Kindle書評『時間の分子生物学』と『オトコのカラダはキモチいい』

体内時計と睡眠に関する真面目な新書と、男の(そして女の)快感をめぐる愉快な鼎談イベントの本。

なんでこの2冊を同じ記事にまとめたのか…と言われそうですが、この順番に読んだからなのです。

感想いってみよー。

粂和彦『時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子』


だいぶ前に日経ビジネスオンラインで、この著者へのインタビュー記事が出てて、それがきっかけで気になっていた本(だったと思う)
タイトルはかなり堅苦しいですが、中身はとても読みやすくてギャップがあります。

光とホルモンと体内時計

子どもの頃、「人間の体内時計は25時間だから、1日24時間周期にうまく合わせられないことがあるんだよ」的な話を母から聞きました。
けっこう広く出回っている話だと思います。

ところがこれ、まちがいなんだそうです。当時の実験方法に問題があったんだとか。
25時間周期だという結果が出てしまった当時の実験では、被験者が好きなだけ部屋の光をつけることができたらしく、そのせいで体内時計は遅れてしまう(24時間周期よりも長くなる)傾向にあったと。

なぜなら、午後に光をたくさん浴びると、それだけ体内時計は遅くなってしまうそうです。

明け方から午前中の時間帯に光が当たると時計は進みますが、逆に、夕方から夜の早い時間帯には、光は時計を遅らせます。ということは、朝寝坊してお昼くらいまで暗い部屋で眠り、夜は夜更かしして深夜まで明るい部屋で光を浴びていれば、必ず時計は遅れます。

完全に外部の影響をのぞいた環境下では、年齢によらず概日周期はほぼ二四時間に近い値で、個人差も三〇分以内とされています。

なんかもう、いろいろな謎が解けましたよ…自分の寝不足とか、実家を出てから夜型生活に近づいててしんどいこととか。
ヨーロッパにありがちな間接照明の薄暗さを、真っ白く明るい明かりの下で夜更かししがちな我々は見習うべきかもしれません。

実験で睡眠がとれないようにされてしまった生き物は、ほぼ確実に早死にするそうなんですが、どうやら眠れなくなることで免疫系に障害が出て、それが死につながるようです。

また、最近は「睡眠時間が長すぎても早死にする」という実験結果が話題になっていましたが、あれも正確ではないと。

睡眠時間は年齢とともに短くなっていきます。ですから、長生きをすればするほど短い睡眠時間の人も増える

睡眠時間が一見長い人に、病気が多く短命な人がたくさんいる

実験が行われたアメリカでは、睡眠時無呼吸症候群の患者数が日本よりも多いのだとか。
被験者の中に患者が混じっていると、当然ながら「睡眠時間が長いのに早死にする」確率は高まります。

寝過ぎは悪いという根拠は、今のところないと考えたほうがよさそうです。

結論として、「睡眠時間が長すぎても早死にする」と決めつけるのは、まだ早い。

また、ナルコレプシーの研究から、オレキシンというペプチド・ホルモンに注目が集まっているようです。
このホルモンは食欲増進効果があると同時に、体の覚醒度を上げる(つまり眠れなくなる)
野生の状態だと、飢えている時は多少の寝不足を無視してでも食べ物を探さなければ生き残れないので、こういう効果が出るわけなんですね。

満腹になると眠くなる現象については、「消化のために副交感神経が優位になるから」「消化のために血液が胃腸に集まって頭の血液が手薄になるから」という説明が今まで語られてきたのですが(私もそう思ってたけど)、さにあらず。

オレキシンの研究から、食後、満腹になって血糖値が上がると、オレキシンの分泌が減ることがわかり、これが脳の覚醒度を下げて、眠気につながるらしいことが示されています。

オレキシンのせいだった。

二村ヒトシ、岡田育、金田淳子『オトコのカラダはキモチいい』


こ、このメンツで鼎談?!そりゃもう面白い(けど人前では話せへん)に決まってるやろ…という感じの1冊。
Kindle版が1000円以上するので迷っていたのですが、先日、Kindle本の誤記を報告したら珍しく300円クーポンをもらったので(最近はもらえる頻度が減ってた)、さっそくクーポン適用して買っちゃいました。

男だってもっといろんな可能性があるのに

大変面白かったのですが、いやー…そのー…どこから感想を語ればいいのでしょうか。

ただ、最初から最後まで一貫して語られている「男性の快感は射精だけじゃないんだよ、なのに『男とはこういうものだ』と決めつけて、あるいは自分の意識にフタをして、それ以外に目を向けようとしたがらない男性が非常に多い」というのは、よくわかります。

男性というのは脳で作られた刺激、あるいはペニスへの触覚の刺激には慣れているのに、内臓に触られるという刺激の快感は体験したことがほとんど無い

一般の男性って自分の肉体が性の対象物であることを、なかなか理解できないんですよね。だから「女性には自発的な欲望がない」とか「ゲイは怖い」とか根拠ない迷信を信じてきたし、男性は声を出したりチ×コ以外で感じたりしてはいけないとか、女は支配する対象だとか思っている人もまだ多い。

(本文では伏せ字になっていません)

ここ1〜2年くらい、ずっと不思議だったんですよ。
不思議というか、「あぁ、そうだったのか」としみじみ思うことがあったんですよ。

本当に、世の男性の大半は、チ×コに対して自意識過剰なんだなと。
私にしてみれば「なんでそんなに」と思うくらい、多くの男性はチ×コのことを気にしてるし、よせばいいのに他人と比べて一喜一憂してるし、モテなかった過去の復讐のためにわざわざヤリまくる人が後を絶たないし、チ×コの存在に対して自分のいろんなものを背負わせまくってる。
ただの生殖器なのに、気の毒なくらい。

「それが当たり前だ!」と男性の皆さんに怒られそうですが、持ってない立場からは、本当に自意識過剰に見えるわけなんですよ。
そこまでしちゃうのか、不思議だなぁと。

逆に、多くの男性が、チ×コ以外の自分の体について、驚くほど無節操なのはなんでやねん、とも思います。
服に隠れてるチ×コよりも、もっと他に気にすべき部分があるよね?!

外見に限らず、体調の異変や病気についても、無節操だったり、異変を認めたがらない男性も多いしなぁ…。
(仕事で弱みを見せたら駄目だという意識もあるのかもしれませんが)

とまぁ、そのへんが実に不思議だなという気持ちや、「男の人って本当にチ×コを気にしすぎてて、ふり回されまくってるんだな…そうだったんだな…」という、しみじみとした諦観のようなものを、ここ2年ほどで感じるようになりまして。

この本を読んで笑ったり面白がったりすると同時に、改めてそれを思い出したのです。
男たるもの、チ×コだけじゃないのにね、って。

あと、チ×コといえば体の外側にぶらーんと出ている、あの部分だけだと思いがちなのですが、実際には内側の前立腺なども含めてチ×コなのだそうです。
本文中の人体図を見たら、外側と同じくらいの大きさで内側にも存在してた…内臓だった…!

余談。


ちょうど誤記の部分に「アナル」って書いてあったから…!
(結局、普段通りにカスタマーサービスへ連絡して、受けつけたよー修正までしばらく待ってねーメールが返ってきました)
(いつもBL小説の誤記を連絡してるんだから、セクハラの心配なんて今さらではあるのだが)

余談:最近ぽちった本

次はこの本を読み始めました。
『ガラスの仮面』で姫川亜弓が演じてたお芝居の、原作を翻訳したKDP。

いいね、いいね…百合好きな人にも、ゴシックロマン好きな人にもおすすめするよ…。