ハーレクインとBLとTL、似て非なる女性向け恋愛コンテンツ

本日は、ほとんどの人にとって、どうでもいい内容です。
ハーレクインとBLとTLを読み比べていて思ったことを、つらつらとまとめてみた記事です。なんだよそれ!

いやー、ツッコミどころがいろいろあって面白いんですよ。女性のドリーム満載の恋愛小説って。
「こういう設定は萌えるわー」と思いながら読む一方で、「今のはおかしいやろ!」とツッコミを入れずにはいられない。だって私はツッコミ属性の関西人だから。

かと思えば、「これはお国柄のちがいか…」と真面目に考えてしまうこともあったりして。
本当に面白いんですよ。何冊も読んでると、明らかに見えてくる何かがあったりするわけです。

というわけで、自分の気になるままに書きつづってみたお題、いってみよー。

ハーレクインってこんな感じ

ロマンス小説の代表格であり、世界中で売れているのが、カナダのハーレクイン・エンタープライズ社によって発行されているハーレクイン小説です。

「恋愛経験の少ない一途なヒロインが、かっこよくてイケメンでおしゃれでお金持ちのヒーローと恋に落ちて、ヒーローを狙う別の女やら、ヒーローとの気持ちのすれちがいやらですったもんだしたあげく、私たち相思相愛だったわ!→電撃結婚→子どもにも恵まれて幸せな家庭を築きました」
というパターンだと思っておけば、だいたいまちがいない。

基本的に現代を舞台にした話ですが、他にもお姫様や騎士や貴族が出てくる「ヒストリカル」、中東の石油王もしくはその血族に見初められる「シークもの」、ミステリーを絡めたシリーズなど、いろんなジャンルがある。
私の母は、「現代が舞台だと『そんなうまい話あるかい』って思っちゃうから、ヒストリカルの方が好き」などと言ってました。

紙質の悪い、いかにもペーパーバックって感じの新書版の他に、文庫版もあります。
日本の漫画家によるコミカライズもされていて、漫画の方はKindle版でしょっちゅうセールしてますね。

このハーレクイン、いかにも少女漫画さながらの、女の子が夢見る王道なストーリー展開ばっかりなんですけど、後述する日本のTL(ティーンズラブ)・BL(ボーイズラブ)に比べると、かなり毛色がちがいます。

  • 北米の作家が書いているためか、主人公であるヒロインは、ほぼ確実に働いている。自分の生活費は自分で稼ぐもんだ、という感じ。
  • 金持ちのヒーローに甘い言葉をささやかれても、そこまで流されない。ある程度は自分で覚悟を決めて行動している。
  • 離婚歴のあるヒロインや、シングルマザーのヒロインも珍しくない。小さな子どもにドレスを汚されたり、反抗期の娘と対立したりするエピソードも盛りこまれている。
  • 自分の権利をはっきり主張する。
  • エロシーンは非常に少ない。エロシーンを一切書かずに結婚まで持っていく作品も珍しくない。
  • 何がどの作品だったか全然わからない、無個性のタイトルが多い(どれもこれも似通っている)
  • 中東を舞台にしている場合、イスラームに対する偏見むきだしであることも多い。中東の「遅れた」意識を、ヒロインが西洋式に「啓蒙」しようとすることも。

誰だったか忘れたのですが、BLを書いていた作家が、ハーレクインに挑戦したことがありまして。
「女性が強くて、男性と対等な存在なんです。だから、今までBLしか書いたことがなかったけど、男女の恋愛も書いてみようと思った」
とブログに書いておられた気がするんですよ。
(BL漫画家の人が、ハーレクインのコミカライズに挑戦したのかな?なんか詳細は忘れちゃったけど)

すげーわかる、って思った。
同時に、ハーレクインでもなければ、日本では女性の強い恋愛コンテンツが売れないのだろうか、とも思った。

TL(ティーンズラブ)・BL(ボーイズラブ)だとこんな感じ

TL(ティーンズラブ)は、女の子が主人公の恋愛小説です。女性向けのラノベって感じ?
ストーリーは王子様に見初められる系ですが、女性向けの官能小説としても読める体裁になっている。つまりエロ描写がある。

BL(ボーイズラブ)は、男と男の恋愛を描いたジャンルです。今さら言うまでもない。
作家も読者も女性が多いのですが、腐男子と呼ばれる男性読者や、男性の作家、ゲイの読者もいます。

