Kindle書評『黒本』と『決断力』と『パンツの面目ふんどしの沽券』

先日、寒さで下半身が冷えてしまい、お腹を壊しました。
雪の日と同じ格好だったのに、どうやら体が冷えに弱くなってたみたいで、「下半身、はだかで歩いてんのか?!」と思うほど足(特にふともも)が冷えて、立ち上がれなくなるレベルの腹痛へとまっしぐら。

寝こんで安静にしているあいだ、Kindleで本を読みました。
布団から出ないまま、新しい本を手にとることができて便利でござる。

明日は数ヶ月ぶりにレギンスパンツ履こうかなぁ。
でも、あのブーツはタイツを履いた足しか入らなかった気が…!

寒さ対策に悩みつつ、読んだ本の感想いってみよー。

高城剛『黒本』


最近『白本』を読んだところへ、タイミングよく『黒本』がリリース。

主な内容は日本のマスコミ批判であり、そのため出版社からはお断りされたのだとか。
しかし、出版社が出したがらない本も、自分でリリースして、同人誌よりも広範囲の人々に届くAmazonで販売できてしまえる。それがKDPの恐ろしさ。

日本式儒教システム、ヤクザとつながっているテレビ局

高城剛は、日本のことを「日本式儒教システムを土台にした封建制度な社会主義」の国であるとし、それが日本の低迷を招く原因であると語ります。

本来の儒教にはなかった、年長者や先輩は権力者であるという絶対的価値観

つまるところ、日本の儒教は 「目上の権力者が築いたフレームを壊すな」 という教えなのです。

そういえば、日本の儒教では「忠孝」で、親への孝行よりも権力者への忠義が優先されるけど、中国の本来の儒教では逆だと聞いたことがある。日本に儒教が伝わってから、権力者に都合のいい優先順位にひっくり返されたのだ、と。どの本で読んだんやったかな…。
三国志が好きな彼氏に話したら、「そうか、だから徐庶は罠と知りつつ、母親のもとへ行ったんやな」と言ってた。そうなのか…?

日本の暴力団は、配下の芸能プロダクションを通じてテレビ出演者を支配し、テレビ局もその構造に甘んじ、「大企業の広告」を共犯関係で握って、結果的に反社会組織に大金が流れています。

マスメディアの体質そのものが、いじめ

日本のテレビは全局同じ志向(基本的に当たり障りなくお上、特に官僚機構にもの言わない)な上に「ステマ産業」そのものだと思います。

日本のマスコミが、報道機関というよりも政府のプロパガンダにすぎず、政府にとって都合の悪いニュースは報じられない傾向にある…という話は、他の本やブログでもよく見かけます。
それに加えて、高城剛は「日本のマスコミ、特にテレビはヤクザと癒着しているし、間接的にヤクザをかばう」とばっさり。NHKも、実際の番組は民放に制作を依頼しているケースが多く、どんどんワイドショー化しているし、暴力団に金が流れている、と。
…そういえば、島田紳助が暴力団との関係を問われた時、ワイドショーの中で、公然と彼や暴力団員をかばう発言をした人もいたね。

本当に大事なもの

また、経済危機に備えて貯金を金塊に変えておこう!みたいな話については、ソ連崩壊やアルゼンチン破綻の際には、そんなもん役に立たなかったよ、と指摘。

まずは自分で最低限の食料と水の確保です。

東日本大震災でもわかりましたが、なにかあれば、数ヶ月は人々は食料以外の消費をほぼ止めます。

金塊を買うくらいなら、食料生産ができる田舎の土地を確保しておけ、と。
価値観が急変し、それまでの貨幣経済が成り立たなくなった時に大切なのは、目の前に自分の食料があるかどうかなのだと。

他にも、今の社会は、よってたかって「あなたには不足しているものがある」と訴えかける仕組みになっており、そのせいで自分を見失って何かに依存しようとする人は増えていくだろう、とか。
個人のお金の流れを握れば、個人情報も個人の行動も監視できるので、どこの国でもお金を電子化してログをとりたいと思っている、とか。
悩んでいる時は、毎日ジョギングやウォーキングをすればいい、そうして少しずつ進む距離を増やしていくにつれ、悩みも解決する、とか。

面白い指摘がいろいろあるので、興味があったら読んでみるといいよ。

毒をもって毒を制す

『黒本』なだけあって、変な話題も多かったです。

たとえば、UFOをよく見ます、とか。
しかも、ただ見るだけでなく、「UFOの写真が撮れたので、空港に待ち構えてた東スポに渡して鑑定してもらった」という。空港での東スポ記者とのやりとりを想像するだけで、じわじわくる。

さらに、「ヒーラーを名乗る人が、今後の恐ろしい未来について、予言と称する意味不明な日本語を高齢者向けの健康雑誌に載せてたんだけど…」という質問が、メルマガ読者から寄せられたり。
それに対して高城剛は、毒をもって毒を制すとばかり、似たような肩書の人にその予言を見せて解説させる。よくもそんなに気宇壮大な陰謀論を思いつきますね…!って感じで笑いが止まらない。しかも当の高城剛が、すっとぼけたコメントでオチを締める…。

羽生善治『決断力』


確か角川セールでぽちった。羽生善治の本は初めてです。
私は何度やっても将棋のルールを忘れてしまうので(恐らく興味がないため)、棋士の少年が主人公である羽海野チカの漫画『3月のライオン』を思い浮かべながら読みました。

