Kindle書評『レイヤー化する世界』と『天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち』

前から読みたかった本を、立て続けに2冊読んだので機嫌がいいです。

これだけ読書に耽溺して年をとっていくと、自分に合う本・合わない本もだいたいわかってくるはずなのですが、逆に冒険しちゃったりするのね。同じような本ばかり読むのも退屈だから。
ちょっとちがう毛色の本を「これ面白いかもなー」と思って選ぶ。そして「大ハズレやー!」と玉砕する。私にとって読書はギャンブルです。

が、今回の記事の本は、最初から当たりだろうなーとわかっていたので、気楽に読めました。
感想いってみよー。

佐々木俊尚『レイヤー化する世界』


朝キュレと称した「気になる記事を、毎朝8時にコメントつきで紹介するツイート」でおなじみのジャーナリスト、佐々木俊尚さんの新刊。
これから社会に出て社会をつくっていくであろう、高校生、大学生の読者を想定して書かれた本です。
Kindle版、待ってたよ!

紙の本はコチラ↓

大学の授業を思い出して、懐かしかった

大変面白かったです。
さらっと読みやすく書かれてるけど、その背後から膨大な文献を読みこなしてる!っていうのが伝わってくる。
のっけから、ウォーラーステインの世界システムですよ。

この本ね、私にとってはそこまで新鮮ではなかった。
根っこにある著者の主張は、毎朝ツイート読んでたら、なんとなーくわかるじゃないですか。「あぁ、そういえばこういうこと書いてはったよな」って。
あと、日本のサラリーマンという身分に縛られない仕事をしてる人たちからも、似たような主張はちらほら見かけるわけですよ。
(海外でバリバリ働いて起業してる人もいれば、講演会ばかりしてて怪しいなーって感じの人もいるけど)
だから、特に衝撃は受けなかった。

ただ、この本を読んでて、すごく懐かしかった。

大学時代、すごく好きだった授業があったんです。
「グローバル・ヒストリー」と題して、先生が毎週90分間、ほぼぶっ通しでしゃべり続ける授業だった。
板書は人名や目新しい単語を書く時だけ。プリント配布もなし。ただひたすら、マイクを持って教壇に立った先生がしゃべり続ける(しかもその先生は早口の部類だった)
だから学生は誰も私語をしない。一心不乱にノートをとり続けるか、疲れ果てて居眠りするかのどちらかだった。

この授業が、とにかく面白かった。
毎回「今日はどんな話が聞けるのか、どんな刺激を与えてくれるのか」と思いながら教室に行ってたの。
卒業してから、「先生に参考文献を聞いておけばよかった…」と後悔したものです。

その授業でやってた内容と、かなりかぶってるんですよ。この本。
もちろん細部の流れはちがう。たとえば『レイヤー化する世界』には、マウンダー極小期の影響は語られていない。多分、世界システムの変遷を語る上で必要なかったからだと思うけど。
(授業では、世界的な気候の変化が、人間の歴史にどれだけ大きな影響を及ぼしたか、という内容がそこそこ盛りこまれてた)

この面白い感じ、懐かしいなぁ…。
そうか、10年前にはすでにこれだけの研究結果が出てたんだ(授業の内容を思い出しながら)。それが、10年後の2013年には、こういう風に未来を予想しながら本が執筆される土台になったんだ。
そんなことを思いながら、一気に読みましたよ。
そして、やっぱり私たちの給料は下がっていくんですね…。

電子書籍にありがちなことやけど、誤字脱字がけっこうあった。後半ほど多かった気がする。
明らかな誤字は、「マイクロソフトが撃っているのは」くらい。正しくは「売っているのは」。他の誤字は「国民国家れは」とか「技術者たちはたちは」とか、そういう類でした。
あと、脱字が非常に多かった。助詞が抜けてたり、「生活を楽しめるようになり」が「生活を しめるようになり」と漢字が半角になって消えてたり。
数えてないけど助詞のミスも多かったです。「銀が流れ込み」が「銀を流れ込み」になってたりとか。

たくさんハイライトをつけた中で、ひとつだけ選んで紹介するよ。

国民国家というのは、帝国の権威が消え、キリスト教会の権威も衰え、王の権威も革命で消え、権威が何もなくなってしまった後に、無理矢理「国民という権利」をこしらえたということだったのです。

小川一水『天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち』


『天冥の標』、4巻目-!

完璧な性愛体験はありえるのか

今回は、「恋人たち(ラヴァーズ)」に焦点を当てた1冊。
3巻目より少しだけ、あとの時代です。

ラヴァーズが出てくるからには、性愛をテーマにしたガチエロな話だと前評判を聞いていたのですが、ふたを開けてみたらセックスシーンが多すぎて逆にエロさを感じなかったでござる。なんということでしょう。

エロいことがしたくてたまらないお年頃の少年が、突然めっちゃ好みの見知らぬ全裸の女の子とふたりきりにされて、彼女から「あなたの好きにしていいのよ」と誘惑される。
男のドリームそのものの展開なのですが、やってもやっても彼は心のどこかで満足していない。そのために、彼女はくり返し、彼の記憶を消してしまう。それに気づいた彼はだんだん怖くなってくる。なぜ俺はこんな目に…。
てな感じで始まるストーリー。

今回も、「あっ!1巻に出ていたあの人は、ここから来たのか!」とか、「3巻のあの人がこんなところに!」とか、ちょくちょく伏線に気づきながら読みましたよ。正直なところ、登場人物が多いので、巻末の人物・用語集を見て初めて気づく程度なんですけど。

エロス(たまにドンパチ)たっぷりの描写で油断してると、たまにこういう文章が出てきて、ぎくりとする。

そして人は嘘をつく。他人に対しても自分に対しても、つく。『自分は満足した』という嘘をつくことも、『相手が満足した』という嘘を信じることも、どちらもとても心地よいから、人はそれらの嘘におぼれてしまう。

ちなみに、紙の本で先に読んでいた林檎さんからも、
「4巻そこまでエロくなかったよ。非展開体のあれやこれやの方がエロかったよ」
というご意見をいただきましたので、どういう意味やねん!と首をひねりながら5巻に進もうと思います。