Kindle書評『日本の分水嶺』から『俺と上司の恋の話』まで、まとめて25冊

しばらくKindle書評の記事を書かないでいるうちに、なんかいろいろ読んでたので、まとめて感想をメモっておくコーナーです。

ブログに感想を書くよりも、新しい本を読みたい!という衝動の方が勝ってしまって、溜まっちゃってた。

タイトルが同じもの(シリーズもの)は同じ本として、シリーズでも別のタイトルがついているものは別々の本としてカウントしてみたら、25冊になった…。
感想を書く気になれなかったものは省いたのに、まだこんだけあったのか…。

では、感想まとめて、どーんといってみよー。

堀公俊『日本の分水嶺』


北海道から九州まで、順に日本の分水嶺をたどりながら津々浦々のスポットを紹介していくという、なんともマニアックな1冊。

近畿編がものすごく短かったんですけど、近畿は低い山が多いからだそうで…。

分水界が移動するのは人手によるものばかりではなく、自然の営みのなかでもごく普通に行なわれている。

分水嶺ほどうつろいやすいところもなく、時の流れとともに着実に変化させられてきている。

川の流れというものはまさに生き物なので、流れ方や流れている位置は時とともに変化していって、数年後に訪ねてみると様子が一変していたりするそうですよ。
(片方の川が、もう片方の川に吸収されて流れが変わっちゃったりする)

中央分水嶺踏査をした日本山岳会が、砲弾が飛び交う演習の隙間を狙って実地調査をしている。上には上がいるものだ。

場所によっては、ちょうど自衛隊の駐屯地の中に分水嶺があり、調査の時は特別に中へ入れてもらって、自衛隊に不審がられながら調べるんだそうで…。

長野まゆみ『咲くや、この花 左近の桜』


『左近の桜』の続編。

相変わらずこの世ならぬものに襲われ続ける桜蔵。そのへんはワンパターンです。
でもやっぱり日本語の文章がきれいだったから許してしまった。何この敗北感。

カスタマーレビューにも書かれていたように、ラストの1ページでどんでん返しのような展開が待っていました。
というよりも、あれはどう考えても「以下、次号に続く」としか思えなかったので、続編を出していただきたいところです。そんな思わせぶりなところで終わるなんて卑怯やろ…。

森博嗣『つぼねのカトリーヌ』


森博嗣のエッセイ。
以前読んだ森博嗣の新書とどこか似ていて、特別感や目新しさはなかったんですが、安定して読めるのがさすがです。

孫が生まれるとわかって、大喜びする動画がしょっちゅう話題になっているが、それほど楽しいことがなかった人生なのか、と僕には見える。

なかったんだと思いますよ。

本当は、誰もが「大部分は才能や運のせいだ」と認識している。そう思っていても、子供には、そんな身も蓋もないことは言えない。だから、「努力したおかげでああなったんだよ」と語りたくなる。
(中略)
才能のせいにするのは、ある意味では「優しい」言い訳になる。一方、努力のせいにする方が、「残酷」だ。

日本が戦後、奇跡的な復興を遂げて繁栄したのも「偶然」だと書いておられました。
日頃、「偶然のせい」「運がよかったから」と言う人も、日本の近代史に対しては「日本人の勤勉性が…」などと考えがちなんですけど、確かにね、いくら勤勉でも国際情勢がちょっとちがってたら、出る結果はちがうもんね。

素晴らしいものを望んでいるのではなく、駄目な自分のまま、素晴らしい体験だけを望んでいるからだ。これは、詐欺に引っ掛かる人の状況そのものである。稼げる自分ではなく、稼ぐ方法だけを欲しがるから騙される。

自分を変えようとせずに「今のままの自分で仕事も結婚もうまい感じにゲットしたい」と思っても無理です。承認欲求につけこむビジネスと、アホみたいなマルチ商法の両方からカモにされるだけでしょうね。

麻生みこと『そこをなんとか』


新米弁護士漫画。1巻無料だったのでぽちってみた。

犬子さんが猛プッシュしてたんだけど、確かに面白い。
裁判の傍聴に関するネタ、夫婦のあれこれや遺産相続などの身近な裁判沙汰など、いろいろ出てきます。

河惣益巳『サラディナーサ』


少女漫画で全5巻。好きだから一気にぽちっちゃったー。

16世紀スペインで、海を守る強力な存在としてフェリペ2世に雇われている、元海賊の一族フロンテーラ。
このフロンテーラの頭領のひとり娘であり、次期頭領として育てられたサラディナーサのお話。

母親がハプスブルク家の血を引く高貴な身分で、フロンテーラに嫁ぐ前はフェリペ2世の愛人だったため、フェリペ2世はサラディナーサを自分の娘だと思いこんで、しょっちゅう王宮へ呼び戻そうとする。
そんな泥沼の三角関係も展開しつつ、炎のように強く突き進むサラディナーサと、彼女に魅入られた男たちと、めまぐるしく変わるヨーロッパの情勢が、こってり描かれています。

