Kindle書評『demi - another -』と『まざあ・ぐうす』

100本目のKindle書評です。ひゃっほーい。
1本の記事に2冊(あるいはそれ以上)取り上げてるから、200冊以上の感想を書いた計算になるね。
ぽちってるKindle本が600冊以上あることを考えると、多いんだか少ないんだか…(シリーズものもあるけど)

私がKindle本の感想を書き始めて数ヶ月くらいのあいだに、Kindle本を読んで紹介するブログや、Kindle本の情報まとめサイトみたいなものがいくつも出てきたけど、2年たった今、更新の止まっているブログも多い。

かくれんぼ戦略は、他にも谷山浩子や捨てたい病といったコンテンツがあるおかげで、こうして運営が続いてます。
飽きたり、面倒に巻きこまれて嫌になったりしたら、すぐ閉鎖しようと思ってるんやけど、そう思ってると案外飽きないね。
いつでも会社を辞めようと思ってる方が、長続きするのと一緒で。

というわけで記念すべき100本目の記事、いってみよー。

犬子蓮木『demi - another -』


既刊の『demi』2冊の外伝的なお話です。

表紙は私が担当しました!
犬子さんのファンの方から、ちらほら「かっこいい表紙」とお褒めの言葉をいただいて、うれしいです。

好きだったものが、もう好きでも嫌いでもない

事故で感情を失った女性が、このお話の主人公。

感情がないので、好き嫌いもない。
栄養をとるためにものを食べ、過去の自分が好きだったという理由で音楽を聴き続け、特殊な存在となってしまった自分を観察する上司とともに働く。
たまに、とある宗教の要職についている女性が、感情を失った彼女に興味を持って、彼女と会話するためにやって来る。

今回の話を書くにあたって、犬子さんは「話を面白くしない」ということを意識しておられたようです。

さらに今回はいくつか次のようなことも意識して書きました。「おもしろくしない。物語にしない。でも、短く切ってテンションをあげない」というような感じです。

今回はそういった盛り上げの描写を抑えるようにしたという感じです。

…いや、それなりに盛り上がる場面は、あったと思うよ。
特にほら、あの人がああなって、ああいう儀式に至った場面とか。
あとは、前の『demi』の登場人物が出てくる場面とか。

この話で描かれているみたいに、感情がなくなったら、食事もどうでもよくなっちゃうのかなぁ。食欲って感情と関係あるのかなぁ。
体を維持するための本能的な欲求は、感情を失ってしまったら感知できなくなるのだろうか。それとも関係ないのかな。
感情を失ったことがないので、わかりません。

この主人公が、この先どんな風に老いていくのか、ちょっと見てみたいです。

北原白秋『まざあ・ぐうす』


マザー・グースを北原白秋が翻訳した本の、青空文庫版。
角川文庫からも出ていますが、Kindle版では挿絵がカットされているらしいので、青空文庫にしました。
せっかくの挿絵がないなんて、わざわざ出版社のバージョンを買う意味がないやんか…。

いろんな意味で懐かしい

なぜか有名な「ハンプティ・ダンプティ」が入っていなかったりするんですけど、宮沢賢治の童話を読んだ時のような、「そうそう、昔の小説や童話ってこういう書き方やんなー」っていう独特の味わいがありました。

北原白秋は、意味合いの正確さよりも、歌としてリズムや語呂がいいかどうか、そちらの方に気をかけて翻訳したのだそうです。
(冒頭には子ども向けのまえがきがあって、最後には大人向けの説明が載っており、これは誤訳じゃなくて考えがあってのものなのだと語っている)

語呂のよさとか、日本各地で伝えられてきた昔ながらの童謡のような雰囲気を出すために、方言っぽい言い回しもけっこう遣われてます。
詩によっては、何言ってるのかわからないくらい、方言混じりの翻訳もあった。

