蝉丸P 『蝉丸Pのつれづれ仏教講座』を読んだ

タイトル:蝉丸Pのつれづれ仏教講座
著者:蝉丸P(せみまるぴー)
イラスト:田丸浩史
レーベル:エンターブレイン

弟から借りた。ニコ動で有名な、現役の住職「蝉丸P」による仏教解説書です。
仏教には実にいろいろな種類・宗派があり、それぞれにいろいろな解釈・主張があるので、この本についても、

話三割ほどで受け取ってもらい、眉に唾して読んで頂ければ幸いです。
(P.16)

とあるのですが、娯楽としても笑えて楽しめる本でした。

私が笑った箇所

この本の面白かったところを、いくつか紹介しまっせ!

世界ナンバーワン・ベストセラーを販売に来る人は寺でも、お構いなしにやってくるので、喜んで神学大全やプロテスタント教理問答集など資料を引っぱりだして話をしようとすると皆さん帰ってしまうので、少し寂しい蝉丸Pでございます。
(P.46)

世界ナンバーワン・ベストセラーというのは、いわずと知れた聖書のことです。60億冊くらい売れてるらしいですね。
このくだりを聞かされた母は爆笑して、
「わざわざ別の宗教んとこへ売りに来るんやから、それくらい覚悟して売らんかい!」
と言ってました。

仏教宗派の組織も、今挙げたようなピラミッド型と横並び型がありまして、(中略)(横並び型の場合は)末寺なども本山が無茶を言ってきますと「ああ、それじゃ他所(よそ)の本山に移りますんで、それじゃ!」と実にアッサリしたものでして、(中略)ピラミッド型の組織の人が聞きますと信じられない!というようなことが普通に行われております。
(P.130-131)

ピラミッド型の組織の方が目立つので、そういう宗派ばかりだと思ってたんですが、そうでもないんですね。
京都には本山を名乗るお寺がいっぱいあるので、一般人にとっては、どれがどれやら意味不明です。

仏教の特徴として、中道を説くが故に、極端な行動に走らない=見栄えしない、という構造上の問題があり、ジャイナ教やヒンドゥー教では(中略)傍目で見て分かるレベルを通り越した激しい修行アピールが民衆の心をガッチリ掴みます。
(P.343)

インドで仏教が廃れていった流れについて、説明している箇所での記述。
見栄えしない…。

純粋な仏教徒いう「ありえないモノ」を求めて、僧院や瞑想センターと呼ばれる外国人向けの施設で問題を起こす欧米出身の出家修行者や、「日本の仏教は不純で堕落している!」と南方に活路を求めて飛び出した人など、いわゆる仏教の原理主義とでもいうべきロマン仏教を頭の中で思い描いてみたものの、(中略)非常~に迷惑な事例が後を絶たないとのことでした。
(P.352-353)

あーこれ、よくわかる…だって私が原始仏教に興味を持ったのだって、似たような理由だもん…。
でも、「これこそが本物の仏教」なんてものは存在しないし、どこの国へ行っても、それぞれの国の歴史的な背景を抱えた仏教があるだけなのね。どっちが上だとか下だとかじゃなくて…。そっかー。

ちなみに、タイやミャンマー、スリランカなど、いくつかの国の仏教事情も(知り合いがけっこう行ってるらしくて)紹介されてましたが、特にスリランカに関する内容は、「あ、これ、アルボムッレ・スマナサーラって人のことだな」とわかりました。
この人の本、1~2冊読んだことあるんですけど、こういう背景もあったのね。

日頃の生活に、ちょっと役立ちそうな提案

他にもいっぱい笑った箇所があったんですが、「なるほどねー」って感心した部分もあったんですよ。

伝統系の宗教との付き合いは、(中略)ちょっとしたお隣さん感覚で江戸のお伊勢さん参りレベル、「信心は半分、心の憂さの捨て所」くらいのもんで、娯楽がメインだけど、旅先や近所の神社仏閣に、ちょっと手を合わせて、良いことがあったらラッキーってな具合で十分です。
こういった付き合いの利点としては、マイナス方向の信心というか、心霊系の概念や脅しをかわせる防御壁になるのが便利なところです。
(P.249)

細木数子はテレビで見かけなくなったけど、今でもスピリチュアル系、めっちゃ跋扈してますよね。跋扈してるってことは、信じちゃう人がいるってことです。
小悪魔本で一躍売れたホステスの蝶々さんが、その後スピ系に転身して「東日本大震災チャリティーで水晶売ります」的なことをやっている、と友達に聞いたのですが、似たような話はよくあります。

えてして、スピ系には「これをしないと不幸になる」という脅迫めいたノリが多いので、そういうものにハマりにくくするために、昔からある宗教をうまく利用するといいですよ、という提案を著者は説いているようです。
なるほど、一理ある。

お葬式についても、まったくやらずに済ますと、あとで悪いことが起きて心身ともに参ってる時期に「あんたが大事な親を無下に扱って、ろくに葬式しなかったせいだ」などと怪しいスピ系から心の隙を突かれてしまうことがあるので、まったくしないのではなく、「できるだけ簡素にやってね」くらいがいいですよ、とのこと。

爆笑しながら読み進めつつ、時折こうして自己啓発本よりも使いやすそうなTipsが出てくる本でした。
ネットでよく見かけるオタク的表現などを駆使しつつ、そういう言葉や概念に慣れ親しんだ人にとってわかりやすいように語っている本です。
笑いながら「なるほどねー」って言いたい人におすすめ。

余談:まさかの谷山浩子

仏教が成立する過程を説明しているくだりで、「縁起」を説明する時に、「オートマッピング」という言葉が出てくるのですが。
この「オートマッピング」の注釈に、谷山浩子が出てきたのでお茶噴きそうになりました。

ちなみに、シンガーソングライターの谷山浩子は手でマッピングしていくことをこよなく愛する人物であることが知られている。
(P.318 注釈1)

まさか浩子さんが出てくるなんて思わなかったよ…。