強く、激しく、自分と一族のために戦うサラディナーサが超かっこいい。

この漫画の表紙はなぜか著者とは別の人が描いているので、初めての人は実際の絵柄をサンプルか何かで確かめた方がよさげ。
フェリペ2世とエリザベス1世の顔が、けっこうひどいなとは思うけどね…。

海野つなみ『小煌女』


SF少女漫画で全5巻。
読んだことあるけど、1巻ぽちっちゃった。

『小公女』をベースに、マザーグースなどを織り交ぜながらつづられるお話。
惑星トアンの王女(次期王位継承者)が、地球のセレブの少女たちが通う寄宿制の学校に、留学という形で亡命してくる。
しかし、ほどなくトアンは内乱で失われてしまい…。

学校のメイドとして働く女の子を主人公に、亡命して母星を失った王女と、セレブの学友たち、そして王女を探して地球に潜入する生き残りのトアン人たちの思惑が交差する。
オチはちょっとびっくりしたけど、ほのかな百合っぽさも味わえるストーリーです。

海野つなみ『後宮』


こちらも海野つなみ。古典文学『とはずがたり』をベースにした少女漫画で全5巻。
これも読んだことあるー。1巻ぽちったけど、続きはちょっとずつ買っていこうかしら。

あっさりした絵柄なので読みやすくなってますが、もとが『とはずがたり』なので昼ドラ展開です。
主人公は、他に好きな男がいたのに、自分を娘のようにかわいがってくれた高貴な男(若くして退位した帝)から「実は妻にする予定で育てていたのだ」的なことを言われて無理やり妻にされてしまう。
その後、寵を争って愛憎渦巻く宮中で、嫉妬されて嫌がらせを受けたり、他の男に懸想されて余計な面倒を背負いこんでしまったり、どろどろん。

びっけ『王国の子』


職場の人から「妹に借りたんですけど面白かったんで、おすすめですよ!とりさんは好きだと思います」と言われて、1巻をぽちっとな。

「外見が似ている」という理由から、のちのエリザベス1世の影武者となるべく選ばれた、庶民の少年。
国王や他の王位継承者にも、影武者たちが用意されており、何かあった時には代理となって王族を支える。
だが、実は影武者たちは、本物が亡くなったり、影武者として適任ではなくなった場合、王族の秘密を守るために陰で殺される決まりだった…。

うーん、この先どうなるのかなー。

雨宮もえ『オルガの心臓』



ちょっと変わった少女漫画。

画期的な人工心臓を生み出す若き女性研究者オルガと、その弟ニト。
その腕前ゆえに、かつて大病院で他の研究者に目をつけられ、嫌がらせを受けたオルガは、ニトと一緒に田舎へ隠れ住み、人工心臓の完成を目指しているのだが…。

過去にいろいろあったおかげで、共依存状態にある姉弟。
姉は弟に対して罪の意識を持っているし、姉が傷つくことを恐れる弟は姉を家から出そうとしない。
そのへんのいきさつが2巻で少しずつ語られて、さらに誘拐事件も発生し、話が大きく動いたところで以下次号。

3巻あたりで完結するのかなー?
オルガがあまりにもトラウマにとらわれすぎてる気はするけど、20代前半だったらそんなものか。

水名瀬雅良『幾千の刻を越えて』


BL漫画。
BL小説のイラストではよく見かける人だったんだけど、この人の漫画を読むのは初めてだったかも。
登場人物がほとんど同じ顔をしているので、いろんな表情を描くのは苦手なのかもしれないなー…と思いました。

血のつながらない兄弟BL(弟×兄)かと思いきや、後半からは「実は片方が人外でした」という斜め上の設定が入ってくる。へっ?!
しかし、10代の頃から関係が始まって、40代か50代になった頃まで描かれている兄弟BLというのは非常に珍しい気が。少なくとも私は他に知らない。

夜光花『堕ちる花』『闇の花』『姦淫の花』




BL小説。イラストが水名瀬雅良。
これも兄弟BLで、異母兄弟の兄×弟。
兄が華やかな仕事についていて(モデルとか俳優とか)、弟は清純そうな見た目の学生っていう組み合わせは、吉原理恵子の『二重螺旋』シリーズと似てるね。

故郷のさびれた田舎に、実は血なまぐさい秘密が隠されていて、それが明らかになってくると同時に、主人公の兄弟が命の危機にさらされるという、サスペンス風のBLです。
夜光花は、こういうサスペンスやミステリの要素が入ったBLをたくさん書いている気がする。恋愛だけの話よりも面白いです。
もちろん普通のサスペンスやミステリの小説に比べたら、トリックもわかりやすいし、あっさりしてるんですが。あくまでもBLだからねー。

ずっと前に紙の本を持ってたから、懐かしくなってぽちってしまった。
「うっ、Kindleで850円…」と思って一瞬ためらったのに結局全巻お買い上げ。

夜光花『凍る月』シリーズ



再び夜光花でBL小説。今度は人外。
紙の方ではとっくに完結してるんですが、Kindle版はまだ2巻目までしか出てない。

BLや同人では、しばしば「主人公総受け」という表現が使われます。
主人公がありとあらゆる登場人物から好かれる(そして攻められる)という設定です。逆ハーレムだと思えばだいたいあってる。
このシリーズもご多分にもれず、それを目指しているのですが、著者のあとがきにも書かれている通り、「全員からモテるというよりも、全員から脱力される系の主人公になってしまった」ようです。

