Kindle書評『おやすみなさい、また明日』『「腐女子」の社会史』『魔法使いの嫁』

『ストロベリー・ハニー・ジンジャー』のリリースが終わったあと、約1ヶ月ぶりにKindleストアで新しい本をぽちりました。
(正確に言うと、『とりかえ・ばや』の5巻を12月23日にぽちってたけど、シリーズものの最新巻だったから、新しい本をぽちったという感覚が薄い)

年末からこっち、少しはKindle沼から脱出できた、気がする…。
(とか油断してたらまたドッボーンといきそうですよ、この人)

アウトプットのあとはインプットするよーというわけで、何冊か読んだでござる。
娯楽に走った結果、かなり偏ったジャンルです。
感想いってみよー。

凪良ゆう『おやすみなさい、また明日』


めっちゃ評価の高いレビューがずらずら並んでいたBL小説。
これは静かにしんみり読めるだろうなと思って、ぽちってみた。

悲しいけど、やさしい

初めて読む作家さんでした。ちょっと受動態が多いなーと思った他は、すらすらと読みやすい文章だった。
読みやすいからこそ、丁寧に紡がれるストーリーが、しんしんと積もっていく。

あらすじは、商品紹介に書いてあるところから、ある程度予想できた。
「あ、ここに伏線が」と思っていたら、果たしてその通りに展開していく。

でも、どうしようもない境遇に対する苦悩や、それを支えようとする周囲の気持ちがひとつひとつこまやかに描かれていて、うまいなぁと思ったのです。
リアルだった。

会社で働く人間にとって、その病状がどんな風に支障をきたすのか。
自分で自分を養っていかないといけないのに、それができないかもしれないという恐怖。
大事な相手を傷つけるかもしれない恐怖。
覚えていることと、覚えていないことが混然と溶け合って、どちらでもよくなってしまうラストの短編。

リアルで、やるせない話も、悲しい話もたくさん出てくるわけなんだけど、やさしい。

お金持ちが見初めた相手を監禁してエロいことやり放題…みたいな話とちがって、こういう話を書くのはすごく難しいと思うの。
(そういう監禁ファンタジーをけなしてるわけじゃなくて)

最新刊の『美しい彼』もかなり評判よさそうなんですが、まだKindle化されてなかった…。

大坂理恵『「腐女子」の社会史: 女性による女性のための男性同性愛小説の社会史』


大学で書いた卒論をツイートしたところ、大変な話題になり、電子化を決意されたようです。

よそでは無料だったんだけど、Amazonギフト券がまだ1万以上も残ってたし、Kindleの方が使い慣れてるから、ぽちっとな。

続きをお待ちしております

そういえば、卒論の文字数制限ってけっこう短かったよなぁ、というのが、読み終わった直後の感想でした。
もっとこれ続き読みたい!って思ったんだけど、卒論だということを考えると「そりゃそうだな」と。

(うちの大学では専攻ごとに多少見解が異なってて、規定の文字数は厳守!のところもあれば、多少はみ出してもOKなところもあった。私のゼミでは規定の10倍を超える23万字くらいの卒論を出して、口頭試問でめっちゃくちゃ怒られた人がいたんだけど、無事に卒業して海外の証券会社で働いている)

JUNEとBLの話かなーと思いきや、最初はなんと戦前の少女小説(吉屋信子とか)と、それをめぐる少女文化や読者の交流の話が出てきます。
(戦後の腐女子のあれやこれやとの比較対象として)

これ、けっこう面白かった。単に私が知らなかったので。
全然知らなかったわけじゃないけど、ほんの少しなぞる程度にしか知らなかったんですよ。そういう雑誌の友の会があちこちで開かれて、読者の女の子同士が出会って文通したり、同人誌もつくったりしていたそうです。
うーん…昔から変わらんな…10代の女の子って連絡とりあうのめっちゃ好きですよね…。

その後、宝塚や、女性の社会的な立場の変化や、コミケの始まりなど、だんだん知ってる世界の話になっていきます。

自分の個人的な話

私(1983年生まれ)が中学生の頃は、まだBLという言葉はなかったと思う。
そういうのは「JUNE」「耽美」「やおい」って呼ばれてた。二次創作じゃないものも、ひっくるめて「やおい」と呼んでた気がする。

