Kindle書評『生きるとは、自分の物語をつくること』から『愛の本能に従え!』まで7冊

溜めこんでしまったら、まとめて出せばよいのです。
というわけで、Kindle本の感想まとめて、いってみよー。

小川洋子、河合隼雄『生きるとは、自分の物語をつくること』


犬子さんが読んでたから興味を持ってぽちってみた。
いやー面白かったです。対談本。

本当はもっと何回も対談する予定で、「次はこの話をしましょう」なんて言ってたんだけど、河合隼雄の逝去によって、それは永遠にかなわなくなってしまった。
残念だね…。

人は、生きていくうえで難しい現実をどうやって受け入れていくかということに直面した時に、それをありのままの形では到底受け入れがたいので、自分の心の形に合うように、その人なりに現実を物語化して記憶にしていくという作業を、必ずやっていると思うんです。

自分が納得する物語を見つけられるかどうかって、けっこう大事。
ただ、いったん自分の物語をつくっちゃうと、今度はそれにとらわれて、「自分はこういう人生だったから今後もこうなるんだ」と信じこんで自分を呪ってしまうケースも多いので、自覚がないと怖いですね。

僕の考えでは、一神教では神の力があまりに強いから、人間は神の創りたもうた物語を生きるんですよ。

このへんの指摘も興味深い。
海外の文学を読んでると、たまに「なんでそこまでこの人は悩み苦しむのか」と理解できない感覚が出てきます。たいていの場合、その背景にはこういうものがある、気がする。絶対的な神様の存在。

現代の人は、小説の中で都合のよすぎることが起こると、納得が行かない。そやけど僕の患者さんが治っていくときには、極端なこと言うと、「外へ出たら一億円落ちていました」というくらいのことがよく起こる。こんなおもろいことないですよ。

都合のいい偶然が起こりそうな時に、そんなこと絶対起こらんと先に否定してる人には起こらない。

守秘義務があるから詳しいことは言えないんだけど、そういうふうに治療の様子をいろいろと語ってくれる河合先生。

それはもう、いろんな重たい話もたくさん聞くんだろうけど、誰かに話すこともできない。
「だから僕はどんどん忘れちゃうんです」てなことを河合先生はおっしゃってます。忘れることも才能のひとつ。
診察の時には、ふっと「そういえばこんなこと言ってたね」と思い出せるらしいんですが。

日本の平安時代の男女の関係は、まず男が顔見て、財産とかを調べて、女性のところに急に忍び込んで来る。その時、女性には、香りとかちょっとした身振りみたいなものとかだけしかわからないんだ、と話すんです。
(中略)
アメリカの女性が「素晴らしい!」って言ったんです。
(中略)
こういうことを、自分たちアメリカ女性は全然経験していない。自分たちは「こんな顔をした人で、こんなお金持ちで、こういう社会的地位があって」ていうことで相手を選ぶから、本質が狂うんだと言うんです。すごく面白いでしょ。

河合先生が、アメリカで『源氏物語』について話をした時のくだり。
合理性よりも感覚で選んだほうが、実は面白かったり、うまくいったりするんです、と。

せやねん。
『あさきゆめみし』は漫画だから、ちゃんと登場人物は描かれてるし、誰がどこにいて何をしてるのかわかるけど、実際にはあれ、真っ暗だもんな…。
あの漫画を読んでる時に、ふっと思ったことあるんですよね。
「これ、実際には何ひとつ見えないし、怖いんじゃないの?」って。

真っ暗な夜、急に誰か男の人が部屋に入ってきて襲われて、ことが終わると相手は和歌を詠んで去っていくっていう…。
よく考えたら蛇の神様が毎晩忍んでくるという昔話も、これと似た状況だな。
(通ってくる男の正体がわからず、意を決して明かりをつけてみたら蛇だったというあれ)

キリスト教は「原罪」が基本であるけれど、日本の宗教は「悲しみ」が根本になるのが多いです。

「慈悲」という言葉にも「悲」が入ってるね。
金光教の話も出てきて面白かったです。

岡田尊司『なぜいつも“似たような人”を好きになるのか』


1000円以上するのでかなりためらったけど、今ならポイント還元対象だし、いいか…と思ってぽちった。

それぞれのパーソナリティに該当するかどうか判断するための簡単なテストと、こういう性格で、こういう家庭環境であることが多いという解説、恋愛や結婚においてはこういう傾向が見られるから、こういうふうにするといいよ、などの分析が載ってます。

