内藤正典 『イスラム――癒しの知恵』を読んだ

著者:内藤正典(ないとう・まさのり)
タイトル:イスラム――癒しの知恵
レーベル:集英社新書

先日、デートの途中で、他の本を買おうと思ってジュンク堂書店に行きました。
で、どの本にするか選べず、店を離れようとして新書コーナーをのぞいてみたら、ふと目についたのがこの本。
立ち読みしてみたら面白かった。
その日は我慢して帰ったものの、やっぱりほしくなって2日後の仕事帰りに別の書店で買いました。

脚光を浴びているイスラームですが

9.11テロ以降、イスラームがにわかに脚光を浴び(それも悪い意味で)、書店でも関連書籍を多く見かけるようになりましたね。
大学でも関連授業が増えたみたい。
父の「今後は国際化が進むから、世界の人々が信仰している宗教のことを教養として知っておくように」という教育方針で、私は小学生の頃に新旧の聖書物語を読み、中学生の頃にコーランと岩波文庫の複数の仏教経典を読み、世界の宗教シリーズみたいなムックも読んだりしてました。
だから、「イスラームはテロリストの宗教だ」みたいに無知な言動を見かけると、それはちがうだろ、多分それはその国の経済状況とかが大きな原因で…とか思ってた。
それを言うなら、キリスト教だってユダヤ教だってテロリストの宗教になるわよ…。

この本は、
「ムスリム(イスラームの信者)の自殺率はなぜ低いのか」
という点を皮切りに、日本やキリスト教文化圏と異なる思考の過程を、その根っこにあるイスラームの理屈からたどってきて解説している。

「なんでもかんでも自己責任で孤立しがちで、しんどくて生きづらくなってきた今の私たちが、ここから学べるところもあるのではないか」

というスタンスの本です。

イスラームに対しては、「女性の人権を認めない」とか、「がっちがちの戒律で縛られてて窮屈」とか、悪いイメージをもたれてることも多いけど、それだけだったら、ここまで大きな宗教になってないですよね。
実際にコーランやハディースをひもとき、また著者が実際にイスラーム圏(主にトルコ)で経験した人々との関わりなどを交えながら、つづられています。

もちろん、この本で書かれている通りの、いい話ばかりではないでしょう。
どんな教えであっても、守らない人間はいるし、権力を握ると私腹を肥やすばかり…という支配者はどこにでもいる。
何にでも例外はあるし、特定の場合にはこういう注意が必要だ、と著者も書いている。
ただ、ムスリムがどのように考えて行動しているのか(例:なぜ自殺率が低いのか)、その根っこにある考え方を知ることで、「そういう考え方もアリか」と思って視界が開けるというか、自分のしんどい思いこみに穴を開けるきっかけになると思います。

大学の先生に言われたこと

私は大学の先生の話を思い出しました。
トルコの研究をしている先生がいはったんですが、

「本当にどうしても生活がしんどくて生きられなくなったら、トルコへの片道切符を買うお金だけは残しておきなさい。それでトルコへ行きなさい」
「イスラームには喜捨が根づいていて、貧しい人のことはちゃんと助けるから。生きていけるから。その点は保証しますから」

と言うてはりました。

さーっと読めるし、ちがう考え方に接することでちょっと気が楽になれる部分もあったりするので、おすすめです。
父に「これ買うてん。おとんも興味あるやろー」って見せたら、貸してほしがってはったので、さっそく貸そうと思います。