私も私の友達も腐女子ではなかったけれども、「世の中にはそういうものがあるらしい」というのは、どこかで聞きつけて知っていた。
んで、なんとなく「美少年や美青年同士がエロいことしてて、それを女子が読む漫画ですよね」という共通の認識があった。小説よりも漫画の方が印象強かったのかな。

あの頃は『幽遊白書』が流行っていたので、世の中には幽白のやおいがあるらしい、というのも知っていた。

「なんか、桑原を魔王が襲うっていう同人誌があるらしいで!」
「えっ、なんで?!」
「いや、魔王やから美的感覚が人間とちがってて、魔法には桑原が美人に見えるらしいねん。そんで桑原が魔王にさらわれて、幽助たちが助けにいくんやけど、天井裏かどっかでその行為を目撃してしまって、『えっ、どうしよう…』みたいになるんやって!」
「まじでー?!あははは!」

という会話を、中学の帰り道にした記憶があります。
ほとんどの家庭にPCもネットも存在しなくて、我が家のネットも電話回線だった時代に、あの友達はいったいどこでその情報を手に入れたのだろう…。

ただ、今にして思えばあれはJUNEじゃなくてBLだったよなーと思う作品もありました。
転校生の子(全然オタクっぽくなかった)が、なぜか「ショタのアンソロジー持ってるよ」と言って貸してくれたんですよ…。
生まれて初めて読んだBLだったし、親に隠れて罪悪感を持ちながら読んだので、今でもすごく覚えてる…『テディボーイ2』っていうアンソロだった…。

あとは、初期のTV版のエヴァが爆発的に流行っていたので、別冊JUNEのエヴァンゲリオン特集みたいなムックがあって、思いっきりカヲルくんとシンジくんの何かをにおわせる漫画がいっぱい載ってたんですよ。
(今は榎本ナリコ名義で活躍している野火ノビタが描いた短編も入ってた。「七年目の蝉」だったかな)
あれが多分、初めて買ったそっち系の本だった…。あれもすっごく恥ずかしくて悩んで買った…。

などと、自分史を思わずふり返りたくなる卒論でした。

ヤマザキコレ『魔法使いの嫁』1〜2巻



異類婚姻譚が読みたくて読みたくて、ぽちった漫画。
紙の方では、もうすぐ3巻が出る模様です。

骨頭の魔法使いと、赤毛の女の子

以前から、この漫画の存在は知ってたんですよ。
面白そうだなぁと思ってた。

ただ、ネットで「いかにもオタクの女が好きそうな話w」って感じの嫌な感想を見かけてしまって。
ちょっとためらっていたのです。

でもファンタジーをいっぱい調べて描いてるやん!今後に期待やで!っていう感想もあったので、思い切ってぽちってみたら、やっぱり面白かったです。
「オタクの女が好きそうな話」って言われちゃうのも、わからんではなかったけど。

王道といえば王道な展開です。
天涯孤独で親戚のあいだをたらい回しにされていた日本人の女の子が、実は魔法使いや妖精の世界で相当な価値のある能力(というか体質)を持っており、そっちの筋のオークションで落札されて、イングランドの人外の魔法使いと生活をともにする。
この人外の魔法使いが、そっちの世界では名の知れた実力者であったがために、高名な魔法使いと付加価値の高い女の子という組み合わせは注目を集め、いろんなやっかいごとが飛びこんでくる…。

服とか、古めかしい建物とか、いっぱい描きこまれてて、ファンタジーの雰囲気を盛り上げるのに一役買ってます。
人外の魔法使いが、龍や狼のようなデザインじゃなくて、動物の骨の頭をしているというのも面白いね。骨って…新しいな…。

続きが出たら、またぽちろうっと。

あと、Kindle版にはカバー下の漫画も収録されてて、さらにカバー折り返しの著者コメントの部分まで収録されてた!これはめっちゃうれしい!