Kindle書評『パラレル』と『ハチミツとクローバー』全10巻

6月後半の朗報、

  • 十二国記、12年ぶりの新刊『丕緒の鳥』発売
  • Kindleで『ハチミツとクローバー』全10巻一斉配信

このふたつをたんまり味わったとりさんです。
十二国記のおかげで、久しぶりに紙の本を買いました。今後出る予定の長編も楽しみです。『丕緒の鳥(ひしょのとり)』を何度も「ふしょのとり」とまちがえたけどね!

残業続きでブログ書けなかった合間にも、ストレス解消とばかりにKindleで本読みまくってました。
というわけで書評いってみよー。

ハル(@sakuraSoftware)『パラレル』


技術系のKDP本でおなじみのハルさんが、小説をリリースしました。
本の売上は、さくら(恐らくハルさんの愛犬)のエサ代になるらしい。

鬱と犬とカメラ

タイトルの通り、パラレルワールドに行ってしまうお話です。
私と同じく横書き。
ちょくちょく犬やカメラのカラー写真が入ってた。

個人的には、この小説のキーワードを選ぶなら「鬱」「犬」「カメラ」だと思う。
といっても別に鬱々とした暗い話ではありません。

もしも自分が、あそこで別の道を選んでいたら。
鬱になって飛び降りようとしていたのかもしれない。
あるいは、妻子を得て平和に暮らしていたかもしれない。
それがパラレルワールド。

仕事柄、うちの職場には一眼レフを持ってる人が多いのですが、プライベートの友人知人でも一眼レフを持つ人が増えた気がします。
産まれた子どもを撮るためじゃなくて、独身や子どものいない夫婦の間でも増えてる感じ。
「手を出しやすく、奥が深くて、ひきこもりにならないで済む趣味」としてカメラがあるんやろうなと思う。ほとんどの人にとっては、デッサンしたり文章書いたりするよりも、シャッター切る方がよっぽどラクでしょ。

そう思うのは他の人も同じみたいです。まさにそういう記事が出てた。

あと、著者のハルさんはもちろん犬が好きです。『犬のための〜』というタイトルで技術書を出す程度には犬が好きです。だから、この話にも犬をめぐるネタや会話や写真が出てきます。
ハルさん、そのうち愛犬の写真集とか、愛犬の写真を使った絵本とか出したりするかな。
(私が飼い主だったらやる)

ところで、ユリを最後まで拒み続けたのは主人公の矜持なのか、それとも臆病さのためなのか。あんなにはっきりと「あなたがほしい」って言われてるのに逃げちゃう。たいていの小説だと最後は据え膳食べちゃいそうなので、逆に面白かったですが、ちょっとざんねーん。

2013年6月30日14:30追記

著者のハルさんから、光の速さで反応がありました。

羽海野チカ『ハチミツとクローバー』全10巻


縁がなくて、1巻しか読んだことがなかった人気漫画。
Kindle化のおかげで、ようやく手に入れることができました。

青春はみっともなくて恥ずかしいけれど

青春というキーワードが、ばんばん出てくる漫画でした。
みっともなくて恥ずかしくて、皆ゴロンゴロンころがったり、身もだえたり、灰になったりしてるんだけど、それに「青春じゃあああ!」と歓声を上げるおじいちゃん教授たちがいたりして。

手元にないのでうろ覚えなんですが、よしながふみが対談集『あのひととここだけのおしゃべり』の中で、ハチクロについて熱く語ってましたよね。

「ハチクロの登場人物は皆、恋愛に関しては中学生みたいにわーわーきゃーきゃーしちゃってる。なのに仕事に関しては、しんどい時であっても、嫌な性格の奴であっても、しっかりと『ここはこうしないと駄目だ』って判断を下してる!」
「彼は、はぐちゃんを支えたいと思った時、『新卒でお金もなくてさしたる才能もない自分が今、仕事を放り出して看病したところで、かえってはぐちゃんの重荷になっちゃうだけだ…』っていうのを、ちゃんと考えるんですよ!」

ってな感じのことを(うろ覚えだけどだいたいこんな感じ)

まさにその通りだった。
登場人物のほとんどは大学生で、20歳前後という若さなのに、皆すごくそのへんはしっかりしてるの。「あなたをこのままにしておけない…!私も一緒に沈む!」的な安易さに流れていかないの。普通の恋愛漫画だと、掃いて捨てるほど安易に流れる展開ばかりなのに。

川原泉『バビロンまで何マイル?』に、

「愛は地球を救うんだぞ」
「バカモノ、地球を救うのは食糧にきまってるだろーがっ」

というやりとりが出てくるんですが、それと似てる。

愛だけでは、人は救えない。
苦しんでいる人に寄り添っていこうと思ったら、自分にも覚悟が必要なのね。覚悟というか、お金がね。仕事ほっぽりだして看病や介護に専念しても食いっぱぐれないだけの実績とか貯金とか。

それが今の自分にはなくて、かえって彼女のお荷物になってしまう…っていうのを、くやしさとともに噛み締めて、他の人に彼女を託す。
若くして仕事ができる(=自分の作品や能力を金に換えられる)現実離れした学生たちが多いのに、そのへんの冷静な判断はすごく現実的。お涙ちょうだいのときめきとか差し挟むスキもない。
あぁ、でも若い頃から必死で仕事して作品つくってるから、そういう判断ができるのかなぁ。