実力の伯仲する150人が、何年も何十年も勝ち負けを争う世界

基本的に、淡々と、ごく普通のことを語っています。
面白い文章というわけでも、名文というわけでも、驚くような発見があるわけでもない。ただ、ごく当たり前のことを語っている本なのですが、裏を返せば、そういう「当たり前のこと」を何年も実践し続けるのは非常に難しいのです。

だから、勝負に関するさまざまな「当たり前のこと」を淡々と述べる中で、実例として語られる棋士の人々の話の方が印象に残った。
あの先生は、盤面を全然読まないのに、自然と手がいいところへいくのだ、とか。
どの先生は、心理面に長けていて、相手の嫌なところを突くのがすごく得意だ、とか。
この先生は、ひとつのことを突きつめるタチで、対局中は必ず同じものを食べるから、たまに別のものを食べると将棋会館が大騒ぎになる、とか。

紙の本は2005年に出ているので、ちょっと古いんやけど、最近の将棋界の動向も述べられていて興味深かった。
情報化が進み、どんなやり方もすぐに研究され尽くしてしまうから、常にアンテナを張りつつ、膨大な情報の中から必要なもの以外は捨てて、判断を下して、そこから自分のアイディアを出せるかどうか。情報に流されず、自分のスタイルを持てるかどうか。そのへんが重要なのだと。

わー、Web系も真っ青の情報化社会ですね!
(恐らくプロ棋士が150人程度しかいないから、それだけ変化の速度も速いのだと思う。Web系なんて今でも10年前のテーブルレイアウトから抜け出せない楽天市場とか残ってるからな)

強く共感したのは、このくだり。

以前、私は、才能は一瞬のきらめきだと思っていた。しかし今は、十年とか二十年、三十年を同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている。(中略)継続できる情熱を持てる人のほうが、長い目で見ると伸びるのだ。

続けられることってね、それだけで才能なんですよ。

米原万里『パンツの面目ふんどしの沽券』


米原万里のエッセイ。
あとがきで、ガンにかかったことを述べており、この本が彼女の晩年に出たものであるとうかがえる。単行本は2005年、文庫本は2008年リリース。

ライフワークになるはずだった、下着の歴史

簡単にまとめると、米原万里が、下着について調べまくるエッセイです。
最後の方はバテちゃって、さーっと流すように読んじゃったんだけど、さっきカスタマーレビューを読んだら、似たようなこと書いてる人が他にも何人かいて笑ってしまった。仲間よ…!

パンツ(パンティ)、ズロース、ふんどしなどなど、調べれば調べるほど、いろいろなところから資料やら歴史的証言やらが出てきて、連載を読んでいた読者からもおたよりが届いて、どんどん収拾がつかなくなっていく。
恐らく、ガンになっていなければ、米原万里はさらに精力的に取り組んで、きっちりとまとめた下着の歴史の本が出ていただろう。

下着の歴史をさかのぼるにつれ、ズボンとスカートの歴史にも踏み入っていく。
構造の簡単なスカートが先に誕生したため、古代の国々では、遊牧民が履くようなズボンを受け入れるのに相当な抵抗があったそうな。でも馬に乗ろうと思ったら必要なんですよね、ズボンが。

個人的に面白かったのは、以下の部分。

未来派や構成主義アートを信奉する芸術家たちが、ロドチェンコやバクストやポアレが、革命前夜のロシアにおいていかに衣服の、ひいては下着の簡素化を啓蒙しようとも、舞踊家イサドラ・ダンカンが肉体の呪縛からの解放をいかに奔放に表現しようとも、女性たちはコルセットを手放そうとしなかったのに、革命という激動による社会全体の貧困化のために、コルセットを諦めざるを得なくなった。また女性の下着の過度な装飾も、この時期姿を消した。

庶民にとってはどうでもいい思想よりも、のっぴきならない「貧困」という事情によって、下着の簡素化は一般に広まったのである。

あと、日本が近代化していく中で、女性にパンツを履かせようとすることが、どれだけ大変だったのかも語られている。
(それまでの女性たちは着物の下にパンツなど履いていなかったし、生理中は綿を丸めて押しこんでいた)

女たちが、「きゅうくつで、気持ちが悪いもの」として頑強に受け容れずにいた

その気持ち、わかるなぁ。

私も産婦人科の先生に「なるべく下着を履かずに寝なさい。もしくは、ぴったりしていない、ゆるめの下着を履きなさい」と言われたので、寝る時は下着を履いてないんですよ。さすがに冬は寒いから履いてるけど。夏でも生理中は履いてるけど。

股のあたりは蒸れやすいので、通気性をよくしなさいという話らしいのです。
んで、実際に下着なしで寝てみると、開放感があって気持ちいいの。締めつけられないの。それにパジャマって、ゆるーいズボンとか、ワンピースだったりするから、股の皮膚の薄いところにズボンの生地が触れて痛い…なんてこともない。

生まれてからずっとパンツを履いてなかった人が、いきなりパンツを1日中ずっと履いてろって言われたら、そりゃものすごく窮屈に感じると思うよ。ただでさえ皮膚に密着する部分だから、余計にね。
男の人も、女の人も、夏場は下着を履かずにパジャマ着て寝てみたらいいと思います。びっくりするほど開放感があって気持ちいいから。

余談:さっきぽちった本


寿たらこの漫画が、またKindle化されてた。
ところで、『SEX PISTOLS』の7巻は、いつKindle化するのかなぁ。すでに紙の方は8巻が出るみたいですが…。