Kindle書評『オードリー夫人の秘密』『真夜中の太陽』『新訳 十二夜』『改訂新版 共同幻想論』

Amazonウィッシュリストを整理したのち、Kindle本の積ん読の消化に励んでおります。

きれいに片づけたい!
読まないなら、読まないとはっきり見切ろう。
というわけで昨日から今日にかけて5〜6冊読んだんやけど、その中から4冊まとめて軽く感想いってみよー。

Mary Elizabeth Braddon(著)、林清俊(翻訳)『オードリー夫人の秘密』


昔の海外の小説を翻訳して、KDPで出版している林清俊さん。
以前、『女王陛下のFBI』という本を出しておられましたね。

その後、わざわざTwitterで「新刊出ましたよ!」とメンションを下さったのですが、ウィッシュリストに入れたままだったのです。
先日サンプルをダウンロードして、そのまま購入して一気に読んだー。

19世紀のセンセーション・ノベル

妻に先立たれ、田舎の立派なお屋敷で、10代の娘と一緒に暮らす50代の紳士オードリー氏。
そこに嫁いできた、若くほがらかな美貌の後妻。
実は、彼女には誰にも言えない秘密があった。
オードリー氏の甥は、ある不可思議な出来事を解明しようとするうちに、この後妻が隠している秘密に気づいてしまい…。

というあらすじ。
サスペンス風の昼ドラを思わせるストーリー展開なんだけど、ゴシック小説風の文体のおかげで、いい感じにいかめしく不穏な雰囲気。

なんとなく『カーミラ』を思い出した。時代も舞台もちょっと似てる。
田舎の立派なお屋敷に、父と娘のふたりだけが暮らしていて…。『オードリー夫人の秘密』は早い段階でオードリー夫人が嫁いでくるけど。

いくつか面白い表現があったので、思わずハイライトつけたよ。

女には分別ってものがある。人生をそのままに受容する女なんて聞いたことがあるか? 女にとって人生は、避けることのできない不都合じゃない。

彼女は憎しみを全額繰り越しては投資し、着実に利子を増やしつづけた。

世界という巨大なくじ引きにおいて、

「憎しみを全額繰り越して利子を増やす」とか、自分でも使いたいわ。

巻末では、あとがきと称して、この小説が出た当時の時代背景や文学史での位置づけ、この小説の構造などを解説して下さっています。

米原万里『真夜中の太陽』


このタイトルを見ると、どうしても谷山浩子の「真夜中の太陽」という歌を思い出してしまう。

米原万里のエッセイです。何冊も読んでるなぁ。

2000年代の日本に物申す

比較的最近のエッセイです。2000年前後のものが多い。
あちこちの雜誌に書いていたエッセイなので、基本的に時事ネタ。
80年代生まれの私にとっては、ちょうど高校から大学にかけての頃合いでした。「あー、そういえばそんなニュースあったなぁ」と思い出しながら読んだ。記憶にない話もあったけど。

米原万里が翻訳者として働き続ける中で見聞きしてきたさまざまなネタを導入やシメに使いつつ、「最近話題になっているこれこれの件については、こういう疑いを持ってるんだけど、どうよ」と話しかけてきている感じ。
うーん、ちょっと賛同しかねるな、と思う意見も多かったものの、さすがベテランなだけあって、実にいろいろなネタが出てきて面白かったです。

面白かった部分をいくつか。

通貨がないところに、通貨危機なんてないわけです

後ろめたいことを抱えている人ほど、まさにその後ろめたい問題について恐ろしく説教臭くなる。

本当の悪人は、もしかして善良なる人相をしているのかもしれない。そもそも良心など持ち合わせていないのだから、良心の呵責に苦しんで顔貌を歪めはしない。

2番目の「後ろめたいことを〜」のくだりは、トルストイの話。
貴族のボンボンだったトルストイは、農奴や小間使いといった身分の低い女を片っ端からレイプして、孕ませては捨てることをくり返していたのだが(おかげで子孫が大勢いるとかいないとか)、自分の著作の中では性的な事柄に対して非常に厳格な意見を書いているそうですよ。
げ、げんなり…。

シェイクスピア『新訳 十二夜』


角川文庫バージョン。
実はシェイクスピアをあまり知らなかったので、数年前にぽちったもの。

だまし、だまされ

河合祥一郎という人の翻訳。
原作の雰囲気に近づけて、なるべく韻を踏むように(あるいはダジャレになるように)訳してあります。読みやすかった。

『お気に召すまま』を思わせる喜劇です。
身の上を隠すために男装している女性を、別の女性が本物の男性だと信じて一目惚れしてしまい、やっかいな三角関係が生まれたり。
皆に嫌われている執事が、にせものの恋文をつかまされて、まんまとだまされたり。

シェイクスピアということもあり、随所にたくさんの脚注が入っています。ページをめくるつもりが、うっかりそこを押して脚注に飛んでしまったりするので要注意。

巻末には、劇中歌の楽譜も収録されてました。

吉本隆明『改訂新版 共同幻想論』


共同幻想とか対幻想とか、これは読まねば!と思ってぽちった1冊。

資料は遠野物語と古事記

…うん、ほっとんど何言ってんのか、わからんかった。読みにくい。

ところどころ、興味深く読める部分もあるんだけど、全体として何が言いたいんだろう?と思ってしまうことが多々。
うーん。これは私に問題があるのか、それとも著者の書き方が論文に不向きなのか。

個人的に面白かった部分は以下。

基督教などの童貞受胎の信仰

処女懐胎のことを「童貞受胎」と言ってのける、このセンス!

『遠野物語』のべつの個処で、嘉永の頃には釜石のような遠野から海岸にでたところには西洋人が住み、混血児も多かったという老人の話を書きとめている

まじすか。

ちなみに、私の母方の曽祖父は非常に色素が薄く、日本人離れした灰色の目と白い肌だったそうなのですが、どこかで混血したという話も聞かないので突然変異だったのだろう、とは母の談。
その後、代を重ねるごとに色素が濃くなったため、私の代では「色白だねー」って言われる程度です。
(目はかなり黒くなった。祖父は茶色、祖父の弟は灰色の目をしていた)

余談:今読んでいる本

読みかけの本をスマホにダウンロードして、せっせと消化してる。
kindle20151021

『賭けの考え方』は進捗28%。
『大菩薩峠 01』(青空文庫)は24%。
『海民と日本社会』は37%。
『相対性理論を楽しむ本』は60%。
『狂気とバブル』は35%。
『口語訳聖書』は42%…。

あんた、どんだけ途中で放り出しとったんや!

積ん読してた本もまだあるのよ。

イモジェン・ローズ『イニシエーション』


日本にKindleストアが上陸した初期の頃、海外で人気のKDP本です!という感じで、日本語訳が出たんですよね。それがこれ。

ただ、当初「文章は横書きなのに、ページめくりは縦書き仕様」という状態だったので、読むのをやめてしまっていたのです。
久々にダウンロードしたところ、表紙は差し替えられてて、縦書きになってました。

悪魔や吸血鬼といった人外の者たちがつどう「超人」の学園に、人間とのハーフの子どもが入学してくる。
主人公はその子の面倒を見なきゃいけないんだけど…。
読んでみたら『トワイライト』みたいな女性向けの恋愛要素ありのファンタジーっぽい。楽しみ。