Kindle書評『狼を狩る法則』と『ドント・ルックバック』、その他M/Mロマンス

先日、弟が紙の本を何冊か貸してくれました。
その中に、M/Mロマンスというジャンルの小説があった。
「北米発、男と男の恋愛譚」として、モノクローム・ロマンス文庫(新書館)から出てる。今のところ、翻訳はすべて冬斗亜紀という同じ人。

ジョシュ・ラニヨン『天使の影』。イラストは草間さかえ。
ミステリ専門書店を営みながらミステリ小説を書いている、アドリアン・イングリッシュというゲイの男性が主人公。殺人の疑惑をかけられて、疑いを晴らそうとしているうちに自分も誰かに狙われるようになり…という話です。続編『死者の囁き』も同時発売されてる。

M/Mロマンスってなんだべ?と思ったけど、どうやらゲイを主役にしたロマンス小説のことみたいです。ジョシュ・ラニヨンも「ゲイ・ミステリ作家」って書いてあった。
読書系のSNS「Goodreads」にも、M/Mロマンスのジャンルがちゃんとあった。

M/M Romance is fiction with a relationship between two (or more) men at the center. It could be contemporary, fantasy, sci-fi etc.

なかなか面白かったので検索してみたら、同じレーベルのM/Mロマンスが何冊もKindle化されてたよ!
アドリアン・イングリッシュのシリーズは、去年のクリスマスに出たばかりなので、まだKindle化されてへんけど、この様子だと遠からず対応してくれそうです。

そんなわけで、読んでみたM/Mロマンスの感想いってみよー。

ジョシュ・ラニヨン『ドント・ルックバック』


美術館で働くゲイの男性が主人公。イラストは藤たまき。
のっけから犯罪に巻きこまれて記憶喪失。警察側は主人公が犯人ではないかと疑っているが、なにしろ記憶がないのでわからない。真犯人に命を狙われながらも、「もしかして自分は誰それが好きだったんじゃないか」「もしかして自分と誰それは特別な関係にあったんじゃないか」と、記憶を探っていく。

ある意味、リアル

主人公が疑われるという設定は『天使の影』と同じやなー、と思いつつ読んだ。

多分、読みごたえがあるのは『天使の影』の方だと思うけど、『ドント・ルックバック』の方も嫌な男が出てきたりして、そういう意味では読みごたえがありましたよ(すすめ方がおかしい)
ゲイじゃないのに、ゲイの恋心を利用して言いなりにさせる男が出てきたりしてね。いやー恐ろしいですね奥さん。自分が決して裏切られないし襲われもしないと確信して、というか相手をなめきっている男。BLではあまり見ない気がする。
こういう男、実際にいるんだろうなー…なんか変にリアルだったもの。

あと、主人公の友達として登場するのが女性カップルだったな。

ちなみに『天使の影』は著者のデビュー作らしいんやけど、なるほど、ゲイとして生きていく上で遭遇するであろういろいろなシーンが盛りこまれてましたよ。デビュー作って、著者の言いたいことを全部ぶつけた感じがするよね。
(男を寝取られた女に「エイズになって死ね」と罵られたり、かつての恩師から差別的な発言を受けたり、現実を完全にスルーする両親と会話をせねばならなかったり…)

『ドント・ルックバック』はそこまで盛りだくさんではない。
もうちょっとあっさりしてます。命を狙われたり、犯罪者として疑われて失業しかけたりする反面、記憶喪失のおかげで、片思いに苦しんでいた過去を客観的に見れるようになったりします。そういう意味では普通の「恋愛要素ありの軽いミステリ」だと思う。

J・L・ラングレー『狼を狩る法則』


いわゆる人狼BL。向こうにもあるのか…と思ってたけど、よく考えたらむしろメジャーでしたね。
イラストは麻々原絵里依。

すぐれた身体能力や治癒能力を持ちながらも、普段は人間の姿で生活している人狼たち。彼らには運命の女性を見つけた瞬間、それが「メイト(伴侶)」だとわかる能力がある。
しかし、主人公が出会った「メイト」は、同性の人狼だった…。
というファンタジー。

エロが多いです

この本には、肌の色で人種差別をする母親や、ゲイに対して強い嫌悪感を表現する男友達などが登場したりして、あぁアメリカだなぁ…などと思ったりするわけですが。

基本的にエロシーンが多い。
日本の某BLレーベルか?と思うほど頻繁に登場する。
ロマンス小説の代表格であるハーレクインだと、1度もエロシーンが登場しない作品だって多いんですよ。あっても1回だけの本が多いし。日本のBLやTLとちがって、エロシーンに対する見えない規制を感じるというか。

でも、この本は多かったです。5~6回は出てきたんじゃないかな。
なにしろ、メイトがそばにいると下半身が反応するという設定なので、そりゃもう、ことあるごとに。エロ成分多めのロマンス小説って、そういう設定あるよねー。
確かTL小説でも、花嫁候補だけがみだらになる香水とか出てきたし!

それと、BLでは全然見ないノリのエロシーンだった気がする。アメリカンな感じ。
「早くお前にファ×クしたい」とか、「ベイビー、腰を振れ」とか、そういう台詞が普通に出てくる。そういうのが苦手な人は楽しめへんかも。

少女漫画的な「運命」「ときめき」「恋愛」を含んだゲイ小説って感じ

というわけで、紙とKindleあわせて3冊のM/Mロマンスを読んだわけですが、まさに少女漫画的な要素を含んだゲイ小説って感じだった。

下半身事情に関しては、一部のBLに見られるようなファンタジー(いわゆる「やおい穴」とか)は存在しないし、BLでたまに描かれる「この世はゲイばっかり」状態なご都合主義の世界も出てこない。エロシーンの台詞もちょっと男性向けな感じ。
でも、ミステリ、ファンタジー、SF、いろんな世界観を舞台にして、ゲイの男たちの人生が交錯する。恋が芽生えたり失われたり、偏執的な愛に追いつめられたりする。そういう意味では、とても少女漫画的。

他の本も読んでみたいなー。

そういえば、最近は台湾BLも翻訳が出てきてますね。舞台はFBIだが!

紙の単行本で出てるけど、Kindle化されへんかなぁ。