Kindle書評『愛の裁きを受けろ!』と『パブリックスクール ―群れを出た小鳥―』

BL小説家の樋口美沙緒をすっかり気に入って、Kindleの中に「樋口美沙緒」のコレクションをつくってしまいました。
コレクション、その時の需要に応じて増やしたり減らしたりしてるけど、今は20個ある。

そんなわけで、樋口美沙緒の本の感想2本立て!
いってみよー。

樋口美沙緒『愛の裁きを受けろ!』


虫BLシリーズの1冊です。
なんとなく、この本だけ抜かしてたんだけど、やっぱりコンプリートしようと思って、ぽちっとな。

恵まれているだけでは、腐ってしまう

カスタマーレビューにもあるとおり、若干ツッコミどころはあったものの、基本的にいい話だった。

ツッコミどころというのは、カイコガ出身の郁が、ゆっくりとしか動けず、成長とともに口をきけなくなってしまったほど体の弱い人間だという設定なのに、それを忘れているような描写がたまにあったところですね。
あれ?とっさに他の人を助けようとか、駆け寄ろうとかできないよね?っていう。

でもよかったわー。
特に前半は攻めの視点なのが好みでした。攻め視点のBLがもっと増えてほしい。

父の望むように生きてあげたいという情と、傷つくことへの恐怖が、郁を不自由にしている。けれど積み上げられた幸福のまがい物に、本当は、倦んでいるのだ。

(……お父さんは、おれを愛してくれてるお父さんは)
きっとおれが死ぬのを待ってるだろう。

弱さゆえに大切にされ、そのことに感謝しつつも、この状況から逃れたい、でも逃れられない郁の心理描写が、話を追うごとにひりひりと増していく。

今回の攻めは陶也。
シリーズ1巻目『愛の巣へ落ちろ!』に攻めとして登場し、その後も名脇役として登場し続けている澄也のいとこです。

陶也と同じハイクラスのタランチュラ出身で、己の半身のように思っていた澄也が、よりによってロウクラス(知能も体力も弱い低階層の人々)を妻に選んでしまった。
ロウクラスを蹴散らして生きてきた陶也は当然ながら面白くない。人生つまんねーみたいな顔をして適当に遊んでいます。

同じハイクラスでありながら、ロウクラスにやさしく、積極的に彼らを保護しようとする友人の兜は、こんなことを言う。

「ハイクラスだけでいると、歪んでくる。……ノブレスオブリージュっていうのかな。守る相手がいないと、持てる者は腐ってくる気がするんだってさ」

もちろん、陶也は最初、その意見を一蹴する。

そんな陶也が、ロウクラスの中でも最弱(弱すぎてめったに生まれない)な郁とどうやってBLを展開するのか、というお話。

このお話に出てくる郁の義兄の篤郎は、ヤク中でとことんクズな男に描かれているので、篤郎が主人公となる『愛の罠にはまれ!』を先に読んでいた私としては、「ほほう、当時の篤郎は外から見るとこんなクズだったのか…」と新鮮な気持ちでした。

篤郎にどんなひどいことをされても、郁は篤郎を見捨てないんだけどさ。
対照的に、郁への思いが強すぎた篤郎は、『愛の罠にはまれ!』でものすごく自分を責めて、自分を罰しながら生きている。

やっぱシリーズ全部読んだほうが面白いわ。

しかし、樋口美沙緒の本って、受けと攻めがいったん別れた(あるいは離れた)あとに、何年もたってから再会して、互いの思いを確かめてハッピーエンドになる展開が多い気がする。

樋口美沙緒『パブリックスクール ―群れを出た小鳥―』


続きを切望していた続刊が、ついにKindle化されたよー!

愛を受け取っていないのは、自分かもしれないよ

虫BLと同様、この話でもノブレス・オブリージュの話が出てきます。
このお話は現代のイギリスと日本が舞台なので、まさに正真正銘、イギリスの上流階級(貴族)の人たちのことなんですけど。

高貴さは義務を強制する。持たない者からのひがみややっかみも、あるいは愛や執着も、すべては持てる者の義務だ。

たった一言を言っただけで、一人の人間を殺したかもしれない俺の血の重み

持てる者であるがゆえに、逃げられないものがある。
持てる者であるがゆえに、自分が与えるかもしれない影響の大きさを恐れて、愛せないことがある。

オーランドの助けによって、少しずつ臆病さを脱ぎ捨て、自分の世界を広げ始めた主人公のレイ。
しかし、レイを誰にも関わらせまいとしていた義兄のエドは怒り狂い…そこまでが前巻のあらすじでした。

この巻では、エドと過去にいろいろあったというジョナスが学校に復帰。
オーランドだけでなく、ジョナスもレイにとって重要な気づきを与えてくれる友人のひとりとなります。

「愛を受け取ってないのは、自分のほうかもしれない。そう考えたことはある?」

愛しても愛が返ってこないと苦しむレイに対し、「逆のことは考えたことはあるのか?」と。

「一人を愛せたら、もっとたくさんも愛せる。……僕はまた、誰かを好きになれます」

その後、自分の世界を広げて、いろんな人のことを思えるようになったレイの口から、こんな言葉が出るようになる。
いいなぁ…。

前巻の最初ではいけすかない意地悪な悪役に思えたものの、レイの目を開かせるきっかけを与えたギルは、この巻でかなり株を上げています。
エドよりよっぽど、わかりやすいよね。この人。
「愛人だったら全然アリだよ」とか、すがすがしいまでにはっきりしている…。

でも、パブリックスクールは、というか学校は、人生の限られた、若い頃の一時期だけ在籍する場所なのよね。
エドの卒業とともに、パブリックスクールを舞台にした話は終わり、この本の後半では8年後の彼らが登場します。

8年後の展開もよかった。皆が大人になってて。
あと、レイはもうちょっと自衛の意識を持って気をつけるべきですよ。
たとえば、すきだらけの女の子がいいようにだまされて男に傷つけられるというのは、決して絵空事じゃないんだから…。

それはさておき、『パブリックスクール』、えぇ話やった…。

これ、海外ドラマ化してほしいわー。映画でもいい。洋画で。
英語のタイトルは「A Cock Robin in Public School」なんて合いそうだよ。

余談:今読んでいる本

角川のセールで安くなっていたから、ぽちっとな。
さすがマーク・トウェインというべきか。思ったより長い。

余談:ぽちろうと思っている本

樋口美沙緒を他にも読みたい。