主人公が常に!スキだらけ!簡単にだまされる!
(箱入り息子として育てられたから、ということになっている)
おかげでハプニングが起きやすく、ドラマの展開には都合がいいものの、反感を買う性格であることも事実。
昔、紙の本で読んだ時は特に何も思わなかったんですが、Kindle版で読み返したら若干イラッとしました。お前なんべん同じミスをするんじゃあああ\(^o^)/って言いたくなる。

草間さかえ『イロメ』『イロメ(2)ヌレル』



BL漫画。
私が紙で読んだ時は1巻しか出てなかったけど、そのあと2巻も出た模様。

とある高校を舞台に、高校生同士、教師と生徒、教師と卒業生の話が展開するオムニバス。
個人的に「カオス」という短編で描かれる教師と卒業生の話が好きです。
ずーっと、この短編のタイトルを「フラクタル」だと思いこんでいて、Amazonで検索しても出てこーへんなぁ、おかしいなぁ…と思ってました。フラクタルは「カオス」の台詞の中に出てくるだけだった。

草間さかえ『はつこいの死霊』


BL漫画。懐かしくてぽちってしまった。

このタイトルとか、うまいよなぁ。
初めて読んだ時も思ったけど、コマに描かれてる構図が面白いよね。人物よりも背景というか、天井の端っこから見下ろしたようなアングルで描かれてて。
その点については、草間さかえがインタビューで、「人を描くのが苦手だから背景とか全体を描いてるんです」と答えておられたような。

ヤマシタトモコ『恋の心に黒い羽』


BL漫画。これも懐かしくてぽちっとな。

ほとんどがBLの常道からはずれた短編なのですが、やはり面白いです。
親友に恋しているヤクザのおっさんと、その親友の娘がやりとりをするという異色の設定の「悪党の歯」が好き。

香山アオリ『ゆるく、とろけて』


BL漫画。
試しにサンプルを読んでみたら、気に入ったのでぽちっとな。

高校生同士の「遙か彼方、碧く」と、友達に恋している社会人の話「つららとろける」の2本立て。
両方とも、ちゃんとゴムが出てきてたな…BLだとあんまり描かれないことが多いんだけど。
「遙か彼方、碧く」の表紙絵がとてもよかったです。海の感じ。むしろあれに色つけて表紙にしてもよかったくらい。

明治カナ子『地獄行きバス』


BL漫画。

「地獄行きバス(カンちゃん)」と「夜の女王」の2本立て。
前者は、アパレルで働く物欲だらけの男と、母親の方針で何もない家に育った物欲がない男の話です。
この、何もない家に育ったエピソードが、さらっと描かれてるけど強烈。

「人は死んだらあの世に物は持っていけないでしょ どうせ失うものだもの 持たないで暮らすのが人間本来の姿なのよ」

っていうお母さんの台詞が…。

その強烈さが懐かしくなって、ぽちってしまった。

ARUKU『ほんとは好きだ』


BL漫画。
以前、腐男子ちーけんさんが大絶賛しておられたんですけど、ようやくKindle化されました。

寮制の男子校を舞台に、クラスの人気者だった男が、クラスで孤立している男のことを好きになっていく。
しかし、恋が成就したかと思ったその時、彼は我が身かわいさに、自分が誰よりも好きな相手のことを裏切ってしまう。

多分これ、10代で読んだ人が、20代後半になってからもっぺん読み返すと、いっそう味わい深くなるんだろうなぁと思う。
オチには「?!」ってなったけど。

ナナメグリ『俺と上司の恋の話』『俺と部下の恋の先』『俺と彼氏の恋の果て』




BL漫画。
1巻目の『俺と上司の恋の話』は、よくセールしてることが多いので、試しにぽちってみるといいです。

小さな会社に新卒で入社したノンケの男性と、彼の上司で教育係となったゲイの男性の話。
ちゃんと仕事の話が描かれててね、いいなって。
総務という部署の地味さ、異動にまつわる悲喜こもごも、仕事ができない自分の不甲斐なさと、それを自分の好きな人に見られたくないという気持ち。
ゲイであるがゆえに受ける理不尽な差別、部下を守る社長のかっこよさ、初めて彼氏ができてうまくふるまえない不器用さ。
読んでて、あぁいいなって思った。

あと、社長の奥さんのマリリンはいったい何者なのでしょう…。
社長を車で送り迎えする時の激しいコーナリング(割と事故りそう)とか、思いっきり音を立てて車を乗りつける時の様子とか。
姿は1度も出てこないけど、そういう車の走り方で、社員の皆さんから「あれこそマリリンだ」みたいな感じで認識されている。なんだそのキャラ設定は…!
(しかも社長が若い頃からの許嫁だったよね?!)

余談:現在読んでいる本


タイトルの堅苦しさに反して、めっちゃ読みやすい!