Kindle書評『エマ』と『さよならタマちゃん』

お久しぶりのKindle書評です。

本を買うペースも落ちたな…と思ってたけど、3月もKindle本を8冊買ってた。
思ったより買っている。

ちなみに紙の本も、父に借りて読んだりしてます。
最近借りた中で面白かったのは、『日本建築集中講義』。

個人的には『見仏記』よりも面白かった!
作家やら画家やら研究者やら、そういう非サラリーマンの人たちの対談って、なんでこんなに面白くなるのであろうか…。いやもちろん面白くなりそうな人たちを編集部が選んだおかげだろうけど。

さて、紙の本の話はおいといて、Kindle本の感想いってみよー。
今回は漫画です。

森薫『エマ』全10巻


実は2月に買った漫画。
けっこう前からあった漫画だし、あれほどの人気作なのに、10巻という長さにうろたえて手を出せずにいたのです。ありがとうKindle化!

虫愛ずる姫君的なもの

2月の終わり頃から、疲れていてネットができなかったり、残業フィーバーで時間がなかったりする日々が続いております。
そんな中で、残業は少ないけど疲れていてネットができない夜などは、『エマ』を毎日のように読み返してました。たまに『乙嫁語り』も読み返したりして。

1番好きなのは、5巻の最初に出てくる「伝統と血統」のところかな。
リチャード・ジョーンズと、オーレリア・ハートウィックの出会いから、結婚生活で無理の続いたオーレリアが心身を壊していくまでを描いた過去編。

若い頃のオーレリアみたいな、「貴族のお嬢様なのに、お嬢様らしからぬことが好きな女の子」っていう設定が好きなんですよ。
『堤中納言物語』の虫愛ずる姫君みたいな。
逆に言うと、オーレリアのように「貴族としてそれなりの出自があるからこそ、多少は勝手なことをしても自分の立場はゆらがない」だけなんですけどね。資産も血統もない末席の貴族とか、ジョーンズ家のように成り上がりとして軽蔑されていたら、自分の身の回りにものすごく気を遣うだろうから。

きっと、私もオーレリアや虫愛ずる姫君のように、「貴族の姫君や淑女として恥ずかしくないふるまいを持ち合わせていない(もしくはそういうものが苦手)」だから、そういう設定のお話が好きなんでしょうね。
でも、一方で私は、彼女たちのように虫や動植物を育てることが好きなわけではなくて、ただの頭でっかちな、本を読むだけの非力な小娘にすぎなかったのだけれど。

他にも、いろんな登場人物がいて、それぞれの生活やストーリーが面白い。
派手さ、劇的さは薄いけれど、こういう話の方が私は好きです。

武田一義『さよならタマちゃん』


読んだら泣くとわかっていたので、しばらく買うのをためらってましたが、衝動的にぽちっとな。
睾丸のガン(及び転移)が発覚し、35歳の若さで入院生活を余儀なくされた漫画家アシスタントのエッセイ漫画です。絵はシンプルでやわらかい感じ。

生きて帰ってくる闘病エッセイ

カスタマーレビューでも書かれていたように、大変不謹慎な事実ですが、「主人公(著者)が死んでしまう闘病エッセイの方が売れる」。
でも、この著者はちゃんと生きて帰ってきます。

いろんな名シーンがあるし、じんわりくる台詞も、泣かせるシーンもたくさんあるんですけど、そのへんはちょっと書ききれないんでAmazonのカスタマーレビューを参考にして下さい。
(5つ星めっちゃ多い)

投薬で体を痛めつけてガン細胞を殺す治療法については、「ガンと闘うな」という意見もありますし、他にも「ガンは切らずに放置しておけばいい」みたいな本もよく売れてます。

ただ、実際に手術を受けた作家の森奈津子は、
「ガンにもいろいろな種類があるのだから、一概に投薬や手術をしなくてもいいなんて言えない。放置しておいて治る人もいるけど、そうじゃない人だって大勢いる。でも、手術しなくても治るという考え方を信じたい気持ちはとてもよくわかる」
という趣旨の内容をツイートされてました。

病める時も、健やかなる時も

私が特に印象に残ったのは、ふたつのエピソード。

夫婦の営みの時、「あれ?ここ変じゃない?」と、ガンを早期発見してくれた妻の早苗さん。
(もし自分ひとりだったら気づかなかった、と著者は語る)

入院することになった著者が、無自覚のうちに普段より元気にふるまい続けていることを、早苗さんはすぐに見抜きます。
やがて、治療の苦しみで周囲への配慮どころではなくなり、ひどい言葉も投げつけるようになってしまった(そしてあとからものすごく落ちこんだ)著者に、早苗さんは静かに寄り添うのです。
「無理してるの気づいてたよ」「今までは私が病気になって支えてもらってたから、今度は私が支えるよ」と。

そして、早苗さんから「もしかして、『治療うつ』なんじゃないかな?」と指摘された著者は、彼女の助言を取り入れながら、少しずつ自分のしんどさを取り除いていく。

あぁ、この人に早苗さんがいて、よかったなぁ、と思った。

遺された家族

もうひとつ印象に残っているのは、著者のお父さんの話。
実は、著者のお母さんは、若くしてガンで亡くなっているのです。

「妻の不在」は父のなかで
年月が経つにつれ
小さくなるものではなく
むしろ大きくなっていくように
見えた

淡々と断片的に描かれる、お父さんのいくつかの場面が胸に刺さる。

余談:次に読むかもしれない漫画

漫画を買いまくることで定評のある犬子蓮木さんが、最近は『本屋の森のあかり』にハマっているようです。
今なら1巻が無料なので、試しにぽちってみた。

これ、思ったより巻数があって、おまけに最終巻がまだKindle化してないけど…。

そういえば、オタク全盛期、ひいきにしていた書店でこの漫画を見かけた時、
「本屋の仕事に夢を見たけりゃこの漫画!現実見るなら暴れん坊本屋さん」
という手書きポップがあったことを、いまだに覚えています。


暴れん坊本屋さん、通称「暴本」。
久世番子の出世作!
残念ながら、Kindle版は出てませんが。