脱力系の文章とイラストでなごめる1冊、『カラスの教科書』が面白すぎる

先月、ジュンク堂で衝動買いしてしまった本が、大変面白かったですよ!

著者:松原始(まつばら・はじめ)
タイトル:カラスの教科書
レーベル:雷鳥社

実は、ほうぼうで絶賛されている『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』を買いに行ったら、ほのぼのしたイラストの表紙に目を奪われたのです。パラパラめくってみたらどうにも好きそうなにおいがぷんぷんしてたので、ついでに買っちゃったんですが、大当たりでございました。
鳥好きなら、買って損はござらん。

紙の本ならではの、カラスたっぷりの装丁

1冊まるまるカラスの本です。
以前も何冊か、都会におけるカラスの生態などの本を読んだけど、この本はかなり毛色のちがう本でした。何よりも文章が堅苦しくないの。なごみ系なの。

さらに、これでもかと、ゆるーい雰囲気で鉛筆タッチのイラストが豊富に入ってて、コラムのページも奥付もカラス色に彩られている。イラストを担当しているのは、植木ななせ。
(一方、ちゃんと写実的なカラスのスケッチも入っている)

ちなみに、カバーにはボーダーの入ったちょっと変わった紙を使ってました。
見返しもカラス色で、そこに鉛筆タッチのカラス柄を散りばめるという凝りよう。確かにこれは紙の本で読む方が楽しいわー。久々にこのへん「パッケージの面白さ」を味わいました。最近ずっとKindleだったからね。

さりげなく、出版社が「雷鳥社」と鳥の名前であることもツボです。

カラスの研究者(カラス屋)による、カラスづくしのトーク

著者は、自身を「カラス屋」と名乗り、今までに自分が研究対象として観察しまくってきた経験の中から、さまざまなカラスのエピソードを語ります。
(音だけ聞くと、カラス屋って、漫画家のカラスヤサトシみたい)

カラスといえば、代表的なのは都会に多いハシブトガラスと、河原や田畑に多いハシボソガラス。
この両者の外見などのちがいはもとより、行動のちがいについても冒頭でわかりやすく説明してくれてますよ。他のカラスも出てきますが、ほとんどのエピソードはこのハシブトかハシボソのどちらかです。

カラス屋が少ない理由

カラスの研究者は少なくて、あまり人気もないそうです。
その理由については、かつて著者の指導教官だった山岸哲がこう言ったのだとか。

「カラスは行動範囲広すぎて見えねえ、捕獲できねえ、標識できねえ、年齢わからねえ、性別わからねえ、巣が高すぎて覗けねえの三重苦どころか五重苦、六重苦。だからオレはやめた」
(P.86〜87)

しかもありふれてるから、猛禽類のような人気もない…と。

山岸哲って見覚えのある名前だな、もしや…と思って本棚を見たら、あにはからんや、『鳥類学』の日本版監修を務めておられる先生でしたよ。やっぱり!

ツッコミ入れずにいられない、カラスの観察記

この本の面白さのひとつは、著者がちょくちょく文末に挟むツッコミ。
最初のうちは普通に読みやすい文章を書かれているのですが、51ページの「何がしたかったんだお前」あたりからツッコミが登場し始めます。
カラスのエピソードを読んでると、ただでさえ笑えるのに、ツッコミのせいで余計に笑ってまう。

研究者が毎日ずっとカラスを観察していると、へんてこりんな遊びをしていたり、つがいの相手を侵入者と見まちがえたり、縄張り争いがあったり、トンビを追い回して反撃されてあわや死にかけたり…といったドラマを目撃するわけですよ。
特に笑ったのは、カラスのつがいがバカップル全開でいちゃつくという話。もちろん著者のツッコミも炸裂。いやー見てみたいですね!サクランボを延々と「あなたが食べてよ」「あなたにあげるよ」と渡し合っていちゃつくカラスのバカップル!

ちなみに、鳥はたいていの場合、つがいの相手を頻繁に変えちゃうんですが、カラスの場合は一夫一妻でめったに離婚せず、ずーっと同じ相手とつがいになっているそうです。
珍しいことに、縄張りを持つよりも、つがいになる方が先だとか。
なぜならば…続きは本書でどうぞ。

最後のQ&Aも笑える

最後には、他の人々からよく聞かれる質問について、Q&Aが載ってます。
このへんは文字も大きくてイラストも多くて、雑誌とか絵本みたいな感覚。カスタマーレビューを見ると、「こんなコーナーいらねえよ、もっと読みごたえのある文章の量を増やしてくれよ」みたいな人もいるみたいですが、私は楽しめました。

カラスかぁ…飼ってみたいけど野鳥だから本当は飼えないよね…。
(1番飼ってみたいのは文鳥だが)
カラスを飼ってると、個体によってはきらきら光るものが好きだったりするので、持ち物を勝手にどっかへ隠されちゃうらしいけどね。確か子どもの頃に『ぽっぺん先生』シリーズでそういう話が出てきたなぁ。ロンドン塔とワタリガラスの話も出てきたはず。

…鳥類だの動物行動学だの、そういう本を読みたがる原因のほとんどは、ぽっぺん先生の影響だと思う。何冊もあるシリーズのうち、ほとんどが絶版\(^o^)/

イラストが気に入った人のために

この本に散りばめられた、脱力系のゆるーいカラスのイラストは、植木ななせが担当していると書きましたが、どうやら出版元である雷鳥社のキャラクター?である「らいちょうくん」も描いてるみたいです。

カレンダーやポストカード、しおりも販売してるみたいなので、興味がある人は見てみそ。
(せっかくだから、らいちょうくん公式ブログはFC2じゃなくて、雷鳥社のドメインでつくればよかったのになー)

余談:東京のインターメディアテクに行ったよ

先日のGWでは、インターメディアテクに行きました。東京駅の近くにJPタワー(KITTE)というビルがあって、その2〜3階に入ってるミュージアム(博物館)です。
ここに、鳥の剥製やら骨格標本やらが、わんさか並んでた。

何より驚いたのは、鳥の骨格標本の小ささ。
そりゃね、知識としては、空を飛ぶために鳥の骨が中空になっててものすごく軽いことは知ってますよ。鳥の本を読んだらだいたいどの本にも載ってるから。

でも、羽や肉を取り去った状態だと、ホンマにちっちゃい。ちっちゃくて細くて折れそう。スズメとかもう、やばいですよ。お手玉か。

あと、さらに驚いたのが、猛禽類も意外と小さいことでした。
骨格標本になると皆、本当に小さい。

鳥の頭蓋骨だけを並べてある棚もあって、その中で1番大きかったのは確かアホウドリでした。
意外や意外、タカなどの猛禽類の方が小さいです。アホウドリは頭がでっかい上に、くちばしも長かった。タカとアホウドリでは、食べてるものとか住んでる環境が全然ちがうもんねぇ。
普段わかってるつもりでも、顔やら羽の模様やらといったものに目を奪われていることが多いので、骨格だけになるとわかりやすく形や大きさの差が際立つ感じでした。

そして、このインターメディアテクの物販コーナーに、『カラスの教科書』もあったよ!
他に並んでる本が、英語の論文らしいものとか、数式の登場する惑星なんたら学とか、とても気軽に持ち運べないような分厚くて大判でカラー写真満載の本だったりする中で、この本だけ異色を放ってました。
なんせ、ゆるーい。表紙のカラスのイラストが、すべてを物語っている。

どうやら、売れてるみたいですね。


私も、この本を持ってなかったら、物販コーナーで買っちゃってたと思う。