。

「最近読んだ本に、こんなことが書いてあったよ!我々が大げさにお互いのことを喜びあったりするのは、まちがってなかったんですね!」
「せやな!」
なんて彼氏と話してました。ノロケか。

面白いことに、多くの人は「幸福」を「人生の最終目標」だと考えがちです。

ゴールじゃないよ、感情というプロセスなんだよ。

子どもを持つことは、トレードオフですね。こう言うと、顔をしかめる人がいるかもしれません。「子どもを持つと幸せが減りますよ」というと、「そんなこと、あるわけないじゃないですか」という人が結構います。

いいことももたらしてくれるけど、一方で数多くのストレスの原因にもなるのです。ですから、どちらでもない。つまりトレードオフというわけです。

「子どもを持つことが幸せ」という意見の人、多いんですけど、確かに一理あるだろうなって思うんだけど、一方で宗教みたいだなって思う。
当然ながら子どもを持っていない私としては居心地悪いです。

ただ、「自分ひとりのためだけに生きるのがしんどい」ってのは本当にそのとおりだと実感してるし(自暴自棄になりがち)、ある程度、自分の思いどおりにならない他者(彼氏とか夫とか子どもとかペットとか)と一緒に暮らすほうがいいんじゃないかな、とも思ってます。

凪良ゆう『美しい彼』


BL小説。

イラストなしでもOKだと思えるようになってきた

キャラ文庫なのでイラストは未収録です。
それがネックだなーと思って買うのをためらい続けてたんですが、結局ぽちっちゃいました。

なんかね、最近、割り切る気持ちが出てきた。
「別に電子書籍だったら、小説のイラストが未収録でもいいやー」って。

というのも、Kindleの場合、小説はリフロー型になるんですよ。
(本文をテキストの形で流しこんだタイプ。文字サイズや行間などを読者のほうで自由に変更できる)

で、リフロー型の場合、イラストってどうしてもサイズが小さくなるんですね。
Word文書に挿入した図みたいになるんですよ。
デフォルトでは端末の画面いっぱいに表示されないし(タップで拡大する)、容量制限のせいで画質も落とされてたりするし。

だったらもう、別になくてもいいかなって。
どうしてもイラストをちゃんと見たかったら、紙で買えばいいやーって。
(漫画の場合は固定レイアウトで、ページ全体が1枚の画像になってるから問題ないんだけど)

それに、イラストが入ってない本だと、人前でも読みやすいんですよねー。
うっかり濡れ場のイラストが表示されちゃうと、カフェとかで読みづらいっていうかね!
(読むなよ)

スクールカーストと、大逆転

いい話だったわ。

主人公の平良(ひら)は吃音があって、そのせいで子どもの頃からいじめられやすい。
でも、病気のせいなんだと言うと余計にあれこれ言われそうだから、平良は吃音のことを周りに説明せず、ただひたすら目立たないように、おとなしく、クラスの底辺をさまよっている。

しかし、必死で隠してきた吃音が出てしまって、いじめの対象になりかけた時、スクールカーストの頂点に君臨する美貌の少年・清居(きよい)が、自分の気まぐれなワガママで助けてくれた。
それをきっかけに、平良は彼に忠誠を誓い、自ら望んで清居の子分(むしろ奴隷)となるのだが…。

目立ちすぎるがゆえに、清居も人々の嫉妬や反感を買いやすい。
清居がスクールカーストの頂点から引きずり降ろされそうになった時、平良はおとなしく地味にやりすごすべしという今までの信条を破って、彼のために動く。

高校卒業後、平良も清居もそれぞれの世界が広がりゆく中で、再会して、名前のつけがたいものだったふたりの関係を進展させていく…。

BLには珍しく、主人公が攻めなんですけど、ものすごく受けっぽい攻めです。
あとがきでも書かれてるように、気持ち悪い攻め。デュフフって笑っちゃう攻め。うわー!

平良と清居それぞれの視点で話が書かれてるから、いっそうよかった。
両方の視点で読みたいよね!
(基本的に平良の視点なんだけど、途中から清居視点も入ってくる)

自分たちは、五ミリの隙間には五ミリのものしか入らないと、幼いころから見せつけられて育った世代だ。夢を見るということは、五ミリの隙間に一センチのものを入れたいと願うことで、そういうとき、成功のビジョンよりはじき出されたときのことを考えてしまう世代でもある。

この文章がね、あぁ、いまどきのBLだなぁと。
今の30歳未満の人たちの感覚だなって。合ってるかな?

BLはファンタジーなので、ぶっとんだ設定の話とか、ギャグなくらいバブリーな世界観の話もいっぱいあるんですけど、こういう地に足の着いた系の話もすごく好きです。