Kindle書評『「普通がいい」という病』と『フィンランド語は猫の言葉』

Kindle帰宅部のおかげで、ぽちった本を順調に消化中です。
このままでは読むものが足りなくなってしまう…そうだ、いったん読んだ本をもっぺん読み返せばいいじゃないか!

なんでやろ、電車の中では新しい本を読まないといけない気分になっちゃうんですよね。
通勤ルートは行きも帰りも頭がよく動いてるから、新しいものを求めているのかもしれない。どんどん先に進め!みたいな。
反対に、寝る前はお気に入りの漫画を読み返すことが多いしなぁ。

てなわけで読み終わった本の感想いってみよー。

泉谷閑示『「普通がいい」という病』


谷山浩子の公式ファンクラブに入ると、不定期で「ねこ森通信」という会報が送られてきます。
だいたい、次はこんなライブしますよーとか、こないだのライブはこんな感じでしたよーとか、新譜や新刊の情報とか、そういった宣伝がメインです。
もちろん、ファンが読んで楽しめるように、ライブレポや浩子さんとの対談という形で宣伝してる。

それだけでなく、会報には浩子さんのミニコラムや、浩子さんが最近ハマっているものの紹介、浩子さんが最近読んだ本の紹介、浩子さんの歌にちなんだ写真やイラストの応募コーナーなども載ってます。
で、本の紹介コーナー「谷山浩子の幻想じゃない図書館」に、この本が載っていたのでした。
浩子さん絶賛してた。

※コーナーの名前はもちろん「谷山浩子の幻想図書館」という音楽劇シリーズに由来している。

生きがいを他人に求めるな(意訳)

お医者さんの話を聞いているというよりは、古今東西の古典を読んでいて、さまざまな人の物語を聞いてきたおじいさんが、おだやかな顔で語りかけてくるようなイメージです。
…多分、著者はおじいさんではないと思うのですが。あくまでもイメージで!

特に気になったところを、いくつか紹介してみる。

あるべき悩みを悩むようになる。それが、「治る」ということなのです。
(中略)
つまり「安心して悩める」という状態が、人間の健康な状態です。

抑圧されているものをとりはずすと、おさえつけられていた悩みが出てくるんだけど、むしろそれが望ましい状態なのだと。
悩まないようにするのが治療ではなく、そういう悩みや葛藤に持ちこたえられるよう導くのが治療なのだと。
確かに、悩みが尽きることはないですしね。

本当に望んでいるものでなく代わりの何かで、つまり代償行為で満たそうとしますと、それでは「質」的に満足できないので、欲求が「量」的に増大していく性質があります。
(中略)
依存症はすべてこういうことで起こっています。代理満足だから、どんどん刺激が増えていかなければ満足が得られなくなる。

あー、わかる…。
代替品って大げさにいうと「ニセモノ」なので、満ち足りなくて、余計に欲求がエスカレートしちゃうんよね。

そういえば、アルテイシアさんは59番氏(現在の旦那さん)と出会うまで、男を「条件(スペック)」で見ていたそうです。
アルテイシアさんが当時働いていた広告業界はヤリチンだらけ。
合コンに来るのも自然と大手企業の遊び人ばかりで、
「男に期待しても駄目だ、自分と話が合って、自分をちゃんと対等な人間として扱ってくれる男はいないんだ」
「だったらせめて学歴とか年収とか、うわべの条件がよければ」
という心境になっていたらしい…。

男に性格を求めても駄目だから、条件で妥協しようとしてた、という。
まさに「代理満足」を求めていた感じ…。
(結婚後、「自分は男と出会う場をまちがえていた!下町のバーに行けば、気の合う男がこんなにいっぱいおったんや…!」みたいなことを書いておられましたよ…)

この世の人間に、百パーセントの聖人君子はいません。この人間という不完全な存在に対して、百パーセント信じるということでは、問題が起きてきて当然なのです。つまり、必ずや裏切られることになる。
(中略)
百パーセント信じる方が話としては美しいでしょうけれど、それは、相手に神と同じ完璧さを要求する「欲望」を向けることにほかなりません。この美しい偽りの道徳は、その陰に厚かましい「欲望」を秘めているものなのです。

う、うおおお…。
相手に完璧さを求める方が傲慢である…。
相手の欠点を見つけて「裏切られた!もう人間なんて信じられない!」なんて言う方がまちがっている、と。

それに、そういうお前は完璧なのか?って話ですしね。

人間というものは、脚力と同じで、自分一人を支えるくらいの力しか持たされて生まれてきていませんから、他人の分まで背負うことはできない。ですから、夫婦・恋人・友達・親子といった親密な人間関係でも、また治療関係においても、それぞれが自分の足で立っていて、たまたま同じ方向に向かって、並んで歩いているに過ぎないことをわきまえる必要があるのです。

