谷山浩子と他者貢献:猫森集会2011のパンフは本当にいいこと書いてある

谷山浩子は毎年、9月になると「猫森集会」と称したライブを行います。
最近は新宿のスペース・ゼロが会場になってる。
この期間になると、全国の熱心なファンが東京に集まってきます。北海道や鹿児島からも飛行機で来る。

青山円形劇場(中央のステージを客席が360度囲んでいる)でのライブがルーツだということもあって、猫森集会でもステージの四方を客席が囲んでいます。
浩子さんたちがお客さんにあいさつする時は、まるで滑り終えたフィギュアスケーターの如く、四方に向かってそれぞれあいさつをくり返す。MCでもゆるやかに体をあちこちへ向けてしゃべってます。

8日間の日程をA〜Dまでの4プログラムに分けて、それぞれのプログラムで異なるゲストを招き、浩子さんとAQさん(プロデューサーでありシンセサイザー担当の石井AQ)とゲストがその日限りのバンドを組んだみたいな形になって、ライブをやる。
ゲストはちょっと登場して…とかじゃなくて基本的に出ずっぱりです。10曲かそれ以上は一緒に演奏して合いの手を入れたりコーラス入れたりします。

それが猫森集会。通称・猫森。

猫森集会の物販では、毎年パンフレットが登場します。
毎年欠かさず買ってる人もいれば、買わない人もいる。
私は気が向いた時だけ買う人です。いくらだったかなー。だいたい2000円くらい。

猫森集会2011のパンフレット

引っ越す時に持ち物を減らした関係で、私の手元には2011年のパンフだけが残ってる。

ちょうどこの時は猫森集会10周年で、浩子さんのデビュー40周年のちょうど1年前ということもあり、ロングインタビューの他に、浩子さんとROLLYさんとの対談や、AQさんが斎藤ネコさんとふたりで「浩子さんは弾き語りの人間国宝だよね」などと論じ合う対談が収録されています。

2011年の猫森は、Aプロ2日間に参加しました。
この時は、初日のA1でパンフを買った。

確かA2のライブが始まる前に、みきさんから、
「とりちゃん、猫森パンフはもう読んだ?」
って聞かれたのね。

A1が終わったあと、林檎さんちに泊めてもらって、林檎さんとしゃべったりしてたから、パンフは全然目を通してなかった。京都に帰ってから読もうと思ってたし。

すると、みきさんは続けて、
「今年のパンフのね、冒頭の浩子さんの文章が、すごくよかったの。私はすごくいいと思った。だから読んでみて」
と大変熱く語るのです。

これは読まざるをえない。

人前で歌い続けているうちに

その日のライブが終わったあと、さっそくパンフに目を通した。
みきさんが話していた浩子さんの文章は、パンフの表紙の裏側に載ってました。

かいつまんで説明すると、デビューしてからの39年間をふり返った浩子さんが、人前で歌い続けているうちに生じた心境の変化について書いてあります。

ファンのあいだではよく知られた話ですが、デビュー当初の浩子さんは(もともと作詞作曲だけやりたかったこともあって)、人前で歌ったりしゃべったりするのがとにかく苦手だったそうです。
ライブでも、ずーっとピアノの方を向いたまま歌い続けて、トークも全然しなかったらしい。

そこから何がきっかけで、お客さんを怖がらなくなったのか、「自分がお客さんに何かしないといけないんだ」と思えるようになったのかは、『谷山浩子40周年記念百科全書』のロングインタビューに書いてあったね。

それはさておき。
猫森パンフの文章の最後には、こんな風に書いてあった。

39年の間に、大事なことはみんなコンサートから教わりました。自分自身を思いわずらうのではなく、他の人のために何ができるかを考えれば、自分も幸福になれること。自分と他の人々とは、ひとつの生命体のように感応しあうということ。人の数だけ宇宙があること。
いつも、客席にいる怖がりなのらねこさんのことを考えています。(中略)何よりもまず、そういう「あの頃のわたし」のために、歌います。体の力をぬいて、楽な気持ちできいてくださいね。

最初にこれを読んだ時、私も「おお!」と思った。
みきさんがこれを「すごくいい」って言ったの、よくわかる!って思った。

他者貢献

…そして、それから3年たった去年の夏。
Kindleで『嫌われる勇気』を読んでたんですよ。
最近ものすごく売れた、アドラー心理学の入門書的な、あの本です。

この本の最後の方に、「他者貢献」というキーワードが出てくる。

「ここにいてもいいんだ」と思えるためには、他者を仲間だと見なす必要がある。そして他者のことを仲間だと見なすためには、自己受容と他者信頼の両方が必要になる、と。

人間にとって最大の不幸は、自分を好きになれないことです。この現実に対して、アドラーはきわめてシンプルな回答を用意しました。すなわち、「わたしは共同体にとって有益である」「わたしは誰かの役に立っている」という思いだけが、自らに価値があることを実感させてくれるのだと。

この場合の他者貢献とは、目に見える貢献でなくともかまわないのです。

この部分を読んだ時、私は浩子さんのことを思い出した。

浩子さんが猫森のパンフに書いた、あの文章を思い出した。

自分自身を思いわずらうのではなく、他の人のために何ができるかを考えれば、自分も幸福になれること。

まさにこれって、アドラーの言ってる他者貢献にあてはまるんじゃないの?って。
私はそう理解したんですよ。

言いたいことはひとつだけ

初めて浩子さんのライブに行った時は、もちろんひとりでした。
まだまだメンタル弱くて、傷つきやすい学生の頃だった。

そして、浩子さんのアルバムを買って本格的にハマり始めた中学生の頃は、まさに浩子さんの文章に書いてある「怖がりなのらねこ」みたいな面倒くさくて繊細すぎる子どもでした。

今、猫森2011のパンフを読み返してみて、大変ベタな話やけど、「浩子さんありがとう」って思ってる。

浩子さんは、
「皆さんがいつも聞いて下さっていて、本当に感謝しています。だって聞いてくれる人がいなかったらカラオケ行ってひとりで歌えよって話だもんね」
とライブで言っておられるけれども。

6歳から谷山浩子を聞いてて、現在31歳。
すでにファン歴25年になりました。
そのあいだも、ずっと歌い続けてくれてありがとう。

また今年の猫森2015も、会いに行きますね。