Kindle書評『あしながおじさん』と『猫とともに去りぬ』

(本の感想の記事、冒頭であれこれ書く必要ないんじゃね?という気がしてきた)

今回は、光文社古典新訳文庫の50%OFF+20%ポイント還元セールという、Wセールでぽちった本の感想です。
いってみよー。

ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』


だいたいのあらすじは知っていたものの、実はまともに読んだことがなかった1冊。
1912年の本です。訳者は土屋京子。

ユーモアと皮肉と観察眼、そして前向きに闘う若き女性像

読んでみたら、これが思った以上に面白い。

『赤毛のアン』の新訳版を読んだ時と同じ気持ちになりました。
ユーモアや皮肉が効いていて、聖書や他の古典文学からの引用が散りばめられていて、大人が読んでもニヤニヤ笑える。

巻末の解説によれば、これはもともと主婦が読む雑誌に掲載されていたそうです。
児童文学じゃなかったのね。

当時は女性に参政権がなかったため、主人公のジュディ(ジェルーシャ)がそれを皮肉る表現も随所に出てくる。
そして、この小説が世に出た約10年後、女性も投票へ行けるようになったのです。

個人的に面白かった部分を、いくつか紹介してみよう。

「(前略)貧者というものは、わたしたちが慈善の心を持ちつづけられるよう、主がこの世につかわされたのです」だって。
まるで貧乏人が家畜みたいな言い方。

大学の礼拝の時間、聖書の一節を読み上げて説教する主教に対して、ジュディが反発を感じる一幕。
そりゃそうよねぇ。
直前で引用されてた聖書の一節は、そういう文脈のものではなかったはずなのに。

おじさまはハゲですか?

自分の名前も身分も外見も一切明かさず、ジュディに金銭的な支援を続けるパトロンのあしながおじさん。
そんな彼に、だいたいの年齢や外見を教えてほしいと願い、質問を投げるジュディ。
でも、ちょっと単刀直入すぎるでしょ!

父方の一族はアダムより古い家系らしいです。ジュリアの家の家系図のてっぺんには、絹みたいにつややかな毛のはえた特別にしっぽの長い上等な種類のサルが座ってるんでしょうね、きっと。

ジュディのルームメイトのジュリアは、セレブな家に生まれたことを誇っています。
自分の家柄のすばらしさを、滔々と解説するほどに。
それをジュディがこう表現していて、ニヤッとしてしまった。

誰だって、危機や悲劇に直面したときには勇気をもって立ち向かうことができるものです。でも、日々のちょっとした災難を笑いとばすことにこそ、強い心が必要なのだと、わたしは思うのです。

わたし、逆境や悲しみや失望が心を強くするという説には同感できません。親切心にあふれているのは、自分自身が幸福な人たちです。

意外とね、最近よくある自己啓発本や、メンタル面をケアする本やブログに書いてあるようなことが、ジュディの言葉にもちょくちょく出てくるんですよ。

「今この瞬間を生きることが重要なんです」
ということも書いてあった。

人が天を見上げて「これはすべて神の思し召しなのだ」と言うのを見ると(そんなこと言ってる場合じゃないのに!)むかむかと腹が立ちます。謙遜と呼ぼうが、諦めと呼ぼうが、そんなものは無力無能以外の何物でもありません。わたしは、もっと戦う宗教を選びます!

