Kindle書評『2月は死神』と『チョロQワトスン』と『日本の昔話』

現在、Kindleの蔵書は197冊。あれ、まだ200冊になってなかったの?!

積ん読をほとんど片づけたので、買わずに我慢していた本をせっせと探し回って、しばらく迷った末に、何冊かぽちることをくり返してます。ヤマシタトモコの漫画とか、インカ帝国の興亡史とか、ヨーロッパ王室の話とか禅の話とか!
(相変わらず変な方向に偏っている)

今回は、KDP本を中心にレビューしますよっと。

犬子蓮木『2月は死神』


犬子さんの新刊です。
「短い話の中で大勢の人が死にますから、殺人の苦手なとりさんは無理せず読んで下さい…」的なことをご本人から言われたため、内心びびって積ん読消化の最後の方に回していたのですが、全然気持ち悪くなかった。平気でした。よかったー。

ドライなゆえに読みやすい、殺人稼業

殺人を請け負って生活している男の子のお話です。
森博嗣を神様として崇める犬子さんですので、今回も森博嗣の絶大なる影響を感じさせる作風に仕上がっております。外来語の表記も同じだなーって。

『白く汚れて冷たく綺麗な』の場合は、森博嗣があえて書かないであろう残酷な展開がくり広げられて、ほとんど救われない感じだったのですが、『2月は死神』の場合はもっとドライに話が進みます。
だから逆に読みやすいし、気持ち悪くなったり、落ちこんだりすることもなかった。

逆に、遺族の怒りや悲しみや葛藤が描写されると、もう、つらくてつらくて読むのしんどくなるんよね…。そんな生々しい感情は、現実世界で散々味わってるからもういいよ!って思っちゃうからさ。
10代の頃はそういうドロッとした描写を読みたがってた気がするんやけど、大人になると、もう、しんどい。仕事と人間関係で疲れてすり減ったところへ、わざわざ貴重な私生活の時間を費やして、悲しみだの怒りだのをトッピングしたくないのよ。そうかー…こうして人は年食って保守的になっていっちゃうのかなー…。

そんな私の感傷はさておき、殺人によって生計を立てるという暮らしに順応せざるをえなかった主人公の冷めた態度を見てると、なぜだか西尾維新『零崎双識の人間試験』を思い出しました。確か、ひょんなことから殺人の才能に目覚めちゃった女の子が出てこなかった?
あの話は別の意味で冷めてるというか、突如として見出した自分の才能にテンション上げながら人殺しまくってて、少年ジャンプの登場人物かよお前…ってつっこみたくなる話だった気がするけど。
もちろん、『2月は死神』は、そんなテンションからは程遠い淡々としたノリで進みます。

あと、主人公の男の子と、彼の保護者を務める男(この人も殺人稼業)の関係がBLくさいという感想が、すでに他の人から出てました。確かにそういう組み合わせのBL小説も実際にあったしね…人気があったみたいでシリーズ化されてたしね…(今こっそり調べたら絶版になってた)

思ったよりもあっさり終わっちゃったし、登場人物との絡みもまだまだこれからという余韻を残していたので、続きは…出るよね?出すって言ってたよね犬子さん?

ちなみに表紙の猫は、本文とは何の関係もありませんのでご注意を。

牛乃あゆみ『チョロQワトスン~ロンドン一の可愛いドクター~』


こちらはシャーロキアンである牛乃あゆみさんの新刊ですよ。
チョロQみたいになっちゃったワトスンが活躍する漫画と、短編小説を収録した本。

ちっちゃくなったワトスンに萌えるための本

前回は本格的なホームズ&ワトスン物語でしたが、今回は萌えが主体な感じで、軽いノリで読むことができます。

漫画はカラーだよ!
横長のコマが多くて、1ページにつき1コマになっていたので読みやすかったです。
KDPでリフロー型だと、挿入された写真や挿絵や図版がやたらと小さくなってたり、画質も粗くなってたりして、ロクに見れないものが多いんですよね。ホンマ、挿絵に書きこまれた文字も推測で読むレベルの小ささになっちゃうし。
(出版社から出てる『ヴァンダル興亡史』『オカマだけどOLやってます。完全版』あたりの本もそうでした。逆に『統計学は最強の学問である』は、画像も見やすかったし、クリックで拡大できるように処理されてた記憶が…)

↑2013年5月25日23:45追記
これ、私のまちがいでした。見にくいと思ってた本はサムネイルが小さすぎるだけで、ダブルタップしてみたらちゃんと挿絵や図版が拡大表示されましたよ。すみませんっ。

ほんわかした2頭身くらいのかわいいキャラクターを描けるのは、うらやましいっす。
こういう漫画なら、台詞を翻訳して海外版を出すのもかなりハードル下がると思うし。実際、牛乃さんはチョロQシリーズで英語版を出されていたはず…。

逆に、短編小説の部分は読みにくかったかも。
本自体は縦書きなのに、小説の部分だけ横書きになってたので、「横書き小説なのにページめくりは縦書き」になってました。何があったのかな。

ちなみに続編では宇宙に行くらしいですよ!

柳田国男『日本の昔話』


はるか以前のセールでぽちった1冊。
日本各地の昔話を集めた本なので、短編集よろしくちびちびと読み進めてました。
やっと読み終わったよ!
どこかで聞いたことのある話もあれば、まったく知らない話もありました。
ただ、共通して、じいさんばあさんの登場率めっちゃ高い。貧乏なのに信心深くて正直で働き者のじいさん、めっちゃ多い。

竹取物語から生まれた鶯姫

なんと『竹取物語』が元になったタイプの話もありましたよ。
タイトルは「鶯姫(うぐいすひめ)」。駿河国で竹を刈ってものをつくって暮らしていたじいさんが、光輝くウグイスの卵を見つけて持ち帰ると、その中からお姫様が生まれるのです。

5人の求婚者の話は「誰も難題に答えられなくて困って帰っていった」という描写ひとつでバッサリ省略。
天皇から入内するよう言われた時の話も「辞退した」という描写ひとつでおしまい(『竹取物語』では、無理強いするなら姿を消しますと言ってかぐや姫がその場で消えてしまったり、仕方なく帰ったもののあきらめきれない天皇がかぐや姫と文通をしたりする)
あと、かぐや姫が月に帰る時も、月からの使者は来ない。かわりに白い雲が迎えに来る。そして自宅ではなく富士山の上から、しかも単独ではなく親子そろって天へのぼっていく。
最後に、かぐや姫が不死の薬を天皇に差し上げたものの、嘆き悲しむ天皇はその薬を富士山で焼かせてしまったというオチは『竹取物語』と一緒でした。「兵が大勢山を登ったから富士山と名づけた」という描写はなくなってたけど。

この「鶯姫」は言い伝えを採録したものではなく、13世紀に書かれた『海道記』から収録したものらしいですよ。どうやら『竹取物語』(9世紀に成立?)のあらすじが伝わって別のバリエーションになった模様。

他にも、谷山浩子『もうひとりのアリス』の歌の題材になってる昔話が、いくつか出てきました。「雲雀の金貸し」とか「水蜘蛛」とか。

余談:紙の本だって買いたいけど…

先日、部屋にあるものをちょいちょい減らして、床の可視面積をさらに広げました。
開放感があって、すっごく気持ちよかった。

紙の本だって面白いのいっぱいあるし、紙ならではの良さを生かした本だっていっぱいあるし…買いたいけど…まじで収納に困るんよねー…。
何度も何度も、面白そうな紙の本をぽちろうとして、クリックする手をためらい、結局、Kindleストアで買える本を探してました。うーん。悩ましい。