そうなのよね…。
私も鬱を発症した人に巻きこまれて疲弊したり、逆に巻きこもうとしてしまったりした、気がする。
もうあんまり覚えてないけど。

「愛されてこなかったんだから、不足分だけ愛してもらえなければ、自分はこの苦しみから抜け出せない」と思い込んで待ちの姿勢でいる人がありますが、外からもらえなければどうにもならないというのが間違った考えなのです。しかも、このような場合に本人が「愛」として期待している内容とは、(中略)明らかに肥大化した「欲望」と言うべき幻想です。

たまにこういう人がいる、と話に聞いたことがある。

また、日本の精神風土が神経症的であるとも書かれています。
パリで暮らした経験から、そのことに気づいたそうです。

おまけ。Kindleカフェ部。


この翌朝、布団の中でゴロゴロしながら読み終えた。

稲垣美晴『フィンランド語は猫の言葉』


1970年代、まだ冷戦が続いていて、フィンランド語に関する日本語の本が1冊しかなかった時代に、単身でフィンランドの大学へ留学した女性のエッセイです。

小学生の頃に母から単行本を借りて読んだ。面白かった。
そして去年かおととし、懐かしくなって母に話したら、さっそく母が古本屋で文庫本を買ってきてくれて、再び読んだ。
(子どもの頃に読んだ単行本は、家の中で行方不明になっていた)

そしてようやくこのたび文庫版がKindle化されたので、ぽちりましたよー!
いまだ色あせぬ語学留学エッセイ。

異国での日々も面白おかしくネタにして

私は小中学生の頃、母に借りた(もしくは母が図書館から借りてきた)エッセイを読んで、
「ロシア語の格変化はめちゃくちゃ多いのか…なんて恐ろしいんや。ロシア語はなるべく避けて通ろう…」
と思ったくちなのですが、フィンランド語も相当なものです。

格変化が15種類もあって、おまけに数字も人名も格変化する。
日本人がけっこう適当に打っているコロンやセミコロンも、非常に細かい規則がある。
(実は英語も、コロンやセミコロンについては日本語より厳格に用法が決まっているらしい)
それでも3年くらいかかって、著者は優秀な成績をおさめるまでになる。

小学生の頃に読んだ時、1番印象に残ったのが、作文の話だったんですよ。
文法を覚えるため、著者は週に何度かノートに作文を書いて先生へ提出し始めたんだけど、この作文が身近なエピソードを面白おかしく書いたものだったので、先生にもなかなか好評だった。
時には面白すぎて、先生がミスを見落としてしまうこともあったんだとか。

この作文、アホなことをやらかす隣人のエピソードが人気シリーズだったらしいんですけど、日本語に訳して収録してほしかったわー。
私も子どもの頃から文章を書くのが好きだったので、この話が印象に残ったんでしょうね。

ちなみに、著者はその後、この本を知る人なら思わずニヤリとしてしまう「猫の言葉社」という出版社を立ち上げ、フィンランドの絵本などを翻訳して出版しています。

また、当時は北欧といえばフリーセックスの印象が強かったそうなのですが、それについて著者はこう語っている。

フィンランドには性を抑えるものは何もない。これはだめ、あれはだめと上から力を加えないから何もゆがんでいない。ごく自然だ。街の中にも特別刺激的、衝撃的なものはない。日本のほうがよほど毒々しくてドギついくらいだ。

ポルノ通りというのが、ヘルシンキにはない。そういうもので一儲けしようというような商魂逞しさは、フィンランド人にはないようだ。フィンランドでは、性については特に何もないというのが、私の印象といえば印象だ。時には男も女もないような感じさえ受けた。

アホみたいな考えかもしれんけど、そういうのって北欧が寒い国であることと関係あるのかなぁ。
(フランスとかイタリアとかスペインとか、男女がくっきり分かれてる感じの国って南の方だし)

おとなりのスウェーデンに至っては、すでに「男らしさ」「女らしさ」という言葉が(あまりにも使われないので)辞書に載らなくなったそうですね…。
(下記で紹介されてる本も面白そうだよ)

そうそう、最近のフィンランド留学の本では、フィンランドの高校へ(現地の家庭にホームステイして)入学し、見事に卒業試験も合格して現地の大学に進んだ高橋絵里香さんの『青い光が見えたから』がおすすめです(・ω・)
早くKindle化しないかなー。

おまけ。Kindle帰宅部。

余談:最近買った本

50%還元セールのポイントを使い切ったあとも、何冊かぽちってしまいました。


Kindle界隈でもしばしば情報提供者として登場するライターの鷹野凌さん。
著作権についての本が半額になってたので、ぽちっとな。


サイエンス系の本が好きな人にはおなじみ、あの竹内薫の本が、またひとつKindle化されまして。
いかにも私の好きそうな本じゃないですか…!即ぽちった。

あと、zonさんからこんな言葉をいただきましたよ。


しかし、新しい本がそろそろなくなりそうなので、部長交代の日は近いかもしれない。
皆もっと気軽に#Kindle帰宅部でツイートしようぜ!