読んでみて驚いたんですけど、ジュディ、けっこうアグレッシヴです。

出資者のあしながおじさん(のちに彼女にプロポーズをする)が、彼女にあれこれ与えようとすると、
「私をあまり甘やかしてはいけません」
「恩義を感じているからこそ、私は自分の将来を抵当に入れたくない(借りを増やしたくない)」
と言って、自分で行動を起こすのね。

たとえば、あしながおじさんから「休暇中はヨーロッパ旅行に行かせてあげる」と言われても、「いえ、私は家庭教師の仕事をしてお金を稼ぎます」と。

解説では、こういうストーリーを、
「ヨーロッパ的な価値観からは独立した、自助の精神と自由を重んじるアメリカン・レディとして成長を遂げつつある」
と評しています。

わたしの育ちにいかなる難点があるにせよ、少なくとも見栄や虚飾とは無縁でしたから。ものの重みで押しつぶされそうになるというのがどういうことなのか、やっとわかりました。あの家にあふれる物、物、物といったら、とほうもない重苦しさでした。

セレブなジュリアの家を訪れ、モノの多さに圧倒されたジュディの感想。
そりゃーアダムよりも古い家系ですから、先祖伝来のガラクタも多いことでしょう(嫌味)

ジャンニ・ロダーリ『猫とともに去りぬ』


これは初めて読む短編集。
訳者は関口英子。

まさかのチポリーノ

このジャンニ・ロダーリという作家、実は『チポリーノの冒険』を書いた人です。
子どもの頃、NHKの紙芝居アニメみたいな番組で見たよー!

小説の文庫本を、母が古本市で見つけてくれて、小学生の頃にくり返し読んだわ。
Kindle版は出てない。

アニメのオープニングで流れてたチポリーノの歌、いまだに歌えるで…。

おいらの生まれは玉ねぎ畑
陽気で元気で友達いっぱい
かずこ?さん いちご?さん さくらんぼ坊や
ブドウ親方 にらやまにらきちどん
(1行忘れた)
広い?世界へ旅に出よう
ゆこうよ ゆこうよ くじけずゆこう
チポリーノ チポリーノ 僕も仲間

な、懐かしい…。
と思って検索かけたら、子どもたちが歌っている動画を見つけた。
歌詞を書き起こしてみました。

(1番)
おいらの生まれは玉ねぎ畑
陽気で元気で友達いっぱい
かぶこさん いちごさん さくらんぼ坊や
ブドウ親方 にらやまにらきちどん
玉ねぎ においの嫌いな奴は
レモン大公 トマト騎士
ゆこうよ ゆこうよ くじけずゆこう
チポリーノ チポリーノ 僕も仲間

(2番)
みんなと一緒に暴れて育ち
玉ねぎ学校 卒業生よ
かぶこさん いちごさん さくらんぼ坊や
ブドウ親方 にらやまにらきちどん
高い垣根は おいらにゃ いらぬ
広い世界へ旅に出よう
ゆこうよ ゆこうよ くじけずゆこう
チポリーノ チポリーノ 僕も仲間

2番があったのね…。

しれっとしたお話の群れ

話を『猫とともに去りぬ』に戻そう。

短編集なので、いろんなお話が入っています。

退職後、家族が相手をしてくれなくなったので、広場へ行って猫になっちゃうおじいちゃん。
(なれるもんなら俺もなりたい!という人が大勢いそう)

魚に生まれ変わって、沈みゆく街で生き残ろうとするヴェネツィアの家族。

白雪姫の魔女の鏡をモチーフにした、車好きの社長の話。

シンデレラをモチーフにした、魔法の助けを一切借りずに玉の輿をつかんでしまう話。

バイクと結婚しようとする青年。

恐るべき特殊能力を持って生まれた赤ちゃん。

ピサの斜塔と土産物屋と宇宙人の話。

ギリシャ神話をモチーフにした、運命に抗おうとする人々の話。

基本的に、ぞっとするような後味の悪い話はなくて、くすりと笑える系の話が多いです。
長さも、ストーリーも読みやすいよ。

将来の計画を話しあううちに、また日が暮れた。日というのは、そういうものなのだ。暮れることしか知らない日の気持ちも、わかってあげてほしい。

個人的に1番ウケた文章はこれでした。

私が1番好きなのは、どの話だろうなぁ…。
「猫とともに去りぬ」かな。

余談:近日発売の本

8月に出た漫画が、ようやくKindle化されるので、予約しました。

22日配信だー。