ユダヤ人を悪者にしている内容が随所に見られて、あぁ、昔の作品ってそういうのが残ってるよなーと思ったりして。

ちなみに私も、小学生の一時期、マザーグースにハマってたことがありました。
図書館で借りたり、書店で買ったり、友達から絵本を借りたりして、いろんなバージョンを読んだ。
父が手持ちの古いレコードの中から、マザーグースの日本語訳を歌ったものを探しだしてきて、聞かせてくれたこともある。
(私が幼い頃は、古いレコードプレーヤーもまだ壊れてなかった。父に頼まれたレコードをプレーヤーにセットして、ボタンを押して針をそーっと落としたりしたこともある)

『まざあ・ぐうす』でも、懐かしいものが、いくつかありましたよ。
残念ながら『まざあ・ぐうす』には原題の一覧表が載っていないので、ネット検索しないとわかんないけど。

一つの石に小鳥が二羽よ。
  ファ、ラ、ラ、ラ、ラルド。

北原白秋が「一つの石に」と訳したタイトルの詩。
原題は「There were two birds」で、「小鳥と石」という訳もあるようです。
この「ファ、ラ、ラ、ラ、ラルド」の部分だけを覚えていて、どこで読んだのかなーって、ずっと思ってたんですよ。マザーグースの引き算の歌だったのね。

「ししと一角獣」と訳したタイトルの詩は、原題が「The lion and the unicorn」。
小学6年の頃にめちゃくちゃハマっていた『ゆびぬき小路の秘密』という童話で、この歌が出てきました。うう、懐かしい…。
今は文庫化してるんですね。

「ででむし、でむし」と訳したタイトルの詩は、原題不明。
ただ、その訳を見た瞬間、狂言の「でんでん虫」を思い出しました。
千本ゑんま堂大念佛狂言の演目。あれを見ると、演目の中に出てくる歌がぐるぐる脳裏に回るんですよ。
耳で聞いただけなので、合ってるかどうかわかんないけど、こんな歌詞。

でーんでーん むーしーむーしー ででーむーしー でーむーしー
あーめもかーぜも ふーかんのーにー でなかーまー ぶーちわろー

この狂言は、京都の千本鞍馬口のあたりにある、閻魔大王をまつったお寺・引接寺(いんじょうじ)で行われていて、GWの連休になると無料で見ることができます。何度も見たよ。
昔の京都弁をしゃべってる感じの台詞だった。「べっぴんやがなー!」「とっととお行きゃれ」とか。
けっこう喜劇が多い。時事ネタを取り入れたアドリブを使う演目もあったんじゃないかなー。

余談:最近ぽちった本

いっぱいぽちってるんだ、これが。

なかなかセールをしない白泉社のKindle版が、20日までの期間限定で「1〜3巻108円」なセールを開催中らしい。

調子こいて私もぽちってしまいましたよ…。


清水玲子『輝夜姫』は、3巻までだと、ちょうど主人公たちの正体が明らかにされ始めたところまで。
先は長いぜ…!


大島弓子『綿の国星』は、全4巻中、3巻までが108円に。
実家に全巻あるんだけど、ぽちっちゃった。


河惣益巳『火輪』は、中華風ファンタジー。
試しに1巻をぽちってみました。

私は河惣益巳といえば、大航海時代のスペインとイングランドを舞台に、女でありながら海賊フロンテーラの惣領となるヒロインを描いた『サラディナーサ』がものっすごく好きなんですけど、あれ、まだKindle化してないんですよねー。

なんでなんやろう…すっごく好きなのに…あんなにかっこいいヒロインは見たことがないのに…。
女を捨てないけど、女の枠にとらわれない。美しく、烈しく、海賊を統率するリーダーとしての才能にあふれた強いヒロインなんですよ。フェリペ2世も、エリザベス1世も、彼女をつなぎとめておくことはできない。

ちなみに、なぜか『サラディナーサ』の文庫版の表紙は、河惣益巳ではなく別のイラストレーターが描いている。『ガラスの仮面』の文庫版もそうだね。

他にも何冊か小説をぽちったので、読書が充実してるよ…!