ハーレクインと比べてみたら、日本のTLやBLは、たくさんのちがいがありましたよ。

主人公のスペック

TLやBLでは、
「私まだ学生でーす」
「恋愛も結婚もしたことがない」
「ヒーローの強引な愛に流されてそのまま丸めこまれちゃいました」
というヒロイン(あるいは受け)が非常に多い。

特にTLは、ヒロインが全体的に子どもっぽくて、世間知らずな感じ。現代を舞台にした話も非常に少なくて、基本的にファンタジーが多いよなぁ。ヒロインはお姫様だったり、貴族の娘だったりする。

BLだと、主人公がサラリーマンで、仕事の描写もちゃんとされてたりするんですけど。
許可証をくださいシリーズに至っては、BL小説なのにタイトルが『君にもわかるISO』ですからね…。工場での仕事の様子とか、人材育成とかが書かれていて、かなり面白いです。BL要素とのギャップがすさまじい。

エロシーン

めっちゃ多い。
レーベルによっては、何回エロシーンを入れるか指定されているところもあるらしい。ばっちり見せ場として用意されてるわけですね。
ハーレクインに限らず、日本ではエロに対する規制がゆるいのだと思う。

回数だけでなく、「どういう体位でするか」「どういうプレイをするか」というのも手を替え品を替えて描写されていたりします。

ハーレクインのエロシーンが、
「胸の先端を撫でられて感じてしまった」
「彼が入ってきて絶頂に」
くらいのあっさりした描写で終わってしまうのに比べると、非常に熱心に描写されていると思う。

ただ、あくまでも恋愛がメインの小説なので、エロシーンでも非常によくしゃべる。
どんなに好きだったのか、どんなに愛しているのか、どんなに執着しているのかを、やたらとしゃべりながらエロいことをしています。好きなんです!という心情を吐露しまくる。
実際にこんなことされたら絶対うざいなー…。

タイトル

ハーレクインに比べると、凝ってるタイトルや、変なタイトルの作品が多い。
特にBLは、タイトル見ただけで笑っちゃったりする。

でも、TLはどっちかというとハーレクインに近いタイトルのつけ方をしているかも。

アラブもの

私はTLのアラブものを読んだことがないので、ここではハーレクインとBLのみの比較を。

現代において、白馬の王子様をこれ以上ないほどハイスペックにしようと思ったら…ひとつの回答が「石油王」です。
お姫様ひとりのためにお城と護衛と侍女をあつらえるとか、自家用ジェットとか超余裕。潤沢な資産と絶対的な権力に、「小国の次期国王」という血統書がつけば完璧です。
あと、中東を舞台にすると、異国情緒も出しやすい模様。

しかし、イスラームの女性観や、中東諸国における女性の立ち位置は、ハーレクインを産出している北米から見ると人権侵害としか映らない。
そのため、ハーレクインの「シークもの」では、ヒロインに惚れこんだヒーロー(石油王)が彼女への愛ゆえに大幅な譲歩を見せたり、彼女がヒーローに女性の地位向上を講義しようとする展開もあったりする。読んでてさすがに鼻白んだ。

一方、BLの「アラブもの」では、イスラームへの偏見というよりも、単なる無知だったり、ステレオタイプが目立つ。
ほぼ確実に、受けが石油王(もしくはその息子)に誘拐されて、砂漠の真ん中にある豪華なハーレムに幽閉される。びっくりするほど誘拐→幽閉のパターンが多い。

『皇子の虜囚』というBL小説に至っては、

  • 中東のイスラーム国家なのに、土着の太陽神信仰が残っていて、王家の儀式にも神官が出てくる。お酒も飲む
  • 侍女たちが、王子のことを神にも等しい存在だと発言している
  • 王子の腹心の部下が、『王子の忠実な犬』と呼ばれて、自分でもそう言っちゃってる
  • アザーン(礼拝を呼びかける声)が聞こえてきてるのに、現地の人が礼拝しない

というツッコミどころ満載の展開でした。

えーと…たとえばトルコだと、テングリ(天。日本でいうところの「お天道様」的な感覚)の意識が残ってたりするらしいんだけど、太陽神はまずいんじゃないかな…明らかにそれはイスラームの教えと激しく対立するよね…。
もちろん、ただの人間にすぎない王子のことを神様扱いするのも、とんでもない話。おいおいおいおいどう考えてもそれは日本の天皇に対する感覚じゃないのか。
あと、イスラーム国家では一般的に犬は忌み嫌われていて、番犬であっても家畜扱いで家の中に入れてもらえないそうなので、王子の部下を「犬」と呼んだり自称したりすることはないんじゃないかなー…て思うんだけども。
(お酒も禁じられているので、堂々と飲んだり、王家の儀式に出てきたりするのはちょっと…)

