Kindle書評『ギリシャ危機の真実』『とわとわの三角』『真昼の星空』ほか

連日21時22時までの残業、土曜出勤…というスケジュールが続いたのち、腸炎で倒れてとうとう会社を休んだとりさんです。さすがに1日では治りませんでした。

病院の点滴室で、カーテンに仕切られた横のベッドにいた人が、「今日だけは会社休めないんで…」と消え入るような声で主張して、途中で点滴を切り上げて出勤してました。エェェエエエ。
人のこと言えないけど心配でした。

いのちだいじに。

そんなわけで、なかなかブログに書く時間がなかったKindle本の感想いってみよー。

藤原章生『ギリシャ危機の真実』


アフリカやローマなどで、新聞社の特派員として活動してきた著者による1冊。
ギリシャ危機に興味を持ったのでぽちっとな。

知っているようで知らない国、ギリシャ

え、あれ?面白いやん!って思いながら読んだ。やはりプロなだけあって淡々とした文章も読みやすい。扇情的に危機をあおる内容じゃないし。

ギリシャ危機に関しては、「公務員が多すぎて、給料を払いすぎてるせいで国が危機に陥ったんじゃないか」という話をよく見かけましたが、実際には市井の人々はまったく給料が足りておらず、仕事をいくつもかけもちして、カツカツなんだとか。

その理由がひどかった。
「ギリシャの公務員の数を把握している人は、誰もいない」
…そんなんで給料払えるのか?!

政権交代のたびにコネで人を採用→でも前からいる人は辞めない→ポストは増えないので幽霊公務員になる→あれ、公務員って今どれだけいるの?
という状況らしいです。
わ、わからん…この予算からどこの誰にどんだけ給料払うとか、そういうの全然まとまってないの?!

あと、かつての軍政が人々にもたらしたものとか、あの手この手で税金から逃れようとするのがギリシャ人の常だとか、政治家のことを誰も信用していないとか、引き際を心得た「とても慣れているデモ」の正体とか、他にもいろんな話が載ってます。

個人的に感心したのが、ギリシャ共産党の話。
一応は西側諸国でありながら、ソ連が崩壊した今でも、ギリシャ共産党は庶民からの支持や信頼を集めている。

ギリシャ共産党が日本や西欧諸国のそれよりも存在感が大きいのは、第二次大戦前から、ドイツなど外来勢力と闘う主力だったからでもある

ギリシャ共産党は、ナチスに攻められた際には国内最大の抵抗勢力となり、国を守ろうとする。なのに戦後、西側諸国であるアメリカやイギリスから敵視され、弾圧を受けた。

歴史を見てのとおり、ギリシャ共産党は空理空論をとなえるだけの単なる理想主義者ではなく、戦時中は国のために血を流し、戦後は英国や米国など国のパトロンに追いやられた人々。一度もいい目に遭えなかった被害者の代表と言える。

だからこそ庶民には今でも深く浸透しているし、感情移入されやすいみたいですよ。
なるほどねぇ…。

犬子蓮木『とわとわの三角』


KDP風立ちぬ杯にエントリーしていた1冊。
森博嗣の崇拝者としておなじみの犬子さんです。今度はミステリな短編。

天才ふたりと、凡才の主人公、合わせて3人

読み終わってみると、タイトルと表紙の意味がわかります。
「あぁ、こういうことだったのか!」って。

正直、「なんかよくわからんタイトル…犬子さんってレーベル名も『もふもふ出版』だし、似たようなノリでタイトルつけたのかなー」なんて思ってました。すみません。

学校で人が死んだ。
主人公と、その友人である天才の同級生ふたりの計3人で、「これ、なんか変じゃない?なんで死んだと思う?殺人事件?」みたいなミステリらしい会話をやりとりして…というストーリーです。
ラストのオチで、「そっちか!そっちかよ!あーでも森博嗣にありそう!」って思った。
でも、なんで彼女は主人公のことがそんなに好きなのかしらー。かしらかしらご存じかしらー。

やはり森博嗣っぽさは健在。
あと、地の文にかなり受動態が多かったのでびっくりしました。「〜されている」という文末が頻出する。今までの犬子さんもこんな感じだったっけ。それとも久しぶりに読んだから目についちゃったのかなぁ。

個人的には、受動態は読みづらくなるので、あまり入れないように心がけてます。

米原万里『真昼の星空』


米原万里のエッセイが出てたので、ぽちっとなー。
かぎゅうさん(iPod touch)のKindleアプリで読んだ。

面白い小話、集めました

いやーやっぱり面白いよー面白いよー。2回言ったけど面白いよー(3回目)

笑える話もあれば、現代社会に物申す話もあり。
現代っ子の私は、ネットに対して批判的な米原万里に必ずしも賛同できるわけではないのですが、「便利な技術が生まれると、それによって人間は自分の能力や技術を失っていく」というのはその通りです。書籍の普及も、電話の普及も、ケータイの普及も、電子書籍の普及も、皆そう。ネットだけじゃないよね。

他に面白かった話をいろいろ挙げてみると…

わかりやすく残酷なスターリン式の支配よりも、マスコミを通じてやさしくやわらかく洗脳していく資本主義社会の支配の方が、気づきにくいから抵抗も生まれにくいよね。北風と太陽、どっちがいいのかわからないよね、という話とか。

ディズニーランドに行ったらめちゃくちゃ気持ち悪かった。こんなにたくさんアトラクションがあるのに、どれもこれも人々がただ受け身で一方的に刺激を受けるだけというワンパターンなものばかりだったから、とか。

日本人は他のアジア諸国に比べて、顔のバリエーションが非常に豊富だという話は有名である。多くの民族が行き来する大陸の方ではなく、閉鎖的になりやすい島国の方でバリエーションが増えたのはなぜなのか?とか。

ちなみに、犬子さんの『とわとわの三角』と関連する話もありましたよ。
「三角関係」という、この絶妙な言い回しはいったいいつ生まれたのか?という。
どうやら、『人形の家』で有名な劇作家イプセンが発信源らしい。1891年初演の『ヘッダ・ガブラー』。妻と別の男性が会話しているところに夫が現れ、そこで「トライアングルが完成した」という台詞が出てきます。

余談:最近ぽちった漫画

先月末に何冊かぽちった。

『25時のバカンス』、『宝石の国』1巻


これで、市川春子の既刊はすべてKindle化された…はず。
思ったより早かった。うれしいなぁ。

『四月は君の嘘』6巻


こっちも紙の本に追いついたね!