もちろん、この本は、あくまでも「自分にはこういう傾向もあるのか」と参考にする程度のものなんですけどね。

テストをやってみた結果、私は回避性、強迫性、境界性、演技性が割と該当してました。
その次に高かったのが自己愛性とアスペルガー。

一方、まったく該当しなかったものもあって、その筆頭が依存性(自己主張せずに尽くすタイプ)…。
わかりやすいくらい、「これはバツ」って、きれいに分かれたわ。

愛着スタイルのテストは、ちょっと面倒そうだったので、まだやってません。

雲田はるこ『昭和元禄落語心中』1巻


デビュー当初、「BL漫画って本当にいろんな人が出てくるな…」と思ったものですが、BL以外の漫画でも面白いものを描いている雲田はるこ。
面白そうなのはわかってたけど、なんとなく「いや、後回しにしよう」と思って、ぽちってなかった。

先日、1巻が無料になってたので、ぽちってみた。
お、面白いやんけ…。

この人たちのねじれた関係性とか、ねじれてて暗いものがあるけどあまり粘着させず流れるように描かれてるところとか、続きが気になる。
え、今、8巻まで出てるの?ぐぬぬぬ。

アニメ化されてますね。Amazonでも配信中です。

プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』


光文社古典新訳文庫のセールが終わる数分前に、思わずぽちってしまった短編集。

SF風の短編集なんだけど、ちょくちょくと世界観や登場人物がつながっている。
特に、一風変わった機械を営業マンとして売り続けるシンプソン氏は、あちこちで登場します。

ただ、この本自体が昔のものなので、機械の描写そのものが古めかしい。カセットテープとか出てきちゃう感じ。
世界も西と東に分断されている。ふ、古い…。

個人的に1番面白かったのは、脚本風に書かれた「創世記 第六日」。
さまざまな生き物を世に送り出してきた、いわば「神様直轄の審議会」みたいな場所が舞台になっています。

「もうそろそろ納期が近づいてます。<ヒト>と称される生き物をつくることについて、最終調整が必要です!」
って感じで、ヒトは魚類にすべきか、いやいやこういう処理をしないと危ないんじゃないか、鳥類にすべきだ、などと議論が紛糾するの。

高橋迪雄『ヒトはおかしな肉食動物 生き物としての人類を考える』


これも興味深い1冊でした。
MEC食の提唱者の本は、けっこう怪しげな記述もあったんだけど、こっちは著者が獣医生理学の元教授ということもあり、「そうだったのか!」「あ、そういうことね!」と納得したり面白がったりしながら読めた。

人間はもともと肉食だったんだけど、どうして肉を主食としない食文化が発達したのか。
人間が年子を産める(卒乳が早い)のは、なぜなのか。
本来であればハーレム制度をとれるはずの人間が、多くの文化圏で一夫一婦制を基本とするのは、どういう生存戦略だったのか。
などなど。

例えば草から必要十分量の必須アミノ酸を摂取しようとすれば、要求量を一番下回っている必須アミノ酸(制限アミノ酸)の要求が満たされるまで摂食が必要になりますから、ほぼ確実に過食する必要が生じることになります。
(中略)
ウマが体中に汗をかきながら草原を走り回って草を食んでいることは、実は「過食による余剰エネルギーを捨てる」という大きな意味を持っていると考えられます。

牛は多くの胃を持っていて、そこでバクテリアが草を分解して栄養をとりだしてくれるから、肉を食べなくても健康に生きていける。
しかし、牛に比べて(草食動物としては)不完全な胃腸の構造を持っている馬は、それを補うために大量の草を食べて、その分、とりすぎたエネルギーを捨てるために走り回らなければならない。

これはハムスターなども同じことで、彼らが回し車に飛び乗って猛スピードで走り続けるのは、そうしないとすぐ肥満になってしまうからなのだそうです。
肉を食べれば、必要なアミノ酸を効率よく摂取できる。
でも、それができないから、アミノ酸がちゃんと摂取できるまで植物を大量に食べる。とりすぎた炭水化物は、走りまくることによって消費している、と。

で、人間はどうしたか、というと。
大きく分けて、2種類の食文化があるのだと著者は言います。

肉、牛乳、卵などの畜産物からリジンの欠乏を補うという食文化です。この食文化が明らかに効率の悪い、したがってコストの高い食物の獲得手段に基づいていることは明らかです。

主にヨーロッパの食文化は、これ。
普段から肉や卵を摂取するので、体に負担がかかりにくそう。
ただ、畜産にはコストがかかります。肉や卵を食べようと思ったら、その食材となる牛や羊やニワトリをまず食べさせないといけない(彼らの食糧も調達せねばならない)からです。

もうひとつは、中国や日本など、多くの地域で見られる食文化。
お米のごはんやうどん、雑穀、餃子、マントウなど、炭水化物を大量に食べます。肉や魚はそんなに多くない。
日本でも、昔はごはんばかり5〜6杯食べていて、内陸部だと魚は普段食べられなかったとかいいますもんね。