BLのアラブものは、ハーレクインのシークものとちがって、アザーンやクーフィーヤなど細かい描写がなされている印象があるんだけど、なまじ描写しちゃってるせいで、「ここはありえへんやろ」「それは変やろ」という部分が目についちゃう気がする。

余談。
「忠実な犬」という表現はおかしいんじゃないかとツイートしたところ、馬に詳しい知人からメンションもらいました。

作品の長さ

ハーレクイン小説は、90ヶ国語以上に翻訳されて、多くの国で出版されています。
つまり、非常に大きな市場を持っているのです。

他人の目を気にせず買って読めるというわけで、電子書籍もよく売れているらしい。
日本にKindleストアが上陸した時も、ハーレクインはかなり対応が早かった印象があります。初期のKindleストアで売ってる本を探したら、ハーレクインばっかり出てきた記憶があるもんなー。
売れているから、動きが早いし、一定のクオリティを保ちながらたくさんの作品を出してくる。

しかし、TLとBLは、ほぼ日本国内の市場です。
(BLは一部が翻訳されて海外でも出版されてるけど)
そして、日本国内でも、一般文芸やジャンプ漫画に比べたら、市場が小さい。売れる量が限られているのです。

そのためか、本の値段が高い割に、中身は薄いことも珍しくない。
BL小説だと、一段組で文字サイズも大きめでページ数もそこまで多くないのに900円とか。
一般文芸に比べたら、割高にしないと採算がとれないのかも…ってずっと思ってる。

逆に、ハーレクインは新書だと二段組で、文字サイズもそんなに大きくない。びっしり中が詰まってる感じ。
ハーレクインの方が、長く読んでいられるのです。

BLを読んでいると、たまに「これは分厚くなった薄い本を読んでいるようなものだなぁ」と思います。
※薄い本…同人誌のこと。50ページ未満で500円とかよくある話。

作品の傾向

エロに限らず、ハーレクインの方が規制は厳しい気がします。

TLやBLだと、「背徳」「インモラル」などと呼ばれるような近親間のカップル設定や、監禁・暴力・病み系・ダーク系と呼ばれるストーリー展開もよくある。
そういうストーリーを主力にしたレーベルすらある。
んで、読者の中にも「私は普通のラブラブでは満足できない、ダーク系がいい」「病みBLが好きだ」「背徳が大好物だ」「バッドエンド至上主義」という需要があって、そういう読者から絶大な支持をとりつける作家がいる。
(たいていの場合、ダーク系が好きな作家は、そういう設定の話ばかり書くため)

しかし、ハーレクインは圧倒的にハッピーエンドが多い。
最後の1ページで強引にまるくおさめて「おいおい今のは無理があるやろ!」と叫びたくなる作品すらある。

暴力や監禁もほとんど見ないなー。
アン・ライスのスリーピング・ビューティが登場した時、アメリカで大変な反響を呼んだ理由は、わからんでもない。おとぎ話の世界を舞台に、思いっきりSMやってますからね…今までにないタイプだったんだろうな。

「背徳」「インモラル」も非常に少ない。
私が今までに見たのは、「血の繋がらない兄と妹」という設定の作品が2冊だけだったんですけど、両方とも一切エロシーンはなかった。キスだけ。それだけでプロポーズまでこぎつけている。
多分、ものすごいタブーなんだろうな。だからエロシーンも書かないし、血は繋がってないとはっきり明言してるし、作品数も少ないんだろうな。

最後に

読み返してみて、「私は何を熱心に書いているのか…」と一瞬思ったのですが、以前から気になっていたことをまとめて書き出すことができたので満足です。

余談。
最近読んだのは、BLでもTLでもダーク系の作風で活躍している丸木文華のTL小説『鬼の戀』でした。

終戦後の閉鎖的な村を舞台に、極秘の儀式として濃厚なエロシーンが描写されてたり、主人公が相手の男のことを「兄さま」と呼びながらエロいことしてたり、怒涛の殺戮が始まって血みどろになったり、ハーレクインでは絶対に企画が通らないであろうダーク系ストーリーでした。お腹いっぱい。

2014年10月25日20:45追記
昔ツイートした内容なんだけど、ハーレクインの特徴のひとつ。
英語圏らしいユーモアで、たまにものすごく面白い台詞が出てきたりする。