Kindle書評『渇仰』『二人の弟』『夏陰』『食べてしまいたいほど』

前回のBL漫画の次は、BL小説の感想まとめてのコーナーです。
4冊まとめて紹介するけど、まだ4冊残ってるよ…。

いってみよー。

宮緒葵『渇仰』


わんこ攻めが好きな著者による、わんこ攻めの1冊。
わんこっていうか…予想外でした。

犬になりたいってそういう意味

次々と不幸な目に見舞われた主人公が、とどめといわんばかりに、憎んでいた相手と再会してしまったことから、話は動き出します。

幼い頃、主人公の家に引き取られてきて、一緒に育った少年は、なぜか主人公にばかりなついて、まるで犬のように主人公にまとわりつき、あとを追いかける。
その後いろいろあって、主人公は彼のことを憎み、離れ離れになった…はずが、話の冒頭で再会。

この男が、主人公の犬になりたいと公言してはばからないという、なかなかアレな設定です。
わんこ攻めどころじゃないよ!そのものずばりだよ!
犬になりたいとか、俺は犬だからとか言いながらストーキングしてるよ!怖いよ!

設定が設定なので、ずっこけそうになる展開や台詞がちょくちょくありますが、「BLはファンタジー」という呪文で乗り切って下さい。

続編で『渇命』が出てるけど、ただの異常な束縛ストーリーの予感がする。
表紙がいっそう手にとりにくい構図になってますね。電子書籍なら誰にも見られずにぽちれるけど。

水原とほる『二人の弟』


この表紙、なんか変わった色合いだな。
あんまり今風じゃない気がする。

兄と弟と後継者問題

複雑な家庭環境で育った3人兄弟の長男が、弟ふたりに攻められるお話。

3Pか?と思われそうですが(そういうシーンも多少あるけど)、基本的に1対1です。
特に次男が長男のことを大好きで、三男と結託して、長男を籠絡しようとする。

この兄弟の父親は経営者なので、いずれは息子たちに家業を継いでもらいたいと思ってる。
ところが、長男だけは愛人の子であり、母親に疎まれて育ってきた。
出生の秘密を知ってしまった長男は、家業を継がないと決意して家を離れてしまった。
兄のことを慕ってきた弟ふたりはそれが許せず、「兄が戻らないなら家業は継がない」と両親を脅す一方で、兄を取り戻そうと画策する…という展開です。

私の家は、継ぐべきものなんて母の実家の仏壇くらいしかないので、こういう重圧がある家の人は大変だなーって思う。
もっと若い頃は「家業があると就職に迷いがなくていいよなー」なんて思ってましたが、今はとてもそんなこと言えません。

最後に、次男の視点から見た短編が収録されてるよ。

水原とほる『夏陰 ―Cain―』


同じ著者の、確かこれがデビュー作だったような。
昔、紙で読んだのですが、懐かしくなってぽちっとな。

生きるか死ぬか、それが問題だ(多分)

やくざものです。

バーテンのバイトをしていた美貌の男子学生が、客としてふらりと訪れたやくざの親分に気に入られてしまい、「姉に手を出されたくなかったら言うことを聞け」と脅されて、彼と同居することになる。
しかも彼の家に行ってみたら、自分がやくざの親分の正妻扱いに…。
(BLなのでよくある展開です)

やくざの親分の正妻になってしまう、という話では、20巻以上も続いているBL小説「龍&Dr.シリーズ」が有名ですね(あくまでもBLの世界で)
あまりにも巻数が多すぎて、まとめ買いが25巻までとそれ以降に分かれてた。

美貌の内科医が、幼なじみで10歳年下のやくざの親分の正妻となってドンパチやるシリーズです。もう何巻まで読んだか覚えてないよ…。

あのシリーズがコミカルな要素を含んでいるのに比べると、こっちは徹底的にシリアス。
主人公は暴力と流血が当たり前の世界におびえ、反抗しようとしては叩き折られ、本家にも顔出しさせられ、カタギの世界には戻れない状態に…(暗殺の対象として狙われるから)

そんなわけなので、エロシーンもどこか痛々しい。
自分が受けた衝撃や苦痛を、荒々しい行為でなだめようとしてるみたいに。

続編で『箍冬-Cotoh-』が出てます。これも紙で読んだなぁ。

横江秋月『食べてしまいたいほど』


価格や表紙の雰囲気から、KDPかな?と思ってましたが、それに近いようです。
ジャンルごとに複数のペンネームを使い分けて、「小説家になろう」などでも活動してはるっぽい。

食糧だと思って育てたはずが

特にBLだとは書かれていなかったのですが、レビューに「これBL要素があるから、苦手な人のためにも明記しといたほうがいいのでは」とあったので、ぽちりました。ありがとうカスタマーレビュー。

外見上は年をとらず、長い年月を生き、都会の人間たちにまぎれこみながら、こっそり人間を食べて暮らす、あやかしの生き物が主人公。
ひょんなことから人間の幼い男の子を拾って、表向きは人間の親子のふりをして育て、大きくなったら食べてやろうと思っていたのです、が…。

主人公は誰かの視線を感じるようになり、街にはさまざまなあやかしが現れて治安が乱れる中、主人公と「息子」の関係にも変化が訪れる。

BL要素といっても、すごくあっさりした描写だったので、本音を言えばもっと詳しく読みたかったです!
「あとは行間を読んで好きなように妄想して察しろ」って感じだった。

息子ちゃんの正体とか、いろいろ余韻を残した終わり方だったので、続きが読みたいなぁ。