この地帯は別の見方をすれば、世界の「貧困地帯」の一つであることも事実です。人々は冬でも薄着をして、朝から晩まで長時間農作業に従事しています。このような食文化、あるいは生活文化は、「リジン欠乏に陥らないためにムギを過食して、余分に摂取した栄養をエネルギーにして捨てる」という枠組みを成り立たせるためには大変合理的であると言うことができます。

まさにハムスターと同じ仕組みだな。
穀物と野菜をつくっておけばいいので、畜産に比べるとコストはかからない(ただし過酷な労働で余剰エネルギーを捨てる必要がある)

それなのに最近、生活習慣病が増えているのは、なぜなのか?
それは各地の伝統的な食文化が中途半端に崩れたり、運動不足になったりしたことだけではなく、人々の平均寿命が伸びたことも大きな原因です。

ヒトの歴史を万年のオーダーで遡れば、ヒトは基本的に「肉食」であったはずです。その長い歴史の中で、なぜガンや心血管系の疾病リスクが問題にならなかったのでしょうか。その答えは簡単です。ガンや心血管系の疾病に罹る前に死んでしまった、つまりヒトの寿命が短かったためです。

「個体に寿命を付して、世代を越えながら適応を高めていく」という生命の基本的なパラダイムが変わらない限り、「生活習慣病は生殖年齢を過ぎた個体に必然的に起きてくる障害である」ということです。

この、身もフタもない指摘!
生活習慣病は必ず起きる。我々にできることは、それを遅らせることだけである、と著者はいいます。

ちなみに、私は父方も母方もガンになって手術を受けた人や、ガンで亡くなった人がいるんですけど、だいたい50代前後、ちょうど更年期が出てくる(生殖年齢の終わり)あたりが多かった気がする。
70歳超えてからガンが見つかった人もいて、その人はガンというよりむしろ老衰で亡くなりました。

すべてのアミノ酸はタンパク質合成の素材として文字通り「必須」だからです。必須アミノ酸の必須は、単に「食物から摂取することが必須」という意味に過ぎません。

それは知らんかったわー!
必須アミノ酸は体内で生成できないアミノ酸であり、非必須アミノ酸は体内で生成できるものだそうです。

堀江貴文『刑務所わず。 塀の中では言えないホントの話』


日替わりセールでぽちった1冊。

娯楽の少ない刑務所では、テレビが大きな娯楽だったとか、お菓子がものすごく楽しみで甘党になってしまったとか。
服役しているのは普通の人が多かったけど、たまに「なんでやねん」と思うような、めちゃくちゃな人もいたとか。

知らない話もいろいろ出てきて、へえーと思いながら読みました。さくさく読める。

個人的に面白かったのは下記のくだり。
なぜか、手書きの手紙をくれる人が多かったけど、手書きの文字は癖があって読みにくいし、PCで書いて印刷した手紙でいいのに…と。
手書きがおっくうになって、手紙を出したくてもなかなか出せないという人もいたそうで。

そんなハードルを上げて手紙を出す回数が減るのであれば、携帯メールや電報みたいな感覚でポンポンポンと何回も送って欲しいというのが受刑者の本音なのだ。みんな手書きのハードルに負けて、一回しか手紙をくれなかったりするけれど、それより5行とかでいいから月に一通ずつ送ってくれた方が嬉しいし、近況の写真を一枚送ってくれる方が心に響く。

そーだね。
でも、出す側としては、端末ではなく紙で連絡をとれって言われると、つい手書きになっちゃうんよね。
あと印刷するのが面倒くさいってのもあるな!
(複合機を処分しちゃったので、去年の就活ではコンビニにUSBメモリを持参して履歴書を印刷してました)

樋口美沙緒『愛の本能に従え!』


虫BLシリーズの最新作がKindle化されたよー。

いつもながら、いい話だ。
この人の書く話は、受けがけなげで、エロ方面に対しては世間知らずで…という設定が多いんだけど、今回もそんな感じ。

でも、ちゃんと毎回のように、どこかで主人公たちが「自分だけ or 相手だけが傷ついて苦しんでるわけじゃない。誰だって傷ついて闘いながらも生きてるんだよ」と気づく展開があるんですよね。

今回の主人公は起源種がナナフシなので、気配を消すのが得意すぎて、周りの人になかなか存在を気づいてもらえないという設定に笑ってしまった。
本人は普通に生活してるのに、「あいつどこいった?」「てか、あんな奴、うちのクラスにいた?」と皆に言われてしまう、ナチュラルボーン忍者っぷり。

同じ著者の『パブリックスクール』の続編も、早くKindle化してほしいよー。

余談:最近ぽちった本

「動物」で検索してて、日高先生の本が出てきたので、ぽちっとな。

こっちもセールとポイント還元対象だったし、面白そうだから試してみようかと。