Kindle書評『軽い心』と『六花抄』

今回は、どちらもKDPの小説で、どちらも先日のKindle廃課金者オフ会と関係があって、どちらも無料キャンペーンの時にダウンロードした本です。

なんか、これだけのクオリティの本を無料で読んじゃってごめんなさいよう…と思いながら読むわけなんですが、やっぱり全然知らない人の本、それも自分の好みかどうかさっぱりわからない本を、いきなり買うのは抵抗があるよねぇ。
特に表紙が地味だったりすると、いまいち食指が動かない。

そういう意味でも、無料キャンペーンには一定の効果があると思います。

小玉オサム『軽い心』


著者は、以前からゲイ雑誌で活躍しておられるらしい。
KDPが日本で始まったあたりから、けっこうたくさんKDPを出してはって、「すげー!動きが早い!」って思ったのは覚えてる。
その頃に無料キャンペーンがあって、試しにダウンロードしてみたものの、表紙があまりにも…あまりにもそっけなかったので、ずっと放置してしまった。

ところが、Kindle廃課金者オフ会の際、お互いのKindle蔵書一覧を見せ合っていたところ、参加者のひとりから、
「あれっ、小玉オサムさんの本がありますね。えっ、まだ読んでない?いやーこれはいい本ですよ。すごくいい。おすすめです。この本はエロシーンとかないから、大丈夫ですよ」
と熱くおすすめされて、読む気になったのです。

軽くない人生と、軽くて捕まえていられない心

ホンマにええ本やった…なんで読まんかったんや…。

晋太郎さんの『天使たちのシーン』もすごくいい本だったんですが、あれには若さとか、きらめくまぶしさがあった。悩んで悩んで、でも最後は何か救われるような気持ちで終わる、さわやかな話だった。

『軽い心』はタイトルに反して、重く暗いものをかかえており、大学生から白髪の生える年頃まで、約25年の歳月を描いているだけあって、若さもきらめくまぶしさもない。そして、死が非常に身近にある。
はっきりとした病名は書かれていないけれども、エイズに冒されて亡くなる人もいる。

出てくる男の人たちは、ほぼゲイなんだけど、彼らに関わる女性たちも、ひとりひとりちゃんと血の通った人間として描かれてる。こういう人、いそうだなぁって感じで。

たとえば、主人公を手伝っていくうちに才能を開花させるおばちゃんとか。
最初は「私なんてとてもとても」「人に認められたのって初めてだわ」って感じだったのが、だんだん腕を上げていって、人をまとめたり気遣ったりする能力も発揮していって、とうとう独立する。

たとえば、ゲイでありながら自分の親のために結婚して子どもをもうけた男と、その妻とか。
はたから見れば幸せそうで、でも常に何かすれちがっていて、妻である彼女はそれに気づいてる。気づいてるけど、大きなきっかけが来るまでは動けない。
でも、見切りをつければあとは早いのが女の人の強さだから、彼女はまた次の人生を選び、笑顔で去っていく。

そんな中で、主人公はふわふわと流されるように生きている、ように見える。
実際にはそうじゃないはずなのに、なんだかそんな感覚なのだ。死を身近に感じながらも、彼の心は流されるようにどこかへ飛んでいってしまいそうな軽さがあって、でも決してそれは「うれしくてふわふわする」軽さではないのだ。

赤井五郎『六花抄』


Kindle廃課金者オフ会に参加されていた方の本。
「オフ会の期間に合わせて、1番いい本を無料キャンペーンにしてますので!よかったらどうぞ!」
と自己紹介してはって、思わずダウンロード。

収録作品は以下の通り。

  • 六花と塵
  • 緑の独楽
  • 優しい砂

どこか奇妙な家と、その正体

昔の日本の村とおぼしき、とある村を舞台にしたお話でした。

世の中のことを、どころか自分が住む村のことすらよくわかっていない主人公の男の子。
他の使用人たちと一緒に村のはずれの家に住んでいて、千鶴江様と呼ばれる女性を守るのが彼の役目。

ニコウ、ガコウ、ユノノミ、マエボウ、ウシロボウなど、なんとなく日本語だとわかる名前で呼ばれる人たちが大勢出てくる。
千鶴江様や久賀爺といった、普通の名前の人もいるのに、なんでだろう?と思っていたのですが、これはこの家の中での役柄に応じて割り振られる名前だったり、本名を隠すためのあだ名だったりするのかなぁ。

どうやら千鶴江様というのは巫女みたいなものらしい。とすると、この家は神社みたいなものなのかな。あれ、神社は別にあった。でもお祭りの時には村を訪ねて呪文みたいなものを唱えているぞ…。
などと思いながら読んでいると、突如、事態は急転する。

そしてようやく、この家の正体がわかってくるのですが、なんでこの家は今に至る地位を築いたのかなーとか、そのへんのことは書かれていない。このお話は、主人公と千鶴江様のふたりにフォーカスしてるので、そういう背景はあまり出てきません。

「六花と塵」は、ふたりが新たな世界へと足を踏み出そうとするところで終わっていて、続きが気になる感じです。明らかに追われてたけど、その後どうなったのだろう…。
なんか他にも気になる謎がいろいろあったぞ!
Twitterでググってみたら「ミステリっぽい独特の世界観」という感想が出てきて、なんとなくわかるわーって思いました。

「緑の独楽」「優しい砂」は、「六花と塵」に出てきた登場人物の過去のお話です。

余談:最近ぽちった本


ヤマザキマリの『男性論』が日替わりセールになってたので、ぽちっとな。

さらに余談:萩尾望都が大量にKindle化されましたよ

実家に紙で揃ってるから、買う必要ないってわかってるんだけど!
でも、いくつか気に入ってる作品を買ってしまいそうだよ…。



『バルバラ異界』や『ポーの一族』あたりは、前からKindle版があるよねー。
最初にKindle化されたような記憶がある『ポーの一族』だけ、文庫版じゃなくてコミックス版なんだよなー。表紙がちょっと浮いてる。これも文庫版で出せばよかったのに。