Kindle書評『乱読のセレンディピティ』『夜の写本師』その他

引っ越しの数日前から、虫刺されに似た謎の赤いブツブツが体に広がり始めて、とってもかゆい日々です。
病院に行ったけど原因不明だった…ステロイド剤がまだ効かない。

「アレルギーにしては、特定の場所にしか出てへんのが気になりますねぇ。不思議ですねぇ。疲れていると、こういう症状も出やすいので、よく寝て下さいね」
とお医者さんに言われたでござる。

ずーっとバタバタしてたので、今日の午後はひきこもって読書するよー。
てなわけで、溜まってた本の感想いってみよー。

外山滋比古『乱読のセレンディピティ』


昨日の新刊。病院で待ってる1時間で読み終わってもうた。
著者は『思考の整理学』で有名な人ですね。

忘れちゃっていい、スピーディーにどんどん読め、しゃべれ

精読よりも乱読をすすめるエッセイです。

ほとんどの本は1回読んだらそれっきりだなー、ちょっともったいないなーと思ってたんですが、著者は「それでいいんだよ」と乱読を肯定している。
昔は本が貴重だったから精読が推奨されたけれども、これだけ本がいっぱいある現代では、スピーディーにどんどん読んでいった方がいい。読むそばから忘れてしまってもいい。
本当に必要なことは、必要な時に思い出す。

本を読んだら、忘れるにまかせる。大事なことをノートしておこう、というのは欲張りである。心に刻まれないことをいくら記録しておいても何の足しにもならない。

忘却がうまく働かないと、それほど摂取知識が多くなくても、余剰知識がたまって頭の活動を阻害するおそれがある。よく忘れるということは、頭のはたらきを支える大切な作用であると考えるようになった。

特に面白かったのが、「子どもに本を読ませたいなら、読書を推奨すべきではない」という指摘。
人間、やれと言われたことよりも、やるなと言われたことの方が面白そうに見えるものである。だったら、本を読ませるには、「読むな」と言った方がいい。

悪いことをしているという意識がかくれ読みの楽しさを支える。

わかるわー…親に「読むな」って言われた雑誌って、逆に読みたくなったもんなー。
(読者のエロ体験の投稿とか載ってたので、こっそり読んだりしてた)

戦前、井原西鶴の人気があったのも、検閲が厳しくて伏せ字だらけだったからだという。伏せ字の場所に本当は何が書いてあったのか、あれこれ想像しながら読むのが楽しかったと。
その後、伏せ字がなくなってしまうと、面白さがなくなってしまい、人気も落ちていってしまったらしい。

他には、日本の教育が「読み」に偏りすぎているという指摘も興味深い。
特に読書好きの人は、本を読まない人のことを「リテラシーが低い」「教養がない」などと言って馬鹿にしがち(私も人のこと言えない)
ネットでも、そういう意見をよく見かける。
でも、本を読むことがそんなにえらいのか?と著者は問いかける。

アルファベットを読むのに比べて日本の印刷物を読むのは、少なくとも目にとって、たいへん負担が大きいのである。しかし、それを教えてくれることもないから、どんどん近視がふえた。

本をありがたがって、読みすぎると、心の近眼になって、ものがよく見えなくなる。

文章をいくら読んでも意味が理解できなかったのに、口に出して読んでみる(ゆっくりではなく普通にしゃべる速さで読む)と理解できることがある。それは、言葉がもともと話し言葉であり、耳で聞くものであって、文字で読むものではなかったからだ。
という話も面白かったです。

乾石智子『夜の写本師』


けっこう評判のよかった和製ファンタジー。
試しにぽちってみた。

これは復讐の物語

ファンタジーといえば魔法ですが、この話はちょっと変わってます。
なんせタイトルが「夜の写本師」だから。そう、写本で魔法をかけるのです。

写本といえば、アイルランドの写本(ケルズの書、ダロウの書、リンディスファーン福音書)が有名ですね!
いっぺん、展示されている複製品(リンディスファーン福音書だったと思う)を見たことあるけど、ああいう複雑な模様、大好きなのです。円環する模様。複製品も1冊数百万円かかるし、点数が限られているので、研究者でもない個人が所有できるものではないのですが。

話がそれた。
このファンタジーは、復讐の物語です。
主人公は、師匠と友達を殺された復讐のために生きるのですが、その復讐は千年もの昔から何度も何度も、生まれ変わってはくり返されてきた因縁であることが、次第に明らかになる。
前世から今に至る因縁の話が途中で挿入されるので、「…ところで主人公は誰だったっけ」と思いながら読んだ。

前編を通して、さまざまな設定や描写が緻密に練りこまれたお話だったんですが、復讐の話なので決して明るくはない。むしろ暗い。
途中で、両手両足を夫の配下の男に押さえつけられて、新婚初夜の夫にレイプされながら殺される女の子の話が出てきて、ちょっと疲れて読むのをやめてしまいました。
昨日、病院の待合室で『乱読のセレンディピティ』を読み終わっちゃって、読むものがなかったので『夜の写本師』の続きを読み始めたら、今度はそのまま最後まで読めた。
本を読むタイミングってあるよね。

その他、最近読んだ本

岸見一郎『嫌われる勇気』


哲人と青年の対話方式で進んでいく本。
「過去にとらわれて勝手な物語に自分を当てはめるな」「今、ここだけを真剣に生きろ」「他人の承認を求めるな、他者貢献に生きろ」「特別ではない、普通の自分を受け入れて前に進む勇気を持て」などなど、アドラー心理学の名言?が目白押しです。

アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険 【新訳版】』


なかなか読みやすかった。
犯罪の動機のほとんどが「カネ」なので、余計なことを考えずに読める。

佐藤秀峰『漫画貧乏』


お金にならないので生活できず、ジリ貧になっていく一方の漫画の世界で、なんとか生き残るすべを模索して販売サイトを立ち上げたり、原稿料UPの交渉をしたり、あえて著作権フリーで作品を公開したり、さまざまな方法を試している著者。
『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリも、日本の出版社と漫画家の慣習がいかにガラパゴス的で非常識なのか、いかに契約が適当で原作者にお金が払われていないか、いかに日本の漫画家が酷使されているかをインタビューで語っておられましたね…。

久世番子『神は細部に宿るのよ』


『暴れん坊本屋さん』で有名な久世番子による、「おしゃれじゃない人間が語る被服エッセイ漫画」。
2巻目もぽちってみようかなー。