マニアックと見せかけて一般向け。井田徹治『鳥学の100年』

久しぶりに紙の本の書評ですん。

著者:井田徹治(いだ・てつじ)
タイトル:鳥学(ちょうがく)の100年
副題:鳥に魅せられた人々
レーベル:平凡社

どっかで書評が出てて、我慢できずに買っちゃった1冊です。肝心の書評を探したけど見つけられず…。
唯一ちらっと出てきたHONZの記事では、

私の本の選択基準のなかに「鳥ものにハズレなし」というのがある。

と書かれてました。私もそう思う\(^o^)/

Kindleと『鳥学の100年』↓
chougaku

研究というよりも、最初は貴族の学問だった

日本鳥学会の100周年を記念して書かれた本です。
明治の末、どんな経緯で日本鳥学会が発足して、どんな活動をしてきたのか、鳥についてどんなことがわかってきたのか…という流れを、わかりやすく書かれています。
著者はもともと鳥の研究者ではなく、記者なのだそうですよ。
もちろん、日本鳥学会と山階鳥類研究所が協力してます。

生き物相手の研究は、とにかくお金がかかります。
必然的に、学会発足当初の会員(研究者)は、お金持ちの方々ばかりだったようです。

鳥学にかぎらず、当時は大学で研究やってるのってお金持ちのご子息ばっかりやろうけどね…。
別の本で、「誰それくんは今年卒業せねばならないから、僕が書いた論文を彼にあげたよ」って逸話を読んだことある。その人は実家が裕福だから、急いで卒業する必要がないので、自分の論文を他の人が卒業するためにあげちゃったっていう。余裕が感じられますね。

それと似たにおいを感じる鳥学会の発足当時です。
初期の学会を彩った人たちのエピソードが、浮き世離れしている。
たとえば…

  • 山階芳麿は、6歳の誕生日に「鳥の標本がほしい」と両親にねだり、つがいのオシドリの標本をもらった
  • 東京・赤坂にあったという黒田長禮の邸内にある池のイラストが、どう見ても「自宅の池」のレベルを超えている広さ
    (しかもその後、羽田空港のあたりに4200坪の池をつくらせている。自宅の池も羽田の池も、鴨のためである)
  • 蜂須賀正は古城のような豪邸に禽舎をつくって多くの鳥を飼い、留学先でも探検先でも精力的に鳥や剥製を集めた
    (破天荒にあれこれやりすぎて、最後は貴重な標本を売ってしまうことで食いつないだ)

皆さん、本当に貴族出身だったり、爵位を持ってた人もいます。

保護の重要性

本の半分近くは、鳥を保護する重要性や困難さ、すでに絶滅してしまった鳥についての記述でした。
そういえば『鳥類学』でも、鳥の保護だけでまるまる1章使ってたな…。

トキもコウノトリも、日本産のものは絶滅してしまった。
よその国から借りてきた個体が繁殖に成功して、喜ぶのはいいけど、その後どうやって根づかせていくのか、そのためにどんな環境をつくらねばならないのか。目先にあるヒナの誕生だけではなく、10年後、20年後のことも見すえて対策をとらねばならない。
環境が整わなければ、人間の助けで個体数を増やしてもまた滅んでしまう。

日本には、鳥の学問全体を見通せる人がいない

長らくプロの鳥類学者が少なく、アマチュアの活動が大いに貢献してきたという日本の鳥学事情。
しかし、最近の研究者は皆、自分の専門分野ばかりの人になってしまい、学問全体を広く見渡して理解できる人がいなくなってしまったそうです。

例えば鳥を学ぶ人にとっての欠かせない教科書の一つ『鳥類学』の著者である米国のフランク・ギルは日本語にして750ページ近くのこの本を、一人で執筆している。(P.266)

鳥の科学のほぼすべてが語られてる教科書、『鳥類学』。
充実しすぎてる内容で5000円+税というお値打ち価格の本です。めっちゃ分厚くて大判で重たくて、持ち歩くとか絶対に嫌なんですけど教科書です。
でも、フランク・ギルのような人が、日本にはいないのだと。

ちなみに『鳥類学』、私も持ってるよ!

余談:次はこの本が面白そうだ…

ずっと積ん読してた『鳥学の100年』を読み終えたので、さっそく次の鳥本を買おうかと狙いを定めております。これ、すごく面白そうなの。